初級者への挑戦状の
解答第2弾です。
【使用機材】
今回、初級者でも簡単に飛びもの撮影できるコツについて説明していますが、以下のような機材の使用を想定しています。
「測距点を7個以上有するデジタル一眼レフとズームレンズ」
コンパクトカメラで撮ろうとする方もいると思います。
デジタル一眼レフとコンパクトカメラで大きく違うことの一つがAF性能です。
私も当初はコンパクトカメラで飛びものを狙いましたが、毎回ほぼ全滅(笑)
その後、デジタル一眼レフを購入して動体撮影すると簡単に撮れることに驚きました。
もちろんテクニックのある人ならコンパクトカメラでも撮れるようですが私には無理。
初級者が気軽に撮れて成功率が高いのは、やはりデジタル一眼レフです。
測距点のことは後ほど説明します。
レンズは高倍率ズームレンズ(18-200mmや28-300mm)や望遠系ズームレンズ(70-300mmなど)がお勧めです。
タンチョウヅルは神出鬼没(笑)
目の前に来る時もあれば遠くへ離れることもある。
見物客が多く身動きできないケースもあるのでズームレンズが便利です。
【問題】(
問題編の再掲)
2.この女性は飛び物撮影に不適切なカメラの設定をいくつか行っています。
あなたならどんな設定を行いますか?
(シーンモードの使用も可。)
3.飛び物向きの設定が出来たとします。
「あらかじめ構図を決めておいて、ツルが入ってきた時点でシャッターを押す」という方法で、飛ぶツルにピントを合わせることは可能でしょうか。
【解答&解説】
2.女性の設定を見て気付いたのは風景など静物撮影と同じ設定で撮ろうとしていることです。
「動体撮影では静物とは異なる設定で撮る」ことを覚えましょう。
それでは初級者にとって最も成功率が高いと思われる設定を紹介します。
次の3つの設定は必須です。
◎ドライブモード:
連写(連写速度が選べるなら一番速い連写)
『解説』
1枚撮影(単写)で飛びものをうまく撮ろうとするのは至難の業です。
動体撮影では、多くの枚数を撮っても使えるのはほんのわずかなカットです。
少しでも成功率を上げるため連写で撮りましょう。
なお、連写速度(1秒間に撮れる枚数)と、連続で撮影できる枚数はカメラの機種により異なります。
さらに、連続撮影可能枚数は、記録画質や使っているメモリーカードの種類によっても異なります。
(この件については後ほど詳しく触れます。)
◎フォーカスモード(AFモード):
動いている被写体を撮るときに使うモード(キヤノンはAIサーボAF、ニコンはコンティニュアスAFサーボ)
『解説』
各AFモードの特徴を説明しましょう。
A.止まっている被写体を撮るときに使うモード(キヤノンはワンショットAF、ニコンはシングルAFサーボ):
・シャッターを半押しすると測距点(AFフレーム)の被写体にピントが固定
・AF速度は速く、止まっている被写体を撮るのには最適
・ピント合わせが終わらないとシャッターが切れない
・このモードで連写をすると、ピントは最初の1コマ目に固定
従って被写体が移動して距離が変われば2コマ目以降はピンボケとなる
B.動いている被写体を撮るときに使うモード(キヤノンはAIサーボAF、ニコンはコンティニュアスAFサーボ):
・シャッターを半押ししている間、測距点の被写体にピント合わせ続ける
・AF速度や精度はA(シングル)より落ちることがある
・ピントが合わなくても通常シャッターが切れる
・このモードで連写をすると、1コマずつ被写体にピント合わせてくれる
従って被写体が移動して距離が変わってもピントが合う
毎コマ、ピントを合わせるため、メーカーによっては連写速度が落ちる
C.AとBを自動的に切り替えるモード(キヤノンはAIフォーカスAF、ニコンはAFサーボモード自動切換え):
AとBの切り替えがうまく働かなかったり誤作動する場合があります。
動体撮影はB、静物撮影はAに設定する方が確実です。
◎フォーカスエリア(AFフレームの選択):
すべてのAFフレームから自動的に選択(キヤノンはAFフレーム自動選択、ソニーはワイド、ニコンはダイナミックAFモードまたは3D-トラッキングモード?)
『解説』
この設定にするとすべての測距点のうち被写体に重なった部分にピントを合わせてくれます。
従って被写体が中央からずれて端にあっても測距点と重なっていればピントが合います。
測距点の個数が少ないとピントが合う確率が減りますよね。
最初に「測距点を7個以上有する」を前提としたのはこのような理由からです。
周辺の測距点がヒットした例。
赤いのが測距点の位置。
説明が長すぎてわかりにくいでしょうか(笑)
要するに以上の3つの設定を行うと
ツルをファインダーに捉えた状態で
(ツルをファインダーからはずさないように追い続け、測距点がツルと重なることが条件):
・シャッターを半押しすればツルにピントを合わせてくれる
・シャッターを押しこんで連写が始まれば、ツルとの距離が変わってもピントを合わせてくれる
ことになります。
最近のデジタル一眼レフはすごいですね。
重要な設定は以上の3つですが、初級者の中にはこのような機能自体を知らない人も多いでしょう。
ましてそのような設定を自分でするのは大変かもしれません。
そんな方に最適なのがシーンモード(キヤノンはかんたん撮影ゾーン、ニコンはシーンモード、ソニーはシーンセレクション)の中の「スポーツ」モード!
