a green hand

未熟者の愚痴



娘のAから夫へのチョコレート。

東京でAに会うけど伝言はない?
と夫に聞くと「バレンタインだけどっていって…」の伝言。
全くと思いながら話の流れで娘に伝えると笑いながら「じゃ送るよ」とこちらもサバサバ。

娘と食事をする。
上京する前から今回はゆっくり話せたら良いなと思っていた。

私は、上京しても滅多に娘を訪ねたりしない。
どこかで遠慮していた。

何に?
ま、いろいろと。

今回は出かける前に夫とトラブルが・・・。
めんどくさい男だな~と軽く流せるような大きな心は持ち合わせていない。

未熟者同士なのだ。

初めて娘に夫の愚痴を言う。
もともと私は未熟者だし、愚痴を言ったところで私に味方してくれる人はいない。

母は私の全てを見てきた気の毒な存在である。
愚痴を言えばきっと同情してくれるか、はっきりあんたが悪いというだろう。

しかし未熟者の本心をさらけ出すほど未熟でもないのだ。


同じように、娘に愚痴を避けてきたのは、娘は父親側と肌で感じていた為と思われる。

娘も息子も夫の血を半分以上受け継いでいると思うと夫の究極の悪口は、言えば分が悪くなることを感覚で知っていたのかもしれない。

それでは何故娘に本心を?

娘も若くはない、娘としてだけではなく人として聞ける年齢に達していると判断したのだ。

「お母さんがお父さんを大事に思っていることはよくわかる。でも大事にするツボが当たっていない。お母さんもkちゃんももっと相手を見て効果的と思うツボを押さえてうまくやってほしい、そこさえ押さえていれば自由にのびのびできるのに。」とこういうような大人な発言であった。

ワインが入り、目の前の娘は利発な大人な女性になっていた。
時に急に娘になり、お母さんは無邪気すぎると。

無邪気なままで一生が終われたらどんなに幸せだろうにと思ったのは今、この瞬間の感想である。

お喋りは真夜中まで続き、最後はこの先行くことも無いだろう、外資系のホテルのバーに案内された。

高層ビルの何もかもが美しい日本の美を含んだ建築と調度品、生けられていた花は唯一季節を感じさせる東京での「春」が表現されていた。

その日は、多分蝋梅、花瓶の中で一本の木が全身を広げて咲いているような感動ものである。
4月には桜の花が生けられるという。

高層で夜の東京を眺めながら最後の贅沢なワインを飲んだ。

ホテルまで送ってもらい、買い物をした荷物は家に送ってあげると言う娘の言葉に何て気がきくんだろうと感動しながらタクシーを見送る。

夜遅くまで遊び歩いていても疲れはまだ出ていなかった。
お風呂に入り、すぐに眠りについた。

自分の家と思って目覚めた私は枕元の電話が目に入り、ここは東京だったと気づいた。
銀座の真ん中でうるさい音も聞こえず快適なホテルに満足していた。
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