最初に仕事が入ってきたときに3D図面から起こしたイラストが出てくる。そして次に寸法の入った2Dの仕様書。それを見ると、さすがに日本人設計だなあと感じる。
1つのパーツで高い機能を実現しようとする意図が見られる。幕の内弁当のように小さいこだわりが多く詰まっている。設計の端々に小さな挑戦が織り込まれていて実際に生産するのはとても難しい。だからこそ海外調達と言えども日系企業を使いたがるのだろう。外国企業が似たような製品を生産し、マレーシアで部品を調達しているからと言って同じマレーシアや外資系企業に仕事を回しにくいのはその為だ。
日系の部品メーカーであればそうした仕様の仕事が回ってきてもそれを自然な事と思って素直に仕事を請ける。ただ、問題なのは技術や技能の移転がきちんと自社の海外工場にできているかと言う事だろう。そこで働く人は現地の人であったりマレーシアに来ている別の国の人である。そうなると技術的にできる=日本品質で生産できる、と言うことには全くならない。
日本人はこれまで日本にこもっていた期間が長かったので"物理的にできる"がすなわち"できる"と考えがちだ。日本ではそれで良かったけれども海外では違うことが、良く言う言い方では"頭ではわかっているけれども"であって、実感できはしない。しかも言語を(この部分に基礎的な問題があるにしても)論理的に駆使して明瞭に説明する事にも慣れていない。
海外に送られてくる人は技術的に問題なく仕事ができるある程度以上の人材である場合が多いけれども、誰にも頼ることができす勝手の大きく違う場所で自己や他人(外国人)のマネジメントまでできる人を送り出す事は不可能に近い。さらに、日本の本社はこれほど海外工場が主な生産地になっているにも関わらず、基本的に日本の強固な体制を崩してまで人を送ることはしない。(そう考えるとパナソニックが調達本部を海外に移したのにはびっくりさせれらる。)そうなれば派遣された人間は右も左もわからない所で孤軍奮闘を余儀なくされる。(そうした環境でがんばっている日本人の方々には頭が下がります。)
日本から来る図面を見るとそうしたいろいろな考えが頭の中をぐるぐる回る。
幕の内弁当の設計は地味だけれども日本の強み。ただ、それは海外生産に向いているかと言うと何とも言えない部分がある。近い将来、その図面を描いた会社の製品が海外企業の同カテゴリーの製品と競合するのは目に見えている。しかも競合海外企業は良い製品は作るにしてもマーケティングはそれほど上手くないらしく、市場価格を下げる急先鋒に立っているような企業である。市場シェアが大きいにも関わらずとてもアップルのように市場をコントロールする事ができていないのだから。(日本企業がアップルのような立場になれる可能性は低く、台湾、韓国や中国企業と競わなければならないと言う意味でもある。悲しいことに。)
そうなると、コストの高い日系企業を使い続けて競争力のある製品を売り続けられるのだろうか、と思いもする。つまり、まだまだ日本企業は日本市場向けの製品作りしかできないところが多いと言うことだろう。
それが日本の強みでもあり弱みでもある。
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