ニセコのダチョウ牧場(第2有島だちょう牧場)

ダチョウの孵化から解体まで行い、命を頂く事、牧場を営む事で得た、学びや気づきを記録しています。

子どもたちに伝えたい逃げる事の大切さについて

2023年08月20日 | 日記
「逃げる事の大切さについて」

だちょうさんは逃げる事が得意です。

何か異変を感じたり、周りの生物が走り出したりしたら、脇目も振らずに走り出します。

だちょうさんは走り出した理由を思い出せないからバカだと言われる事もありますが、陸上生物で一番の長距離ランナーであるだちょうさんにとって、何故走るのか考えたり、異変を注意深く観察したりしている時間は無駄で、その間に走った方が、敵は疲れ果ててしまいますから安全です。

だちょうさんはとても良い目で周囲を見渡し、問題を察知したらさっさと逃げ続ける事で、地球上で恐竜に近い最も古い鳥として生き延びてきました。

“賢い”私達人間は、仕事の環境や人間関係のあれやこれやに悩まされた時、周りの目を気にしたり、将来への不安から今いる環境から離れる事に躊躇してしまいます。

けれども、古くは孫氏の兵法がいう「36計逃げるにしかず」やハンガリーのことわざ「逃げるは恥だが役に立つ」、最近の経済理論でも言われるように、逃げる事はとても効率的な生存戦略とも捉えられますし、脇目も振らずにさっさと逃げるという事が大変役に立つように思えます。

チャールズ・ダーウィンという進化論を書いた方が「生き残る種とは、最も強いものではない。 最も知的なものでもない。 それは、変化に最もよく適応したものである」と言っています。

だちょうさんは長く生き延びる中で、環境の変化に耐えながら他の“賢い”生物の絶滅を見てきました。

今悩んでいる方は、どうしようもない事をあまり悩み過ぎて疲れ果てる前に、だちょうさんを参考に誰かの目や意見を気にしないで、さっさと逃げ出して下さいね

子どもたちの夏休みが終わるこの時期、毎年子どもたちのメンタルヘルスが心配になるのでこんな事を書きました。

昔、フリースクールという学校の代わりになる居場所でボランティアをしていた事があります。

なんらかの理由で学校に通えない子や居場所が無い子がのびのび楽しそうに過ごしていました。

子どもひとりひとりの個性を尊重される場所はきっとどこかに有るように思えます。

牧場にたくさんいらっしゃって、楽しんでいった子どもたちが、どうか袋小路にたどり着いて悩み過ぎる前に、良い居場所にたどり着いて欲しいなぁと願っています。


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十年前の今日、初めてブログを書きました。

2023年07月22日 | 日記
10年前の2013年7月22日に初めてブログを書きました。

私はそれまでSNSで情報発信をしたことがなかったので、とても緊張していたことをよく覚えています。

文章が短かったですね(笑)

当時はくたびれたコンテナハウスに自動販売機を設置することになり、私はその販売準備を始めました。

その中で、だちょうさんの堆肥を利用した花壇を作り、観光にいらっしゃった方の眼を楽しませようと思いました。

写真は花壇をつくったときのコンテナハウスの様子です。

当時の牧場はダチョウの孵化や育てる技術の蓄積は進み、と畜して販売することができるようになりましたが、実際にどう進めていけば良いのか、誰にも分からない状況でした。
そもそも祖父を含めた親族全体はダチョウという畜産を事業化して続けていくこと自体に関心が少なく、ダチョウ産業全体の先行きも暗くなっていた時代背景も重なり、祖父が現役を退いたらだちょうさんや牧場がどうなるのか全く分からない状況でした。

私は精神科病院で仕事をしている頃から週末には牧場に通って働くことが多く、この場所の観光地としての価値を感じていました。

気軽に立ち寄って、のんびり過ごしながら動物たちのありのままの姿を楽しんでもらうことが現代の私たちにとってどれだけ大切な事なのか。

私が書いた最初の記事は花壇を作っていることを投稿したものです。
事業資金といえるものが無かったので、ホームページを無料で作成できるサービスを利用し、ホームページを始めたのもこの頃です。

