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もんく [マレーシアで働いて13年→2022猫を連れて日本]

パクリ

最近ニュースを読んでいると中国のパクリ問題に批判が集まっているようです。

偽食品に始まり偽ブランドや偽ディズニーランド、偽アップルストアやはたまた偽スティーブ・ジョブスみたいな人まで出てくる始末。多少面白いと思うのです。


そうした物をなぜ批判するかと言うと、社会通念としては誰かが考えたものを真似してお金儲けをすると最初にそのアイデアを作った人の権利を侵害すると言うことです。つまりこれは経済の論理の中のことです。ですからよく訴訟が起きます。論理としては通る行為です。


ただ、その偽なんとかを批判する人の多くはその当事者では無いと言うのが面白いところだと思います。誰かが誰かの真似をして偽なんとかを作って売っていても批判する人はあまり損はしません。騙されたってことにならなければ良いのです。ですからそうした批判行為については単なる情動的な行為なのだと思うのです。


ですが、さて、誰かの真似をすることは実際、そんなに悪いことなのでしょうか?

人間の生活と歴史の中には文化と言うものがあります。文化と言うことになりますと、ある一定の規模の人間の集団がある似たような行為をするとか似たような建物に住むとか似たような生活習慣を持つような事で象徴されます。これ、すなわちその集団はお互いに周りの人の真似をし合っていると言うことではないでしょうか。もしみんなバラバラで独特な人間であれば文化と言うものはそこには無いわけです。

少し前にマラッカに行きました。ガイドブックには「マラッカと言うのはxxxxな人たちが長年住んでいて...街並みがこんなに独特で...」と書いてあります。これが皆バラバラだったらマラッカはマラッカでは無かったと思うのです。


サルだって1匹のサルがたまたま芋を洗ったのを別のサルが真似てそれをさらに別のサルが真似て、そして最後にはそこに住む全サルが芋を洗うようになりました。鳥も誰かの鳴きまねをして成長するそうです。


人の人生はまず真似から始まります。母親の声から言葉を学び、親の行動から人間らしい振る舞いを学びます。幼稚園や学校に入るとこれはもう強制的に他人の真似を覚えさせられます。選ばれた1人の先生と言う役目の人間が教室に集められた約40人にその知識をコピーさせるのが学校です。何年も何年もそう言う状態に子供を缶詰にして育てるわけです。

それをずっとずっと飽きもせずにやり続けているとどうしたわけかいつの間にか研究者のような立場になっていって博士などと呼ばれます。彼らは自分の作品(論文)を書くことになりますが、そこには必ず引用と言う行為が入ります。誰かがああしてこうしてこうだと結論付けているのを正しいと思うからそれを真似してさらにこうするとこう言う考え方になると言うような事です。それをさらにまた誰かが真似してと言う対話を続けています。その中からたまにノーベル賞のようなものを貰う人が出てきます。


赤ん坊から学者までこうしてまともな人間は真似ばかりしているのです。逆に誰かの真似をしなくなったらボーッとしてしまってダメです。別の言葉で言えば学習意欲が減退したと言うことです。

学習と真似はほとんど同義語です。また他人のやった行動や物事や思い出すのと創作や創造も脳の活動としては同じだそうです。そう考えると中国の人が偽何とかを大量生産できるのは実は中国人の潜在能力の高さを示しているのかも知れません。もちろん日本人もその昔には世界の真似っこをずっとしてきた民族であるのは歴史的な建物を見れば明らかです。


最近仕事をしていて感じるのはマレーシアの人は意外と真似が下手なように見えます。他人がやっているちょっとした行為を見て真似するのは日本人がそれをするより上手では無さそうなのです。だから能力が低いと言うことではありません。文化的にそうする習慣が無いのかなと思えるのです。そう言うのを見ていると日本人は中国人どころでなく真似が上手いように感じます。台湾人もその意味では日本人と同じ仲間でした。すごく上手い。

だからどちらも大勢いてもみんな同じ事を考えるしみんな同じものを好きになっていて個性的でもないのです。(だから住むとつまらなくなってきます。)

と、パクリが良いか悪いかはいろいろな面がありますので一概にダメとは思いません。(逆に深く考えもせずに他人の真似はダメだと自動的に決め付ける思考の方が実は誰かの真似だったりするのではないでしょうか?)そんな事で他人を批判しているより、自分でも誰かの真似を実際にしてみて結果がどうなるか、そう言う体験を得る方が面白いし良いのではないかと思うのです。

アメリカ人の英語をパクッて話ができるようになると金髪の美女と恋に落ちる可能性は絶対増えますよね。何もしなければその可能性は永久にゼロのままなのですから。このマレーシアだって前の首相が「ルック・イースト」と東の方の国を真似しようとスローガンを掲げていてここまで来たのです。国をあげて「パクリ」を推進していたと言うことです。
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