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2020.6.29COVID-19【上久保誠人|DIAMONDonline(2020.5.19 5:10: 安倍政権のコロナ対策に募る不信、問題の本質が「専門家会議」である理由

2020年06月29日 | ⑺_①COVID-19《戦争・治安に協力する公衆衛生学|新興感染症コロナウイルス
午後7:19 · 2020年6月29日
 

最後まで読んだら、地政学の人かよ、がっかり

**およそ14,000文字、ネット上では9ページに分けて、記事の周りは広告と文中とは関係なイイメージ画像(投稿者が選んでるはずがない)と、自社紹介に¥の数々、誰にもやさしいユニバーサルデザインレイアウトとはおもえない。自分のブログにコピペして心穏やかにして読む。
by龍隆2020.6.29

上久保誠人|DIAMONDOonline(2020.5.19 5:10: 安倍政権のコロナ対策に募る不信、問題の本質が「専門家会議」である理由
上久保誠人:立命館大学政策科学部教授/  上久保誠人のクリティカル・アナリティクス
https://diamond.jp/articles/-/237578
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 新型コロナウイルス対策に関する安倍晋三首相の一連の意思決定に対する世論の評価は低い。その理由は、安倍政権の意思決定プロセスに問題があるためだと筆者は考える。特にコロナ対策で陣頭指揮を執る「専門家会議」が、有事を想定せずに「平時」と同じパターンで発足されたことに問題の本質があると考える。コロナ禍を奇貨として、日本の政策決定システムの抜本的な見直しを考えるべきではないか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

専門家が持論をメディアやSNSで発表し
それに従うという構図に違和感や不満


 安倍晋三首相は5月14日、新型コロナウイルス対策で全国に発令した緊急事態宣言の一部について解除。13の「特定警戒都道府県」のうち茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県と、特定警戒ではない34県の合計39県で解除すると表明した。また、首相は解除しなかった8都道府県(北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉、京都、大阪、兵庫)について「5月21日をメドに専門家に評価してもらい、可能であれば5月31日を待つことなく解除する」と説明した。
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 5月16日0:00時点の日本国内の新型コロナ感染者は合計1万6237人(死者725人)だ(*)。

*厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について〈令和2年5月16日版〉」)→https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11354.html

 また、朝日新聞「全国で新たな感染55人 13県で2週間感染者ゼロ」(5月14日)によれば、安倍首相が緊急事態宣言の一部解除を発表した14日までの1週間で「感染者がゼロの県は、特定警戒都道府県に指定されている茨城、岐阜を含む22県」。そして、「特定警戒都道府県のうち、解除の方向となった福岡、愛知両県では、最近1週間での感染確認はいずれも計6人」にとどまり、「石川県はほぼ連日1~4人の感染が確認されているが、クラスター(感染者集団)の発生が確認された病院の関係者」だという。

 さらに緊急事態宣言の解除対象とならない東京都でも、新規感染者数は5月3日を最後に12日連続で50人を下回っている(東京都「都内の最新感染動向」のPCR検査陽性者の発生動向〈確定日別による陽性者数の推移〉、5月15日時点)。現時点でこの数字を見る限り、新型コロナウイルスの感染拡大はピークを過ぎたといっていい状況だろう。

 また、朝日新聞「全国で新たな感染55人 13県で2週間感染者ゼロhttps://www.asahi.com/articles/ASN5G0BDTN5FUTIL00H.html(5月14日)によれば、安倍首相が緊急事態宣言の一部解除を発表した14日までの1週間で「感染者がゼロの県は、特定警戒都道府県に指定されている茨城、岐阜を含む22県」。そして、「特定警戒都道府県のうち、解除の方向となった福岡、愛知両県では、最近1週間での感染確認はいずれも計6人」にとどまり、「石川県はほぼ連日1~4人の感染が確認されているが、クラスター(感染者集団)の発生が確認された病院の関係者」だという。

 さらに緊急事態宣言の解除対象とならない東京都でも、新規感染者数は5月3日を最後に12日連続で50人を下回っている(東京都「都内の最新感染動向」のPCR検査陽性者の発生動向〈確定日別による陽性者数の推移〉、5月15日時点)。現時点でこの数字を見る限り、新型コロナウイルスの感染拡大はピークを過ぎたといっていい状況だろう。
2p
安倍政権の意思決定を検証する
 一方、日本と世界の主な国における感染者数(死者数)を比較すると下記のような状況だ。

