お気楽ナチュラリスト

都内に住んでも心はナチュラリスト。
週末は山と川で遊びたい。

東天狗岳(単独行)

2011年01月08日 | 登山
昨シーズンは、右膝靱帯断裂のため棒に振ってしまった雪山。
2009年は3月に谷川岳で敗退し、まともに登ったのは2008年1月の阿弥陀岳北稜、それ以来の冬季山行となる。

復帰第一戦は、八ヶ岳連峰東天狗岳に決めた。
決して難しい山ではないが、今の自分には相応である。また、単独行にこだわったのは、ケガから復帰した自分が厳冬期に使いモノになるのか試したかったからだ。


入山は、渋ノ湯から。
気温はマイナス9℃だが天気はいいので、最初の30分の急登で汗が噴き出る。
パートナーがいるときは、なんだかんだ話しながら登るので気も紛れるが、単独行では自分と向き合うしかない。
樹林帯の登りは短調で静か。音は雪を踏む足音だけである。立ち止まると全くの無音の世界。
フル装備のザックが肩に腰にずしっとくる。
体力の衰えを素直に感じて、「あれを置いてくればよかった。」「食料を減らせばよかった。」と後悔をしても自分に腹が立つだけである。


コースタイムより10分少々オーバーして八方台に到着。
ここでテルモスのお湯とチョコレートを口に入れる。

ここからちょっと下って、まただらだら登りが続く。
左の尾根が自分の目線にまで下がってくるころ、前方が開け黒百合平(2410m)にたどり着いた。
12:15。ここにテントを張る。
今回持ってきたテントは、「モンベル・ゴアアルパインドーム2」。
冬用の外張りは使わない。シングルウォールで寒気に耐えられるか!?(笑)

テントを張っている間に、風が強くなってみるみるガスが流れてきた。
天気予報では、明日は期待できないので今日のうちにピークを踏んでおきたい。
13:00。アイゼンを付け、東天狗岳に向けて登り始める。


発達した樹氷の間を抜けて中山峠へ。
ここから南に方向を変えて稜線を登る。
ちょっとした岩稜が出てきて、森林限界を越える。

風がどんどん強くなり、ピッケルを突き刺し耐風姿勢でしのぐ場面も出てきた。
ガスが激しく流れ、山頂部は全く見えない。
だだっ広い斜面を登った後は、稜線がやや狭くなり、山頂付近のコブを西側に巻いてから最後の岩場を登る。
14:30、東天狗岳(2645m)登頂。
ポケットからデジカメを取り出し証拠写真を…、と思ったら低温によるバッテリー消耗で撮影不可。
山頂滞在1分程度で下山を開始する。


いよいよ風が強くなり、登ってきたときのトレースはすべてかき消されていた。
視界が悪く、広い斜面のところで方向を間違えそうになる。
東側に寄りすぎると雪面を踏み抜き滑落してしまう。西側に行きすぎると、ルートを外れてしまう。
何度も立ち止まり、方向を確かめながら降りていった。
岩稜まで来れば、もう間違うことはない。
中山峠まで戻ってほっと一息。

15:20、黒百合平着。テントに転がり込む。


これから暗くなるまでが結構忙しい。
まずは張り綱を締め直す。
それからテント内の整理整頓。
そして、水作り。
 ※携帯カメラで撮影
雪を溶かして作る。
500mlは熱湯にしてテルモスへ。
さらに500mlの湯をナルゲンボトルに入れてシュラフに放り込む。つまり湯たんぽ。
そして、食事用に1000ml作る。
食料はいろいろ持ってきたのだが、疲れてしまってあまり食欲がわかない。
レトルトのモツ煮とフリーズドライの雑炊、そして甘いコーヒーを飲んでお終いにしてしまった。

雲が厚いせいか、17:00前には真っ暗になってしまい、早々にシュラフにもぐり込む。
ヘッドランプで文庫本を読む。
外は風が強く、木々から落ちてきた雪がバシバシ打ち付けてくる。
本を読むのもかったるくなり、20:00には寝てしまった。

長い夜の始まりである。
だいたい30分くらい眠ると起きてしまう。
それは背中に伝わる雪の冷たさだったり、テントを打つ風の音だったり。
自分の呼気がテントの内側で結露して凍り、それが風が吹くたびに顔に落ちてきて「つめてー」なんてことが一晩中続く。(テント内は、マイナス15℃である)

