第7話-11

　情報戦略部に戻ると、高槻はすぐに斉藤を呼んで同じフロアにある小さい会議室に入った。ナイターは東京ドームだから、部長は小学校の授業が終わった息子を連れてさっさと水道橋まで行ったようだ。

　斉藤はパソコンオタクで、一応大学は出ているものの熱心に就活もしなかったため新卒で就職せず、焦った両親が見つけた求人広告で入ってきた男だ。年は２５歳と聞いているが、どこの課に置いても持て余されて最後に配属された情報課で、やっと水を得た魚のように楽しそうに働いている社員だ。

　「今日から、パソコンに釘付けだ。ＣＲシックスレンジャーズの攻略法を探してくれ」
　釘付けとなれば、残業は当たり前で、週末の休みも取れないかも知れない。若い社員は残業をいやがると聞いている高槻は、断られたらどうしようとちょっと悩んだ。１人で残業なんて、できればしたくない。

　「え？いいんですか？１日中パソコンに釘付けなんて、夢みたいです。いい会社に入れたなあ！」
　高槻の予想を裏切って、課員の斉藤は飛び上がらんばかりに喜んで、２つ返事で承諾した。

　斉藤がパソコンに向かうのを見届けて、高槻は１週間の残業許可を得るために総務課に行った。今月の残業手当が出たら、なくなった部長手当の穴埋めができて、子供のスイミングスクールの月謝が払える。