当時から今までどうしたらこの牧場を続けていけるかを考えて、出来ることを少しづつ積み重ねてきました。

本当に色々なことがあって、学びが多い日々を過ごしてこられました。
このブログに書くという事もたくさんの出会いにつながって、また新たな学びにつながっていると思います。
これからも学び続け、少しでも皆さんを楽しませられる内容が書ければと思いますので、これからもよろしくお願いします。

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生き物文化誌学会の学会誌に写真と文章を載せて頂きました。

2023年06月02日 | 日記
去年参加させて頂いた生き物文化誌学会の学会誌が最近出ました。

牧場の写真を表紙に使って頂けました。

秋篠宮殿下が理事を務める学会で、国立民族学博物館の教授等、御高名な方々に混じって、私の文章や参加させて頂いたシンポジウムの内容が載っています。



とても興味深い学会であることを皆さんにお伝えしたかったので、私なりの解釈で生きもの文化誌学会のHP上にある説明を要約してみました。

「生きもの文化誌学会では生き物と人の関わりを日常生活、文化、環境など様々な次元で探求しています。

私たち人は生き物を食し、暮らしの中で様々に利用してきました。

森は動物を養い、動物は植物の受精や種子の散布を助けるなど、私たち人間を含む生き物は互いに影響し合い、地球の環境を保っています。

人は人だけでは生きていくことができません。

さらに生き物は神話や伝承、文学や芸術などの人の文化にも深く関わり合い、私たちの精神的な支えにもなります。

この学会で探求する様々な文化には私たちの先祖や世界中の民族が長年にわたって築きあげてきた自然と共生する「智」が込められています。

生き物とともに生きる地球の住人として、生き物と人の関わりをより深く理解し尊重することが地球環境の面からも大切で、この学会ではその豊かな「智」と情報に触れることができます。

なお、この学会は学者や研究者だけでなく、子どもたちをはじめとした生き物とその文化に興味のある人ならだれでも参加することができ、そういった色々な人の関わりの中で一緒に「生きもの文化誌学」を広めていけるよう願っています。」

以上は要約ですから、詳しくお知りになりたい方は「生きもの文化誌学会」のHPをお確かめください。

今号は牧場のお店の他、ニセコ町の図書館「あそぶっく」さんに置かせていただく予定なので、だちょうさんをきっかけに様々な「智」に触れてみてもらえればと思います。

皆さんに今まで色々とお伝えしているように、だちょうさんという生物種だけでも多くの学びがあります。

だちょうさんは、人間が乱獲したことによって、絶滅しかけた歴史があります。

それが今では世界各地で欠かせない家畜となっており、卵殻アートなどの副産物を生かす文化的な面でも人と密接に関わり、影響を与えています。

現在、環境の変化によってだちょうさんの個体数は減少傾向です。

世界の多くの生物たちが同じような状況に陥っていますが、こういった変化が人類の未来に影響を与える事は言うまでもありません。

人類は生物の枠を超えて様々な能力を獲得し、生息域を拡大し、既存の生態系に影響を及ぼし続けてきました。

私は今だからこそ、森羅万象に敬意を持ち、自然と共に在った過去の人類の歴史や文化を学び、現代にかろうじて残る生態系をいかに守り繋げていくかについて知識を深めるべきだなぁと思っています。


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どうしてダチョウを飼っているのか

2023年04月13日 | 日記
「どうしてダチョウを飼っているの?」と良く聞かれます。

最近は「だちょうさんが可愛いからです」と即答したくなります(笑)

