アフリカの砂漠で現存しているだちょうさん。
あまりにも気候の違う、ニセコのような寒いところで飼われているだちょうさんが大丈夫なのか心配になりますよね。
私は雛がある程度大きくなったら暖房を使わずに育てています。
なんとなくかわいそうに感じますよね。
しかし、実は起源までさかのぼると寒いニセコでも大丈夫な理由が分かります。
だちょうさんの祖先は恐竜から進化した小さな鳥でした。
この鳥が恐竜の絶滅して天敵が減った地上で繁殖し、飛べなくなった鳥の一部がだちょうさんの祖先といわれています。
そのだちょうさんの祖先がいたところがどこだと思いますか。
きっと皆さんは何となくだちょうさんが現存しているアフリカ大陸かと思いますよね。
人類はアフリカ大陸から拡大していったといわれていますし、何となく生物共通の起源と感じやすいのかもしれませんね。
実は最近の研究によるとユーラシア大陸からアフリカ大陸に渡った可能性があるといわれています。
数万年前のだちょうさんの化石が中国各地やロシアから出土していることや化石の分析など、ご興味ある方は是非調べてみてください。
ちなみに、他の鳥からだちょうさんの仲間の形に分化が起こったといわれているのが7900万年も昔で、10万年単位で温暖化と寒冷化を繰り返す地球の歴史の中で、だちょうさんは地球が今よりも寒かった時代に寒い地域でも生息していたようなのです。
ユーラシア大陸が地続きだった2000万年前くらいにアフリカ大陸に移動したと考えられ、数十万年前に生まれたといわれる人類にとっては大先輩ですね。
もう一つだちょうさんが寒さに強いといえる理由は体の大きさです。
皆さんはベルクマンの法則というものをご存じでしょうか。
これは体の大きな恒温動物ほど寒い地域にいるというものです。
日本ではツキノワグマとヒグマの関係や二ホンジカとエゾシカの関係が分かりやすいですね。
体の表面積と体積の関係で、体積が大きくなるほど表面積の割合が小さくなり、体の中に熱をため込めるというものです。
この法則に照らし合わせると、鳥類で一番大きいだちょうさんがアフリカの暑いところにいるのは不思議ですよね。
しかし、先ほど書いただちょうさんの起源から考えると面白いと思います。
ひょろっと長い首や脚は熱をため込むのに適していないように見えますが、寒いときはうずくまり脚は収納できますし、首は細いので表面積が少ないです。
長くなりましたが、だちょうさんの起源とベルクマンの法則から、だちょうさんが寒いニセコでも大丈夫なのだと納得してもらえればと思います。
ちなみに寒さに強い理由の一つに腸の長さに伴う消化吸収能力の高さも関係していると個人的に考えています。
鳥類では圧倒的な長さであることに加えて、虫や小動物のような動物性タンパク質から植物のセルロースまで消化できる豊かな腸内細菌叢を持ち、エミュー等の走鳥類の中でも群を抜いて、長い時間をかけて無駄なく吸収消化する過程で、発酵熱も発生させて、体を温めてエネルギー効率を高めているようです。
私の考えでは、だちょうさんは他の生物の進化に伴ってロシアや東アジアなどの生息域を失っていきましたが、むしろ進化した他の生物が生き延びられなくなった、乾燥して食物がない過酷な環境でも生きられるから生き延びているのだと思います。
外敵を察知する能力、時速60キロの速度で走り続けることができる鳥由来の心肺能力と地上で進化した脚力、長い腸の中の豊かな腸内細菌叢を活かして他の草食獣の糞や他の生物が食べられないようなものを消化吸収する能力、けがを化膿させずに治す免疫力、脂肪から水分を体内で作る能力など、様々な環境、時代を越えて古代から受け継いだ形質を活かしていると思います。
地球温暖化が気候危機ともいわれるようになり、現代の社会の継続性が危惧される今日において、今よりも過酷な環境を生き延びてきただちょうさんを見ていると、地球が住みにくくなったと思っているのは我々のような歴史の浅い生物たちだけで、古代から生き延びてきた生物たちは持ち前の生命力を活かして、次の大量絶滅を耐える準備をしているように思えるのですから不思議です。
そうならないように私たち人類ができることとしては、地球の歴史に比べると短い年月の中で”不自然な社会”を築いてきている事を学び、もう少し長く大きな視野で物事を捉えて、自然と寄り添う事が大切だと感じます。
そうはいっても現代人は圧倒的な情報や知識の量に溺れてしまい、物事の本質を捉えられないことが増えているようです。
だからこそ私は意識して、時に立ち止まり、自然や過去から物事を学んできたことを少しでも伝え、これからの社会がより良くなったり、生きやすくなったりできるようにしたいと思います。