米国:144万2924人(8万7493人)
英国:23万6711人(3万3998人)
イタリア:22万3885人(3万1610人)
フランス:14万1919人(2万7529人)
中国:8万2941人(4633人)
韓国:1万1037人(262人)
日本:1万6237人(725人)

*厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年5月16日版)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11354.html
 日本の感染者数・死者数についてはさまざまな議論があり、単純な国際比較はできない。それでも米英伊仏と比較して死者数が2桁少ないこと、世界から高い評価を受ける韓国とも遜色のない感染者数・死者数にとどまっていることは、特筆に値するだろう。

 だが、コロナ対策に関する安倍首相の一連の意思決定に対する評価は低い。「全校一斉休校」や「アベノマスク」の決断が、専門家の助言に基づかない首相の独断だったことが次々に報道された(本連載第237回)。→2020.4.7 5:00安倍政権のコロナ対策が「国民ウケ狙い」を外しまくり後手に回る理由https://diamond.jp/articles/-/233937

 一方で、さまざまな専門家が持論をメディアやSNSで次々と発表し、国民がそれに従って行動自粛を続けていることに違和感を持つ人も少なくない。何より、外出や営業の自粛によって倒産や破算の危機に陥った事業者や個人は強い不満を持つようになっている(第239回)。
2020.4.21 4:45コロナからのV字回復対策を捨て、「戦時体制予算」を編成せよhttps://diamond.jp/articles/-/235228

 そこで本稿は、安倍政権の意思決定を検証する。コロナ対策で注目が集まったのは、「専門家」の存在だ。テレビのワイドショーやインターネットのニュースサイトなどに「専門家」と称される人々が登場しない日はない。コロナ対策を理解するには、通常の政策課題と比べて格別に高い専門性を必要とする。それでも国民は、その内容を強く知りたがっているということだろう。そして、日本のコロナ対策の陣頭指揮を執るのはいわゆる「専門家会議」だ。
3p
官僚が権力を持つ審議会、専門家は「お墨付き」だけ

 政策立案において、首相官邸・内閣府の主導が強まっていることは、かねて指摘されてきた(第183回)。しかし、官邸・内閣府が扱う政策案件は全体のごく一部で、政権が支持率を高く維持するために最重要と考える案件だけだ。首相側近の加藤勝信氏(現厚労相)が、かつて「一億総活躍相」など、一見、まったく関連性のなさそうな7閣僚を兼務したのは、世論に受けそうな政策をタイミングよく繰り出すことを政権が何より重要と考えていたためだ(第163回・P3)。p3/2017.8.1 5:08国民が「経済にしか関心がない」ことも政治の混乱の一因だhttps://diamond.jp/articles/-/137002?page=3

 一方、大多数の政策は首相官邸や内閣府が関わることなく、粛々と各省庁で立案され、実施されているのが実態だ。そして政策立案の始まりは、各省庁に設置される「審議会」である。そこに委員としてかかわるのが「専門家」だ。

 筆者は、かつてこの審議会について論考を書いたことがある(前連載第20回)2009.3.31 0:05官僚支配を終わらせるために、政策立案で幅利かす「御用学者」を一掃せよhttps://diamond.jp/articles/-/6754。小泉純一郎政権期の2004年に成立した「年金改革法」についてだ。

 当時、経済財政諮問会議の委員であった大田弘子氏(現・政策研究大学院大学特別教授)が著書『経済財政諮問会議の戦いアマゾン』で、「2002年12月に厚労省から諮問会議に改革のたたき台が出た時点で、制度の抜本改革が却下され、現行の制度体系を基本として改革を進めると決められていたこと」を問題視していた。

 大田氏は、「制度の抜本的改革には、諮問会議で審議する前に厚労省の審議会・社会保障審議会年金部会でそれを議題として取り上げておかなければならなかった」と指摘している。厚労省が都合の悪い改革案をたたき台に載せなかったので、議論のしようがなかったというのだ。

 大田氏の回想は、政策立案過程で「議題設定」の権限を持つ者が極めて大きな権力を行使できることを指摘している。自己に有利な争点だけを選別して政策決定プロセスに持ち込むことができるからだ。

 各省庁の審議会では、事務局を務める官僚が議題を設定し、専門家を参考人として招致。彼らの意見を聞き、質疑応答の後に議事録を作成して次回の議案を作成する。審議会の委員は、実質的には質疑応答に参加するだけ。要は、官僚が完全に議論をコントロールしているのだ。

