大島康紀☆雪月花

Artist COKY.OSHIMA
Painting,Drawing
Arts & Essay

夢二追想

2013-12-11 | Essay
西日本、関西から山陽の旅に出かけた。幾つかの所要も含めて広島まで足を伸ばした。
帰路のコースに岡山に立ち寄り、竹久夢二の故郷を訪ねる。生家と夢二郷土美術館、一度は訪ねてみたかった待望の地。
倉敷の町も歩いてみた。夢二郷土美術館は岡山城の公園の入り口にあって、小さいけれど瀟洒な建物が印象的だった。



私が夢二作品に出会ったのは10代の終わりごろ、病床で長いこと療養していた時、看護学生のお姉さんが持ってきてくれた雑誌の1ページ。
夢二の特集が載っていた。哀しげな、優しげな、なんてこんなに情緒的な絵が描けるのだろうという衝撃を受けたのだ。
木曽路の島崎藤村の記念館を訪ねた時、初めて夢二の原画を見た。
藤村の児童文学に添えられた挿し絵だったと思う。ペンで描かれた少年の絵が脳裏に焼き付いている。
その後、東京で絵の勉強を始めた私にとって美大のデッサンはとても勉強になったが、
画家としての野心は夢二の叙情の世界に引き込まれていった。
生計を立てる意味でもデザインの仕事や出版物の挿絵の仕事が楽しかった。
なかでも、児童書や検定教科書の挿絵の仕事は今なおライフワークのようなものだ。


夢二といえば美人画がよく知られているが、大正時代のデザイナーとして一世を風靡し女性に大人気の作家だった。
蔵の町を歩き、郊外の田舎道を訪ねてみると、夢二が幼少期に培った感性を共有できたかのような錯覚を覚えた。


画像:竹久夢二絵葉書集より