実はこの「スポーツ」モードは動体撮影用のモードで上の3つの設定がセットされています。
カメラの設定が苦手という方や気軽に飛びものを撮ろうという方はこのモードで撮影しましょう。
『撮影法』
まずは構え方。
と言っても普通の一眼レフの構え方ですね(笑)
ポイントは
・左手は下からレンズのズームリングを持ち速やかにズーミング出来るようにする
・右手の人差し指は常にシャッターの上に置く
・ツルの動きに合わせて腰を軸に上体をぶらさないようにスムーズに回転させる
但し、真上を飛んだり予想と反対側を飛ぶこともあります。
イナバウアーをしたり体の向きを変えられるように準備体操をしておきましょう(笑)
もっとも撮りやすいのはツルが飛び立つカットです。
ツルが飛ぶ気配を見せたら、ファインダー内にツルを入れてシャッターを半押しします。
あまりアップにするとファインダー内に入れ続けるのが難しいので、多少引き気味(ツルを小さめ)になるようにズームリングを調節しましょう。
最初はツルが止まった状態なので容易にピントが合いますよね。
滑走を始めたらシャッターを押し込みます。
シャッターを押したまま、カメラをツルの動きに合わせて(ツルを常にファインダーの中央で捉える気持ちで)動かします。
離陸の撮影は成功率が高いのですが、問題はツルが気まぐれなので、いつどこで飛び立つかわからないこと。
撮影ポイントに立てるかどうかは運次第です(笑)
離陸時の撮影例
(EOS 40D+EF100-400mm F4.5-5.6L IS)
離陸が無理なら飛行中のツルを撮りましょう。
ここでも重要なのは飛ぶツルをファインダー内に捉えること。
ツルがファインダーに入ったらすぐシャッターを半押しします。
ピントが合った段階でシャッターを押しこみます。
後は離陸の撮影と同様ですね。
シャッターを押したまま、ファインダーからツルがはずれないように追い続けましょう。
飛行中の撮影例
(α550+DT 18-200mm F3.5-6.3)
『連続撮影可能枚数を前もって調べる』
連写で撮ると無限に撮影できるわけではありません。
カメラの内部メモリーがいっぱいになったら一時的に撮影が出来なくなります。
連続撮影可能枚数は、カメラの機種やメモリーカードの種類により異なります。
例えばキヤノンのEOS Kissシリーズを見てみましょう。
JPEG画像の連続撮影可能枚数は、N、X2、X3でそれぞれ14、53、170枚です。
一般に新しい機種になるほど枚数は多くなっています。
この枚数は高速なメモリーカードでは増え(カード容量いっぱいまで撮影できる場合もある)、逆に書き込み速度の遅いカードでは枚数が減ります。
(なお、RAW画像の場合は、どの機種も10枚未満。飛びものの撮影はJPEG画像がお勧めです。)
自分のカメラとカードを使って連続撮影可能枚数を確認しましょう。
メモリーカードを空にしてスポーツモードで撮れなくなるまで連写。
撮影できた枚数が連続撮影可能枚数になります。
100枚以上撮影可能な人は余裕ですね。
本番でも気にせずガンガン連写しましょう(笑)
可能枚数が少ない時は、撮影時の工夫が必要です。
シャッターをずっと押し続けるのではなく、何枚か連写したら半押しに戻しましょう。
また、一時的に撮影出来なくなってもカードへの記録が進んで内部メモリーに空きが出来れば撮影可能となります。
(機種によってはファインダー内に連続撮影可能枚数が表示されます。)
それまでシャッター半押しでツルを追い続け撮影可能となったら連写を再開しましょう。
『シーンモードの問題点』
シーンモードはプログラムAEの一種なので、絞りとシャッター速度の組み合わせをカメラが自動的に決めます。
しかも初心者用のモードという位置づけのため、メーカーによっては、ISO感度やホワイトバランスが自動設定のみで露出補正も出来ないケースがあります。
天候によってはシャッター速度が1/200程度になることがあり、ツルを止めて撮ることが難しくなります。
ISO感度を変更できる機種ではISO 800以上の高い値に設定すればシャッター速度が速くなりますが、自動設定のみの機種ではどうしようもありません。
天気が悪い日の撮影では、特にツルの動きに合わせてカメラをスムーズに動かすことを心がけましょう。
この点に気をつければシャッター速度が遅くなっても、背景が流れる「流し撮り」っぽくなります。
流し撮りの例
(α550+DT 18-200mm F3.5-6.3)
3.2の解答&解説を読めばこの答もわかりそうですね。
飛ぶツルを追い続けながら、岡山城が背景に来た時に撮影する、という方法なら可能です。
しかし、「あらかじめ構図を決めておいて、ツルが入ってきた時点でシャッターを押す」という方法ではツルにピントを合わせることは非常に難しいでしょう。
従って答えは「不可能(非常に難しい)」です。
なお、鉄道のように走るコースが決まっている被写体ならば、ピントを固定してシャッターチャンスを待つ「置きピン」と呼ぶ方法があります。
【終わりに】
本当は絞り優先AEやシャッター速度優先AEを使う撮影法も説明するつもりでした。
でも初級者の方にわかりやすく書こうとしたら、ここまで長くなってしまいました(笑)
それに絞り・シャッター速度・ISO感度の関係を理解していないとここから先の設定は難しすぎますよね。
「初級者への挑戦状」は一応終了とします。
ご希望があるようなら、飛びもの撮影のステップアップ編としてシーンモード以外の設定についても説明しましょう。