On The Road

小説『On The Road』と、作者と、読者のページです。はじめての方は、「小説の先頭へGO!」からどうぞ。

第6話-27

2010-12-12 20:27:00 | OnTheRoadSSS
 「藍原、後ろを向いてろ」
 赤沢が叫んだ。
 藍原は紅蓮の炎の中に飲み込まれる軽ワゴンから目を逸らして、空を見上げた。空の隅に赤い日の光が見えて、夕方がもうすぐ終わるのを告げている。
 そんなに遠くないところから、村崎が駆け寄ってくる。大きな音がして後ろから炎が立ち上ぼるのが、熱さと光でわかった。

 「暴力はやめてって言ってたよね。ごめん」
 震えが止まらない藍原の肩を、村崎が抱いた。藍原は村崎の厚い胸に一瞬顔を埋めて、「今日のヒーローは赤沢さんかも。泣いた赤鬼にさせてはいけないわ」と答えた。

 村崎が藍原から手を離して、道を開けた。黒木達の車も到着している。黄と青山がジュースの缶を持って立っている。緑川は後ろの方に立って、すまなそうに顔を伏せている。
 藍原は炎の中にいる田村以外の全員に、深く頭を下げた。
 「私の思い上がった行動のせいで、本当にご迷惑をおかけしました」みんなはただ笑って、藍原の生還を祝福している。

 「実況検分が始まるみたいだけど、パーティの途中ネ」
 藍原の催眠実験で、中国の山河を思い出していた黄が笑った。小学生の時に、物見やぐらからおりられずに消防団に助けられたと言っていた、青山も笑っている。
 1人だけ催眠退行しなかった村崎は、天性の笑顔だ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。