どうしてだちょうさんを飼うのかを答えようとするととても長くなってしまうのですが、今回はダチョウという動物を飼うことが持つ意義について書こうと思います。

地球が急激に温暖化していることはご存じかと思いますが、5500万年前にも5-9℃急激に上昇した時期があるそうで、PETMと呼ばれています。

地球の歴史から見たらごく短い数万年の間温暖化が続いたことにより、多くの生物の絶滅や生物の進化などが起こったものと考えられています。

だちょうさんの祖先は鳥類から分化して7900万年といわれていて、その説が正しければ、この急激な気候変動時代も生き延びて現在に至っているようです。

ダチョウという動物は人類が家畜化して改良しはじめてからの歴史が浅く、原始的な能力を色濃く残しており、気候変動に対応できる可能性が高い生物資源として捉えることができます。

例えば、水の要求量が少ない点が評価できます。

温暖化が進行すると乾燥した砂漠のような地域が増えていくと考えられ、水資源の世界的な枯渇から、畜産動物が消費する水の量が問題視されています。

最近騒がれている黄砂被害ですが、これも地球の温暖化がユーラシア大陸内陸部の乾燥、砂漠化を進めていることが原因の一つと考えられております。
アメリカでは乾燥がひどくなっており、動物に食べさせる牧草などを育てることができる土地の減少、牧草価格の上昇が起きています。こうした地球温暖化に伴う土地の砂漠化が現代の畜産を困難にする未来が想定されています。

ダチョウは他の生物がいなくなった乾季の砂漠において他の草食獣の糞などを食べて生き延び、孵化、育児をする生命力を持っており、必要とする栄養量は効率的な畜産とされているブロイラーより低いです。

そもそも人類が動物を飼育してタンパク質を取らなくても良いのではないかという考えも増えてきていますが、畜産動物は人類が利用できない資源や環境を有効に利用してたんぱく質を生成でき、その他にも有益な点が多く、畜産の形は変わったとしても続いていくと考えられます。

未来に起こりうる食糧問題解決の一つの選択肢としてダチョウの畜産を継続、研究していくことに意味があると思うので、今年もだちょうさんの命を頂いてお肉を販売させていただきます。
だちょうさんを必要以上に苦しませずに美味しいお肉にすることにこだわってきましたが、最近やっと及第点をつけられるくらいになりました。
もし機会があればぜひ召し上がってみてくださいね。


今年は10年前と比べると雪解けが驚くほど早く、今から猛暑で乾燥する夏の可能性が頭をよぎるのですが、それより過酷な環境を生き延びてきただちょうさんにとっては何の問題もなさそうです。

森林と水が豊かな日本にいると想像がしにくいのですが、夏の暑い中、日光を浴びてぴんぴんしているだちょうさんをみて、現在起きている深刻な地球温暖化が進んだ未来を想像するというのも大切なことだと感じています。

ただ最近はそういった意義も忘れて、お客さんにだちょうさんが可愛いという事について語りたくなってしまうのですからだちょうさんは本当に魅力的ですね。


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重機を動かすときに思い出すこと

2023年03月12日 | 日記
今年も無事除雪のシーズンが終わりました。
降り続ける雪を除雪する作業をしていると、10数年前に大型や大型特殊の免許を頂いた卒校式のことを思い出します。

卒校式では校長先生から東日本大震災の事を聞かされました。

震災では多くの建物や道路が壊れ、震災がれきの撤去等に重機による作業が長時間必要であった事。

現場に多くの重機は有ったけれども、昼夜動かすにはオペレーターが足りなかった事。

校長先生の涙がにじむ目と少しうわずった熱のこもった声から無念さを感じ、若い君たちに期待しているという言葉に宿る校長先生の使命感に心動かされました。

あのお話が無ければ、重機を扱う事は技術を磨く貴重な機会と思えず、ただの作業になっていたようにと思います。

ぬかるんでいたり、挟所であったりする難しい環境も克服できれば、いつか災害現場でお役に立てるかもしれない。
そんなふうに思えています。

おかげさまで大きな事故無く、除雪シーズンを終えられるのも、あのありがたい授業を受けられたからなのでしょう。

これから大きな震災が起こらず、技術はお役に立たないままで、目がよく見えなくなるくらい年老いる平和な未来を願っているのですが、校長先生の想いはどこかの誰かに伝えたいと思い、書きました。


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