 審議会で委員に求められる役割とは何か。筆者が英国に留学中、在外研究で英国に来ていたある経済学者に会ったことがある。彼は、政府の審議会委員の経験について「学者の役割は、官僚がやってほしいことにお墨付きを与える助言をしてあげることだよ」と言い切っていた。

 故に、委員には現在の世界最先端の研究に携わっている若手が起用されることはほとんどない。学会等の推薦によって、かつて大きな業績を挙げた重鎮の学者が起用される。彼らは「御用学者」と呼ばれることがある。
4p
欧米の専門家が「回転ドア」でキャリア形成するのと大違い

 一方、政策を実質的に立案する官僚は、多くが東京大学などの学部卒である。財務官僚の多くが東大法学部出身で、彼らは基本的にジェネラリストの行政官だ。一度は海外留学する機会を持つ人が多いが、学部卒が多いために留学では修士号取得にとどまり、博士号まで取得する人は限られる。もちろん政策について一定の専門性は持っているが、それは行政の経験に基づくものだ。官僚が作成する政策案は、理論的というより現行制度をベースにした現実的なものになる。

 一方、米国や英国など欧米の政府でも審議会はあるが、専門家が政策立案に関わる機会はそれだけではない。専門家は、若手の頃からさまざまなレベルでのポストに応募する機会がある。省庁では、政策の原案を練るところから多数の専門家が入り、先端の研究の知見が反映されることになる。

 また、官僚組織が終身雇用・年功序列でないことから、専門家は大学・研究所・シンクタンク等と省庁の間を何度も行き来しながらキャリアを形成していく。これを「回転ドア(Revolving Door)」と呼び、終身雇用をベースに省庁を退官後に官僚が民間に籍を移す、日本の「天下り」と対比されることがある。

 欧米のこの「回転ドア」は、大学と役所の専門家間で多くの「政策ネットワーク」が形成されることにつながる。また、省庁のポストには学会の推薦ではなく個人で応募する。そのため、学会に従順な専門家だけでなく、多様な学説を持つ専門家が政策立案に参画することになる。学説の間での「競争」が起こって政策案が磨かれ、政府の選択肢も増えることになる。

コロナ対策の司令塔「専門家会議」は
平時を想定して設置した?

 日本のコロナ対策と専門家の関係に話を戻そう。今回のコロナ問題で陣頭指揮を執る「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」(以下、専門家会議)は20年2月14日、首相官邸の「新型コロナウイルス感染症対策本部」の傘下に設置された。

 その時点では、政府は事態をそれほど深刻に捉えていなかったと思われる。中国などからの入国禁止という強い措置を取ることはなく、感染拡大が過ぎ去れば、中国の習近平国家主席の国賓来日も予定通り行われ、東京オリンピック・パラリンピックも無事に開催できると考えていたはずだ。あまり、「有事」という感覚はなかったと思われる(第234回)2020.3.3 5:12臨時休校騒動で分かった、今こそ安倍首相に「謙虚さ」が必要な理由https://diamond.jp/articles/-/230504
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「平時の専門家会議」に対する問題提起とは?

 だから、専門家会議は「平時」の審議会・諮問会議と同様に、学会の重鎮が大所高所から助言を行うために設置されたと考えられる。専門家会議の委員は12人。座長は脇田隆字・国立感染症研究所所長。副座長の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は、20年間世界保健機関(WHO)に勤務し、西太平洋地域におけるポリオ根絶を手掛けたことで世界的に知られる大物だ。

 その他、岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長、押谷仁・東北大学大学院医学系研究科微生物分野教授、釜萢敏・日本医師会常任理事、河岡義裕・東大医科学研究所感染症国際研究センター長、鈴木基・国立感染症研究所感染症疫学センター長など、学会の重鎮がズラリと並んだ。

 一方、コロナ対策の具体策を立案し、専門家会議の議題設定をするのは、厚労省・健康局結核感染症課の医系技官だ。医師免許・歯科医師免許を有し、専門知識をもって保健医療に関わる制度づくりの中心となる技術系行政官のことを指す(厚生労働省「医系技官採用情報」)。

