さて、イスラム国家マレーシアでの公開なので作品そのものに少しだけ手が加えられている。1つはタイトル。これは「バージン」と言う言葉の変わりに別のものに置き換えられて「セカンドチャンス」になっている。もう1つはキスシーンが黒く影が登場すること。映写技師さんがやっているそうで、その手のシーンの度ごとに字幕の出る部分を残して紙か何かをレンズの前に挿入していた。不自然にそのシーンをカットするより良いかもしれない。
と言うわけで、ここからは映画の中身について書くことにする。
結論を先に言ってしまうと、とても「わかりにくい。」
どうして行(こう:主人公の男の名)はるい(主人公の女の名)を好きになったのかが最初の部分からつかみにくかった。百歩譲って、男と女が惹かれあうのに理由などあるものか、としてみよう。それはそうかもしれない。だとしても、主人公の人物像がかなり共感しにくいものに設定されていていったい何を考えているのか、何が信条で生きているのかがありがちな台詞からしか伝わってこない。
行には離婚を拒んでいる戸籍上の妻、万理江がいるが、これがまたわかりにくい。何を本音で言っていて何を見栄から言っているのか、そもそも行を本当に好きなのかどうかもわかりにくい。万理江が涙を流すシーンがあるので好きなのかな、とも思えるが、途中の台詞に「そんな男だったのね」と言うようなのもある。涙を流す割りに行がいなくなってから自分で事業を始めるのだが、そう言う描写がなぜ必要になのか、どう彼女の人格に関係しているのかが全然見えてこない。監督ではないがカットしたくなった。そんな事に一所懸命になれるならさっさと離婚してはどうなのか?
行は大怪我でベッドに横たわりながら「自分が日本を出たわけは....」とるいに説明を始める。これで行はるいに理解を求めようとするのかと思いきや、途中から、るいの「そんな強さが鼻につくんだ」と拒否の姿勢になる。まてまて、それなら最初から「おまえなんか嫌いになったんだよ」と言えば済むじゃないか、と突っ込みを入れたくなるシーンがある。日本を出た理由のところは観客への説明なんだろう。さらにその後、やはりるいを求めるがお話としてはそうだろうな、としか思えない。
るいは強い女のように振舞うがそれが実は単に強がりだったのだと、後半で台詞を使って説明される。だから強がりの裏側の弱い部分の映像なるものが全然無い。17歳年下の男を好きになったときに"全てが変わった"部分が1つの台詞にしか描かれない。本当に本人が言う通りなのか、見ていて全くわからない。映画としてそんな事有り得るのだろうか?
どうもどの登場人物もこう言う場面ならこう言うだろうな、と言うようなお約束の台詞を吐いているだけに見えて仕方ない。役者の演技の下手さがそれに拍車をかける。
さて、最後の部分でるいが「死に対するささやかな勝利」を詠うのだが、その勝利はあまり輝く事がない。残念ながら行が最後まで生きているからだ。
るいは前に離婚してから20年間男を知らず、仕事に没頭してきた。そう言うこともあるかも知れない。そして行に会った時に自らの状態をセカンドバージンと言う。と言うことは、前回の結婚は神聖なるバージニティの中にあった事を意味するだろう。20歳そこそこ位で結婚して一生その夫と添い遂げるような結婚であったことが伺える。
「男なんて何よ」「こんなものか」「付き合ってられないわ」と言うような事から仕事に没頭したのではなく「深い悲しみ」「絶望」のようなそう言った真情か何かが見えてくるのかと思うが、悪いが、それは原作者の勝手な思い込みや理想的女性像の押し付けに感じないでもない。台詞でそれを表現するだけではあまりに現実感が薄いのだ。
水汲み場に不思議な男がいる。「この水を飲めば....」のような台詞を吐く。これも東南アジアあたりにはそう言う事があるはずだ、と言う勝手なイメージを描いているに過ぎない。あまり深く考えずに書いたのだろうと思えてならない。(この映画はマレーシアで撮影されたが舞台がマレーシアだとは説明されていない。)
そうしたようなわけで、この映画をどう見たら良いのか全くわからなかった。
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orang-u
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