おばあさんはゆっくりと白いシャツの大きな背中に負ぶさって、「ありがとうございます」と言った。「じゃ、立つよ。いつもより高い眺めをお楽しみ下さい」と村崎は立ち上がり、一段ずつ階段を上り始めた。
初めの何段かは固まっていたおばあさんが、真ん中あたりから力を弛めた。「いつもは上るのに必死で、道路なんか見なかった。こんなに車が通ってるんじゃ、下はとても渡れないですねえ」
「でも、お年寄りにはこの階段きついよね」
おばあさんが見下ろした車の1台には、地元テレビ局の新人アナウンサーとベテランカメラマンが乗っている。
「川野さん、あの親子撮れませんか?」
「ミキちゃん、いい画見つけた?」
カメラマンの川野は女子アナが指差す親子にフォーカスを合わせた。「うん、ホントいい画だ」
「反対側に先回りして、ちょっと話が聞けませんかね?」
川野はドライバーに話し掛けた。「反対側に回れる?」
「次の信号でUターンするよ」
川野は「サンキュー」とドライバーの肩を叩いた。
初めの何段かは固まっていたおばあさんが、真ん中あたりから力を弛めた。「いつもは上るのに必死で、道路なんか見なかった。こんなに車が通ってるんじゃ、下はとても渡れないですねえ」
「でも、お年寄りにはこの階段きついよね」
おばあさんが見下ろした車の1台には、地元テレビ局の新人アナウンサーとベテランカメラマンが乗っている。
「川野さん、あの親子撮れませんか?」
「ミキちゃん、いい画見つけた?」
カメラマンの川野は女子アナが指差す親子にフォーカスを合わせた。「うん、ホントいい画だ」
「反対側に先回りして、ちょっと話が聞けませんかね?」
川野はドライバーに話し掛けた。「反対側に回れる?」
「次の信号でUターンするよ」
川野は「サンキュー」とドライバーの肩を叩いた。