 日本のコロナ対策は当初、PCR検査を抑制的に行い、医療崩壊を防ぎながら感染拡大が終息するのを待つというものだった(第234回・P3)。この意思決定には、2つの理由がある。1つは、新型コロナが「指定感染症」となり、コロナに感染したと診断されると無症状や軽症の人でも原則的に病院で入院隔離措置を取らねばならない「感染症法」が適用されること。もう1つは、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)を経験しなかった日本の感染症医療体制の脆弱性を考慮したものだ(第49回)。医系技官らしい、現行法と現場能力を考えた現実的な政策だったと思う。

 ただし、そこに問題がなかったわけではないという指摘がある。上昌弘・医療ガバナンス研究所理事長によれば、世界のコロナ対策の議論をリードする英医学誌「ランセット」や英科学誌「ネイチャー」などの学術誌の議論を医療技官はフォローできていなかったという(上昌弘『医療崩壊 (37) 「医系技官」が狂わせた日本の「新型コロナ」対策(下)』)。

 同記事は、世界の最先端の研究成果で次第に明らかになっていく新型コロナの特性について、医療技官は十分な情報を得られていなかったと指摘。その結果、「感染拡大が過ぎ去るのを待つ」という最初に立てた対策に長い間固執してしまうことになったという。

 この指摘が正しいとすれば、医系技官は医師免許を持っているが、世界の最先端の議論を追う専門家ではないということだ。さらにいえば、専門家会議の重鎮たちも最先端の議論をフォローできていない、研究者として第一線を退いた人たちばかりだったということになる。

専門家会議が「クラスター対策」を批判的検証できない構図

 一方、「厚労省・クラスター対策班」が発足したのは専門家会議の発足から11日後の2月25日だ。コロナの感染拡大が過ぎ去るのを待っていたかに見えた政府が、事態の深刻さを受け止め、ようやく明確な新型コロナ対策を打ち出した。

 クラスター対策班とは、厚労省の新型コロナウイルス対策本部に属する総勢約30人の組織だ。「クラスター対策」とは、理論疫学を専門とする西浦博・北海道大学教授と専門家会議の委員でもある押谷・東北大学大学院教授が中心となって考案したものだ。

 押谷氏が3月29日に発表した「COVID-19への対策の概念」によれば、クラスター対策とは、SARSや新型インフルエンザとは異なる、新型コロナウイルスの特性を考慮した対策である。

 SARSや新型インフルではすべての感染者が重症化したため症例を把握しやすく、感染連鎖をたどって断ち切ることで封じ込めに成功した。しかし、新型コロナは多くの感染者が軽症か無症状なので、すべての感染連鎖を見つけだすことができない。

 ただ、対策を検討する上で重要な特徴も分かってきていた。新型コロナは、多くの場合は周囲にほとんど感染させない一方で、特定の人から多くの人に感染が拡大していたのだ。つまり、「クラスター(感染者の集団)」を制御すれば、新型コロナは終息していくことになる。そこで「クラスター対策」を考えたのだという。

 西浦氏は、クラスター対策の具体的な方策を論文として発表している(Nishiura H et al. "Closed environments facilitate secondary transmission of coronavirus disease 2019 〈COVID-19〉)。ただし、多くの国で採用されているSARSや新型インフルの対策に準じたコロナ対策とは異なる手法であり、クラスター対策はいまだ仮説の域を出ないというのが公平な見方だろう。

 問題は、西浦氏が提案する「クラスター対策」という仮説を、専門家会議が批判的に検証できないことだ。西浦氏の専門は、個人ではなく集団を対象として病気の発生原因や流行状態、予防などを理論的に研究する「理論疫学」。そして、専門家会議のメンバーで「理論疫学者」は押谷氏と鈴木氏だが、2人とも西浦氏のクラスター対策に関する論文の共同執筆者として名を連ねている。クラスター対策を批判的に検証する立場にない。

 その他は、脇田座長(C型肝炎)、尾身副座長(ポリオ)、岡部氏(小児科学)、河岡氏(エボラウイルス)、川名氏(呼吸器内科)、館田氏(微生物学)、吉田氏(感染症制御学)と、すべて「個人の予防と治療の専門家」の臨床医。「理論疫学」は専門ではないのだ。

 そして、クラスター対策という仮説は専門家会議で承認された。安倍首相は、クラスター対策しか専門家会議から提案されなければ、それを認める以外の選択肢はない。
7p
専門家会議委員ではない西浦氏が「司令塔」のような振る舞い

