『ちゃーさん、持ってって!』
って小鉢クンから渡されたのは
オリオンベーカリーで作ってるパン
『ながーい黒糖パン』だった
30センチ以上ある黒糖入りのフワフワなパンに
昔くさい、砂糖がザリザリしてるようなホイップクリームが挟んであるやつだ
…
常務の奥さんから小鉢クンだけが頂いたおやつ。
要らないから俺にくれたのだ。
この常務の奥さん
小鉢クンの事がよほど好きなのか
俺の事がよほど嫌いなのか
俺と小鉢クンが倉庫に2人でいるのに
小鉢クンだけにおやつを持ってくる
先日もそうだった
『ほらー熱いよぉ!火傷しないでよ!』
って言いながら、チンしたばかりのおやきを持って来て小鉢クンに渡した
別に俺はそれが食べたくて食べたくてしょうがないわけじゃ無い
でも、そのあからさまな様子に
自分の表情が変わったのが分かったし
専務の奥さんもそれを見逃さなかった
『あ、にゃびさんも食べます?待っててね』
そう言うと、おやきをチンしに行った。
…
別にさ、好かれたいとかいう気持ちはない
あんなチンチクリン。こっちから願い下げである。
しかしだ。
こうもあからさまにラブビームを目の前でやられると(ラブなのか知らんけど
それに2人いる片方だけに何かをあげるとなると
その場にいる俺はどうして良いのか分からなくなる
小鉢クンは陰で常務の奥さんの悪口をバンバン言ってる
バカだとか、うるさいとか、頭をおかしいとか
でも、本人の前ではそんな様子を見せない
さっきのあのパンだって貰った時はニコニコして
『すんません!ごちそうになります!!』って言って受け取ったハズである
そんな事、何も知らずに常務の奥さんたら。
小鉢クンが要らないというパン
そのパンには何にも罪はない
フワフワで美味しそうだったから貰って家に持って帰った
カミさんと2人で食べた
屁が出そうになる程に美味い
ノスタルジックな味わいにノックアウトである
『にゃびちゃん、また買ってきて!』
と、リクエストを頂いた
『いや、コレは貰い物で…』
『見つけたら買ってきて!』
たしかに美味かったから探しましたよ
お店3件目にしてようやく見つけました
300円と、少々お高い。
ちなみにオリオンベーカリーは岩手県のパン屋さんなので
他県では見つけるの難しいと思われます
岩手に遊びに来た際には買って食べて頂いて
俺が少し複雑な気持ちで食べた事を思い出してもらえたら幸いである
外フワフワの、中ザリザリである。
まるで俺のようである。(は?