少年小説も良いものです。子供の視点だと今見えている世界が世界そのもので、それ以上に何も大切なものがあるわけでなし、それ以外のどこかに見た事のない空間が存在もしないようなそんな感覚です。
実際にこれを書いているのはそうした時代を経たにしてもそれ以外の世界を知っている大人なわけですが、そのときの感覚をよく覚えていて再現しているなあと思います。そしてそうした感覚を呼び起こさせる書き方をしています。ですから、自分がイギリスに住んでいたこともクリーピングを経験などしていないにも関わらず感覚として共感できてしまいます。
逆に現在の少年である子供たちがこれを読んだらどうなんだろう?、臨場感がもっとあるのか、それともそうでもないのか、そのあたりはわかりませんが。いずれにしても想定読者でない大人にとっても面白いと思います。
この小説では死んだ少年が後で出てくるのですが、そのあたりはちょっと微妙かなあと思います。
最近、日本の映画には死んだ人がよみがえって出てくるものが多いです。それは身体は死んでも魂は不滅であるとか、あちら側の世界が存在するとか、精神世界とか神秘主義を超簡単に解釈して便利に使ってしまったようなものです。
この小説の中にも死んだ少年が出てきますが、死んだ少年は生きている少年の想いが描く範囲でしか登場していません。ただ、書き方が微妙なので人によっては上記のような人格を持った幽霊のように読めてしまうのでは、と心配してしまいます。それだけ臨場感とスピード感のある書き方でもあると言うことです。
ところで、少年小説の題名はとても魅力的なものが多いのですね。
本の裏の方に本の題名がたくさん出ています。
「弟の戦争」
「家出の日」
「時間だよ、アンドルー」
「だれかがドアをノックする」
「ぼくの心の闇の声」
「クリンドルクラックスがやってくる」
「水のねこ」
「オーディンとのろわれた語り部」
「丘の家、夢の家族」
「猫の帰還」
「彼の名はヤン」
題名だけで惹かれるものがありますね。
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