 それ以降、西浦氏は専門家会議のメンバーではないにもかかわらず、政府のコロナ対策の「司令塔」のような振る舞いをするようになった。4月7日、安倍首相は東京や大阪など7都府県に緊急事態宣言を発令した。その際、首相は感染者数について「このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後には8万人を超えることになる」「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じることができる」と述べた。これは、4月3日の日本経済新聞にも出た西浦氏の試算が基となっている(日本経済新聞『「欧米に近い外出制限を」 西浦博教授が感染者試算 「人の接触を8割減らせれば感染減に」』)

 この試算は「西浦モデル」と呼ばれるようになった。そして4月10日、西浦氏に自信を与える出来事が起きた。「感染者(発症者)全員が等しく感染を広げるのではなく、クラスター化した感染が大規模感染をもたらす」というクラスター班の発見を、WHOが記者会見で称賛したのだ。

 WHOは、大スポンサーである中国に「忖度」する行動を繰り返して新型コロナ感染拡大の事態を悪化させた。また、日本がWHOへの拠出金を増額することを表明すると、途端に日本の新型コロナ対応を称賛するようになった(第236回)。そんなカネに汚いWHOに称賛されても価値はなさそうだが、それでも「西浦モデル」に「権威」を与えることになった。

 4月15日、西浦氏は記者会見を開き、まったく対策をとらない場合、国内の重篤患者が約85万人に達し、その49%(単純計算で41万人超)が死亡するという新たな試算を発表。あらためて、「接触8割減の徹底」を国民に求めた。

 そして、その翌日の4月16日、安倍首相は、緊急事態宣言を全国に拡大する方針を明らかにした。西浦氏はその記者会見にも登場した。その後も西浦氏はSNSを使って、「三密(密閉、密集、密接)の回避」という国民の意識を変える啓蒙活動を続け、テレビ出演も頻繁に行っている。しかし、繰り返すが、西浦氏は専門家会議の委員ではないのだ。
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自民党の厚労族議員が医療現場の声を官邸に上げない理由
緊急事態宣言の延長から一部解除の間にも検証なされず

 その後、5月6日に安倍首相は、期限を迎えた緊急事態宣言を5月末まで延長すると発表した。新規感染者数は全国的に減ったものの、西浦氏は「収束のスピードが期待されたほどでなく、感染拡大で医療提供体制へのさらなる負荷が生じる恐れがある」と慎重だったため、専門家会議は首相に期限延長を進言した。

 そして前述の通り、5月14日には安倍首相は緊急事態宣言について、39県で解除すると表明。解除しなかった都道府県についても、専門家の評価によって可能であれば5月31日を待つことなく解除する方針だ。

 だが、「西浦モデル」については何も検証がなされていない。西浦氏が訴えた「人の接触を8割減らす」は達成できなかったのだが、新規感染者は減った。結局、「クラスター対策」という仮説は正しかったのか。何より、「死者41万人超」という試算の詳細な根拠はいまだに提示されないままなのだ。

自民党の厚労族議員が医療現場の声を官邸に上げない理由

「西浦モデル」に対する批判は、特に現場で新型コロナの治療に当たる臨床医から多く出てきている。例えば前出の上氏は、日本の新型コロナで問題なのは「院内感染」だが、「人との接触8割減の徹底」は、院内感染には効果がないと批判している(上昌弘『医療崩壊 (36) 「医系技官」が狂わせた日本の「新型コロナ」対策(上)』)。

 ある自民党の議員と医療関係者から聞いた話を総合すると、このような現場の声は医系技官がガードを固めた専門家会議には届かないが、自民党の厚労族議員などが受け止めているのだという。それでも、その声は自民党から首相官邸に届けられることはないようだ。今、新型コロナ対策について、首相官邸と自民党の間のコミュニケーションの場がほとんどないのだ。

 現場の医師はSNSなどでさまざまなコミュニティーをつくって情報交換をし、現場の状況や要望を代表者がツテをたどって厚労族に伝えている。しかし、厚労族はほとんどそれを官邸に伝えず、抱えているのだという。

 自民党には、全国の支持者から「現金給付を」「補償を」と、支援を求める声が凄まじい勢いで届いているという。しかし、自民党はそれらをダイレクトに首相官邸に持ち込んで訴えることはせず、党までで止めている。それは、現金給付の当初案に端的に表れている。最初に岸田文雄政調会長が取りまとめた現金給付案は、自民党支持者には届かない生活保護ギリギリの層に限定した30万円の給付だったからだ(第239回)。

