第6話-28

　「私がバイクに乗って帰る。少し狭いが、隊員達はバイク１台を積んだ車で戻ってくれ」
　黒木は言って、隊員達を車に乗せた。黒木は実況検分が終わるまで、現場に残る。極悪非道な田村の死体が見つかるまで、事件は終わらない。
　藍原は車の中でＬＯＥ病院に電話を掛け、一人ひとりの催眠を解いた。電話で話せなかった手術後で麻酔の効いている男には、麻酔が覚めてから直接話をすることになる。

　車が走り出した。藍原は疲れ切った顔で、座っている。
　「藍原、着くまで寝ていていいよ。帰ったら主役なんだから」
　村崎に言われても、藍原は答えない。
　「藍原さん、寝てるネ」
　黄が藍原の顔を覗いた。
　「寝かせておいてやろうぜ」
　村崎が言って、緑川が足下に、赤沢が肩に上着を掛けた。藍原のストッキングには穴があき、ガラスで切った細かい傷が痛々しかった。
　藍原はすぐに眠りこんで、大きく体を傾けた。藍原の頭を胸で受け止めて、村崎は「疲れてるんだな」と呟いた。
作戦は成功したが、誰も声に出して成功を喜ぶ者はいない。青山は藍原が飲みかけていたジュースの缶をテーブルに置いた。
　安心して眠っている藍原を見て、仲間の力があれば、自分でも誰かを守ることができると緑川は思った。