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a green hand

山梨のトウモロコシ

友人の友人がトウモロコシを送ってくれた。

あの気の利く可愛い娘のようなTさんだ。
那須塩原で初めて出会ったTさんである。

ご実家が富士山の見える所で民宿をしているという。


ダンボールでひと箱、友人の友人である福島の3人宛に其々に
おくってくれたのである。

届いたそれは、トウモロコシの皮からして、福島のものとは違っていた。
薄い黄緑色の柔らかい皮に包まれたトウモロコシである。
その日、英語ランチ仲間との暑気払いがあったので横目で
それを見ながらそのまま出かけた。

帰ってきて、茹で上がったトウモロコシにかぶりついた。
美味しい!
みずみずしく甘く柔らかい。

福島の農産物を余計なことを考えずに喜んで食べる
ということをすっかり忘れてしまっている。

夜になり、ハッと思った。
このトウモロコシは我々年寄りが食べるより、将来のある子供が
食べればいい・・と。



でもお節介も嫌だし・・と考えたが身重なRさんに遠慮がちに
メールをした。

それで夜、アパートの下まで降りてくるよう言って届けに行く。
ナビは夫である。

Yちゃんがさっさと降りてきて、先日作ったという自由研究の
石鹸をもって駆け寄ってきた。

石鹸に入れたいからと安産祈願パーティーの日に庭から持ち帰った
たくさんの花々を石鹸に入れられなかったと沈んでいる。

お母さんたちが、放射能の関係があるからそれはマズイということに
なったらしい。

こんなところにも制限を感じながら生きていく福島の子どもたち
の現実がある。



花を否定されたことが全人格を否定されたような複雑な思いが
過ぎった。花の代わりに、ビーズを入れたという。
石鹸にビーズか~と可哀想になる。

アパートは南側に面して、翌日には満月を迎える月がとてもきれいに
辺りを照らしていた。

Rさんのスイカのようにパンパンなお腹に触れ、しばらく話し、
帰ろうとすると駐車場をグルグル回っていたYちゃんが急に
私をめがけギュっと抱きついてきた・・。

なんて懐かしい子なんだろう。
やっぱり前世は私の生まれたかった私の子ども?
夫と話して笑った。

家に帰り、ハート型のビーズ入り石鹸を眺めてはシミジミした。

トウモロコシをかじりながら山梨の富士山の見えるTさんの
民宿をイメージした。

Tさんのお母さんが、東京の娘に頼まれて福島まで
トウモロコシを送ってくれたのだ。

山梨のうれしいトウモロコシが、若い家族に喜んでもらえて二重の
ありがたさを感じた日である。
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