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天然鰻
先日、天然鰻を(記憶にある限り)生まれて初めて食べた。冒頭の写真が、その天然鰻の鰻重である(JR市川駅前 「尾張屋」)。見た目には、「大きいなあ」と思うくらいで養殖鰻とあまり変わらないが、肉厚が違う。
養殖物より天然物は、脂の乗りが良いとか、コッテリしていると聞いていたので、さぞ脂っこく、食後の口中の感触も脂っこいものと勝手に想像していた。
確かに脂の乗りは養殖物の比ではない。ところが、申し分なくコッテリと脂が乗っているにもかかわらず、食べている間、脂っこさは全く感じない。それでいてコクがある。また食後もサッパリしていてしつこくない。これは驚きだった。味ももちろん養殖物よりも断然旨いことはいうまでもない。
ただひとつ欠点は、値が高いのと入荷する日が少ないことだ。捕獲も自然条件に左右されるからだ。
鰻に限らず食材全てにわたって天然物が珍重されるのは、天然物が稀少だからだ。裏返していうと、現在我々の口に入るほとんどの食材が、養殖物か或いは人工的に生育された物だということだ。
哀しいかな、我々は自然天然の物の味を忘れたか、若(も)しくは知らず、養殖物・準養殖物を本物として食さざるを得ない状況に置かれているのだ。
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ただ、養殖が食材の範囲に収まっているうちは良い。人間の養殖だけはご免被りたいものだ。しかし現今の科学・遺伝子操作は、人間の養殖すらしかねない雲行きである。将来、天然の人間と養殖の人間とが併存する世の中が来るのだろうか。甚だ不気味である。
06.01.08 投稿分を再掲