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a green hand

グリンデルワルト

朝方、遠くからカウベルならぬヤギのベルの音で目が覚める。

ホテルのホール側に土手があり、緑の草を食むヤギの首に下がるベルがなんともいえない音を奏でるのである。
夕方と朝の2回なのだろうか我々が遊んで帰ってくる頃にも音を鳴らしながら必ず草を食べている。
太った黒いヤギである。


グリンデルワルドの谷を出て、グリンデルワルドの谷へ帰る。
絵本や詩などで知ることしかなかった谷あいでの生活。
アルプスを目の前にした数日間は夢のようでありまだまだ現実味がない。

うっすらと朝もやの中にアイガーが現れ、夕日に染まるアイガーを見ながら闇を迎えるなど考えもしないことだ。

夜中、起き出し、ベランダに出ると星が全くきれい。
オリオン座がとても近くに見えた。
12月の星はどんなだろうと想像した。
もう一つ、きれいに光る星を低い位置に見つけ歓声を上げると、それは星ではなく、アイガーの中にある展望台の明かりだと教えられた。

山の中腹に星があるわけがないじゃないと自分を笑った。
でもまるで星のよう・・。

明日はあのアイガーの中に入るのかと思うと不思議な気持ちになった。

ホテルべラリーからアイガーを潜り抜ける登山鉄道に乗ったり、インターラーケンから乗り換えたりしながら山を見に出かけていく。
Aさんには一つ一つ山に名前があるのに、私には単に山とだけしか認識できていない。

それでもアイガーやユングフラウヨッホやらを方々から眺める贅沢な旅は連日の快晴がより喜びを大きくしてくれる。

黄色いポストがグリンデルワルト駅までの道のりの中ほどにあり、友やハルに葉書きを出す。
わたしにしては全く珍しいことである。

誰も頼らず、勇気を出す必要もなく英語で用を足せるようになったということかもしれない。

いや、少しばかり恥知らずになったと言うことかもしれない。
二日目に行ったユングフラウヨッホ、ヨーロッパの頂点にある展望台には日本の赤いポストがある。
世界一高いポストということになる。

でも黄色のポストの方に入れてしまった。
妹に出したポストカードが届いていないという。

黄色の方に入れたから届かないのかとても心配になっている。

そのユングフラウヨッホへ行くにはなんと3回ほど鉄道を乗り継ぐ。
であるから天気が悪いと最悪で大損する羽目になる。
天気予報をみてから切符を買うようにとガイドにも書いてある。

ラッキーなのかそうでないのか眩しいほどのお天気であり、ここで早くも両替の5万円分が危うくなる。
ホテル代の3日分をスイスフランで支払うとほぼなくなる勘定だ。

遂にATMということになるわけだ。

しかし、ユングフラウヨッホ、アレッチ氷河をまじかに見ることができたのは、今となっては凄いことだ・・。が、いま少しの実感が伴わない。

旅の終わりごろの天気予報では、快晴だったところは雪が降ったり猛吹雪だったりと気候が変化しているのだから、我々の日程はラッキーの一言に尽きる。

凄いなあきれいだなあと撮った写真を、帰って来てそれがどこなのかもわからない。
それがとてもいやな気分であり、いつも通り、行くより、帰ってきてからの方が調べものが多い私である。
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