さっきまで泣いていたOLが、「ハワイに来れたのね」と明るい声を上げた。犯人グループだけではなく、お客様の様子もおかしいと山崎は気付いた。山崎をたしなめたおじいさんも銀行に来る時はいつも着ているスーツの上着を脱いでいる。
太った男は気持ちよさそうに居眠りを始めた。肩に置かれていた手がズルッと外れたので、山崎は中沢を見た。中沢はカウンターを離れて、山崎に近付いてきた。眼鏡男はパンフレットを積み上げるのに夢中で、中沢の動きをチラッと見ただけだ。
中沢は笑いながら山崎のそばに来た。お客様を安心させようと必死に笑っているんだと山崎が思った瞬間、「ミキちゃん」と中沢が言った。ミキというのは中沢の中学生の娘だ。「泳げるようになったからって、沖に行っちゃダメよ」
中沢さんまでなんか変。
うたた寝していた太った男が目を覚ました。「レナちゃん、ごめんね、俺寝ちゃった。フルーツを食べてから少し泳ごうか」
こんなところにいたら、おかしくなりそうだ。いつもとは違うテレビの画像のせいかも。山崎はテレビを見た。痩せぎすの男が山崎を見て、「マリンちゃん」と叫んだ。おばあさんと眼鏡男が作った砂山が見えた。波の音が大きくなった。
泣きそうな山崎の目に、碧い海と白い砂浜が見えた。
太った男は気持ちよさそうに居眠りを始めた。肩に置かれていた手がズルッと外れたので、山崎は中沢を見た。中沢はカウンターを離れて、山崎に近付いてきた。眼鏡男はパンフレットを積み上げるのに夢中で、中沢の動きをチラッと見ただけだ。
中沢は笑いながら山崎のそばに来た。お客様を安心させようと必死に笑っているんだと山崎が思った瞬間、「ミキちゃん」と中沢が言った。ミキというのは中沢の中学生の娘だ。「泳げるようになったからって、沖に行っちゃダメよ」
中沢さんまでなんか変。
うたた寝していた太った男が目を覚ました。「レナちゃん、ごめんね、俺寝ちゃった。フルーツを食べてから少し泳ごうか」
こんなところにいたら、おかしくなりそうだ。いつもとは違うテレビの画像のせいかも。山崎はテレビを見た。痩せぎすの男が山崎を見て、「マリンちゃん」と叫んだ。おばあさんと眼鏡男が作った砂山が見えた。波の音が大きくなった。
泣きそうな山崎の目に、碧い海と白い砂浜が見えた。