深夜2:00ごろ、トイレに行こうとテントのファスナーを開けたら、どどどーっと雪がなだれ込んできた。
確認しなかった自分がバカだったが、雪ががんがん降っていて、テントが3分の1くらい埋まっていたのだ。
あわてて、コッフェルで雪をかき出す。
これ以上積もると撤収と下山がかったるいなぁ、なんて考えつつまた眠る。


6:00。シュラフに体を突っ込んだまま、バーナーで湯を温め直しコーンスープを飲む。
チョコレートいくつか食べ、コーヒーを飲む。
7:00。ようやく明るくなり、テントの外に出てみた。
デジカメのバッテリーをポケットに入れておいたら復活したので、とりあえず朝の風景をパチリ。



一晩で20~25cm程度の新雪が積もった。
ピッケルに掛けておいたアイゼンもバリバリに凍り付いていた。

撤収作業を終えて、8:00下山開始。
新雪を踏みながら師匠の言葉を思い出した。
「山を登るということは、人としての総合力が問われる。単に岩登りがウマイだけでは駄目だ。体力、知識、判断力、行動力、幕営の技能だって必要だ。」
久しぶりの厳冬期単独山行で、師匠の言葉の重みをあらためて実感した。
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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (あな)
2011-01-09 01:12:50
こんばんは!
「冬季山行」無事に帰られ、お疲れ様でした。
もう完全復活でしょうか^^
冬季山行・・・大変興味深く拝見しました。
もう、「行ってみたい」の一言です。
しかも一人で・・・

死んじゃい鱒ね(爆)
papaさんの記事を楽しむだけにしときます(笑)
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>あなさん (papachan)
2011-01-09 10:30:16
おはようございます!
おかげさまで膝の方はトラブル無しでした。
でも、体力の衰えは実感しましたね。
ちゃんと鍛えないと駄目です。

あなさん、雪山に行かれるのなら装備をお貸ししますよ~(笑)。
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Unknown (Landlocker)
2011-01-09 21:54:18
このテントを張っておられた場所の背景を見るに、
ショートターンでツリーランを楽しめる気がしてなりません。
しかも劇パウダー!
やはり冬の八ヶ岳って素敵ですね。
コースによてはバックカントリースキーのメッカでもありますよね。

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>Landlockerさん (papachan)
2011-01-10 10:25:25
おはようございます!
北八ツは、テレマークスキーヤーもたくさん訪れます。
でも、私がいる間にはスキーヤーどころか登山者もいませんでした。
銀世界を独り占めでした。
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はじめまして。 (Karma)
2011-01-10 16:12:38
冬山登山、過酷ですね。
雪景色は素晴らしく、憧れますが
憧れだけでは登れない厳しさかと思います。

僕は、残雪期の雪遊びで我慢ですねぇ。。。
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Unknown (えむやま)
2011-01-10 18:19:12
厳冬期ヤツの単独一泊ってかっこいいですね。
ボクはLandlockerさんと同じく滑るラインが気になりました。
まともに研究したことないですが、八ヶ岳は雪が少ないので、長いラインが見当たらないんですよね。
ここならあっこなら稜線から雪がつながってるよーって場所をご存知でしたら、こっそり教えてください(笑)
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Unknown (sora)
2011-01-10 19:23:48
すごい!!
流石papachanさん!!
なかなかここまでやってる人も少ないのでは?
知らないだけでたくさんいるのでしょうか?
しかし、完全復活という感じですね~!
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Unknown (まさひ)
2011-01-10 20:32:37
こんばんは!!
記事読んでるだけで寒くなります
雪山登山、過酷ですよね
けどなんか惹かれるものがありますよ

完全復活おめでとうございます!!!


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>karmaさん (papachan)
2011-01-10 21:00:01
こんばんは~!はじめまして!
コメントありがとうございます!
残雪期の雪山も開放感があって大好きですよ。
厳冬期はそれなりの装備と経験が必要ですが、無雪期にはない山の魅力と静けさが味わえます。寒いですがね…。
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>えむやまさん (papachan)
2011-01-10 21:02:33
こんばんは!
テントの裏のちょっとした斜面になっているので、もっと雪が積もればテレマークにはちょうどいいかもしれませんね。

八ツで稜線からのスキーですか…、あんまり詳しくないのでわかりませんが、やるとしたら3月ころが雪が多くていいのかも。
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