大島康紀☆雪月花

Artist COKY.OSHIMA
Painting,Drawing
Arts & Essay

青いお数珠

2014-07-20 | Essay


「まあ、素敵な青いお数珠。」
法事に出向いた折、高齢の御夫人から声をかけられた。
ジュエリーデザイナーのkawamuraさんにお願いして作っていただいたもの。
ラピスラズリのブレスレット。
ずっと愛用していたお気に入りの逸品のループが切れて珠が飛び散ってしまった。
馬小屋でボロ取りの最中だった。
オガ粉や藁の中に沈んだ珠を夢中で拾い集めたものの一個足りない。
取り置きしてあった珠を足して、ホームセンターで細いワイヤーと留め具を入手して復活させることができた。

かつてインドを旅した時、タジマハルの霊廟の大理石の壁に象嵌されたラピスの青い石に魅せられて
現地で買い求めたことがある。ストーン・パワーとか誕生石とか無縁だが、いつしか油絵の基本色となった。
インドから持ち帰った石は、砕いて磨りつぶしポピーオイルと混ぜて油絵具を作った。
天然のマリンブルー絵の具を使うのが密やかな楽しみだった。

「ねぇあなた、私のサンゴの帯どめ知らない。」
「あぁそれなら、砕いて絵の具になったよ。」
知人の日本画家の夫婦の会話だ。
顔料をにかわと混ぜれば岩絵の具となり、ポピーオイルと混ぜると油絵具ができる。
我が家には高価な石などないから心配はないけれど、
石や砂や瓦から手製の絵の具をつくるのも楽しい。

デザイナーの手を煩わせることなく
再生されたブレスレットは今も手元で碧く光っている。


個展追想「白い木馬」

2014-07-16 | Essay
「白い木馬」f10油彩
1989年まちだ東急美術サロンで開いた個展案内状に載せた作。
この個展で一番先に売約になった「白い木馬」の持ち主から連絡をいただいた。
25年ぶりの声の再会である。
「今でもだいじにしてます。」と、横浜にお住まいの(O)さん。
長い年月を隔てた電話での応答ではあったが、うれしかった。

木馬シリーズを描いていた頃、しばしばヨーロッパに出かけていて
ベルギーのアンティークショップで買い求めた白い木馬がモチーフとなって
絵の中に登場するようになった。
メリーゴーランドの木馬やこの白い木馬は、人生の旅を想起させてくれる
モチーフで、夢中になって描いたものだ。
今、アトリエで生きた馬と暮らすようになるとは、当時の画家にとっても
想定外のできごとなのだ。


「白い木馬」の案内状の個展は何度目かは定かではないが、初期の時代、
新進作家と呼ばれていた頃のことで、思い入れも強かった。
その個展の案内状が二十数年ぶりに人の手を介して手元に戻って来た時
驚きとともに以前ブログにアップしたことがあって、それを(O)さんが
見つけてくださり、連絡がとれた。

モチーフになった木馬もアトリエの居間にいるけれど
生きた馬の絵も描いています。
今夏、軽井沢で61回目の個展を開きます。