 自民党は、東日本大震災・福島第1原子力発電所事故が起きた際の当時の民主党政権を反面教師にしているようだ。民主党議員が支持者の声を官邸に次々と持ち込んで大混乱になったことを教訓にして、安倍首相が指導力を発揮しやすいように抑制的に行動しているのだという。特に、民主党政権時の災害・事故対応の拙さは、安倍首相が民主党政権を「悪夢」と呼ぶ理由の1つだ。つまり自民党は、安倍首相に「忖度」して、黙って我慢しているといえる。

 そのストレスが爆発したのが、5月7日の自民党の「経済成長戦略本部・新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の合同会議」だったのではないだろうか。同会議では多くの議員が殺到し、立ち見が出るほどの混雑となって「三密会議」と批判された。
9p
今度は「疫学vs経済学」の構図で迷走が続く可能性も
安倍政権のコロナ対策での迷走は森友・加計学園問題と根っこが同じ

 自民党が安倍首相に「忖度」して、医療の現場や支持者の声を受け止めながら首相には伝えない。その一方で、首相官邸・内閣府にはさまざまなツテをたどって、数々の要望が伝えられている。この連載では、「森友学園問題」「加計学園問題」などに関係して、同様の問題を論じたことがある(第176回)。

 コロナ対策も同じ構図だ。さまざまな人が官邸・内閣府にやって来ることと、「全校一斉休校」(第234回)「アベノマスク」(第237回)「9月入学(秋入学)の検討」(第241回)などが唐突に浮上し、決まっていくことと関連がないとはいえない。

 また、専門家やメディアの間で激しい論争が続く、PCR検査を拡大するか抑制するかについても、安倍首相や加藤厚労相の発言が二転三転しているようにみえる。官邸・内閣府に「拡大派」と「抑制派」が入れ代わり立ち代わり現れて、首相や厚労省を前に自説を展開して帰っていくからだという。特に首相は「八方美人」的なところがある。面と向かって相手の言うことを否定はしない首相の性格が、政府の意思決定を混乱させている面がある。

今度は「疫学vs経済学」の構図で専門性を欠いた迷走が続く可能性も

 5月12日、政府は新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づき設置されている「基本的対処方針等諮問委員会」に、小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹ら経済の専門家4人を加えることを決めた。専門家会議の上部の組織体に経済学者を加えたことで、西浦氏らの影響力が下がり、今後は疫学よりも経済が優先されるように潮目が変わるのだろう。
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 小林氏は早速、「コロナ対策で収入減少に直面した個人に毎月10万円の現金給付を行うべきだ」などと積極的に発言を始めている。ただし、「経済の停滞を避けるには、財政拡張政策を継続すると同時に、大規模な検査を実施できる能力を確立し、陽性者を隔離して陰性者の不安感を払しょくすることが不可欠である」と指摘したことは、小林氏の専門性とは無関係の発言だ。疫学と経済学の間で、今後も専門性を欠いた迷走が続く懸念がある。

 日本の新型コロナウイルスの感染者数・死者数の少なさは、「日本の奇跡」「日本の謎」と世界から呼ばれている。韓国の防疫体制のように「世界のモデル」と称賛されることはない。どうひいき目に見ても、安倍政権の意思決定が混乱していたのは明らかだ。日本のコロナ対策は、たまたまうまくいった「結果オーライ」だとみなされているのだ。

 本稿は、日本の政策決定システム、特に「有事」におけるシステムの問題点を詳述してきた。たとえコロナの感染者数、死者数が欧米より少なかったとしても、それがただの幸運ならば、これでいいのだと安心はできない。今後、エボラ出血熱のような強毒性のウイルスに襲われたとき、今のシステムではひとたまりもないだろう。政策決定システムの抜本的な見直しが必要といえる。

<参考文献>
大田弘子『経済財政諮問会議の戦い』(東洋経済新報社)
秋吉貴雄『公共政策の変容と政策科学:日米航空輸送産業における2つの規制改革』(有斐閣)
佐藤満『厚生労働省の政策過程分析』(慈英社)
「日本のサンクチュアリ546 国立感染症研究所」『選択』(2020年3月号)
「日本のサンクチュアリ548 厚労省・結核感染症課」『選択』(2020年5月号)


(引用終わり。5pからはアンダーラインでリンクがあることを示し、リンク先は乗せなかった元文から当たって。14,000文字くらいかな)
逆説の地政学_ 「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く/上久保誠人/晃洋書房2018.3 //無し



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