見出し画像

a green hand

ハルの避難生活

ハルは、世の中とは逆に、最高に幸せな時間を過ごしている。
自分の大好きな母と父がそばに何日もいるのである。

地震3日後あたり、ママとパパは朝はやく買出しに行き、ダンボール一杯の
食料を求めてきた。

それまでに家にあったものと合わせると当分の間は間に合った。
断水の中、井戸水をモーターで汲みあげ、料理を作った。

メンチカツ、肉じゃが、チャーハン、カレー、シチュウーといつもにないほどの
料理を協力して作った。

ママの知り合いという人が、ガソリンを供給してくれ、食料まで持ってきてくれた。
冷蔵庫はいつもより豊かである。

不思議と夜になると団欒になる。
それは食事に集まることと、その後だと感じた。

ママが、ハルは算数の文章問題が苦手なんだよなあという。
例えばと聞くと、例をあげた。

わかった、鉛筆がありました。とあったらそれは三菱鉛筆かトンボ鉛筆かと頭に
浮かぶ文化系の頭か?と思われた。

文章を読むとその先やその奥に気がとられるのだろう。
それを言うとハルが笑っている。

ママが問題を出した。
次にパパが問題を出し始めた。
その問題がとてもおもしろいので書いてみることにする。

ママの問題

ハル君はアメを32個もっていました。
マーばあちゃんから14個もらいました。
ハル君のアメは何個になりましたか。


パパの問題

ハル君とまーばあちゃんはクッキーをつくりました。
ハル君は小鳥のクッキーを5個作りました。
マーばあちゃんは小鳥のクッキーを6個と丸いクッキーを10個作りました。
途中、ハル君は丸いクッキーを1個食べてしまいました。
ハル君とマーばあちゃんは小鳥のクッキーを何個作りましたか。

数字がたくさん出て来て混乱している風である。
パパが、数字ばかり見てるからわかんないんだよ、きちんと読んでみなと助言。


もう一つの問題。

ハル君は、バナナを25本もっていました。
マーばあちゃんに2本あげようと思いマーばあちゃんの家に歩いて行きました。
途中サルに会いました。サルに1本見せてマーばあちゃんの家につきました。

マーばあちゃんに2本あげました。
ハル君は何本バナナをもっていますか。


こんなことをして1時間ほど遊ぶ、どこが苦手なんだろうと思えるほど楽しそうに
問題を解いている。
常にこんな雰囲気で育ったなら、子どもは賢くなるんだろうなと思う。

二人で子どものために真剣に文章問題を作る姿がとても素晴らしいと感じた緊急時の
ひとときであった。

さらに、連日ニュース報道ばかりだと子どもは退屈する。
本を読む時間が増えたり、モノを作って遊ぶ時間が増えたり、いつもと違う環境は
自ずと子どもの環境をかえていく。

その環境は、少なくとも悪い環境ではないことに疑問を投じる。
大人の環境もそうである。
何かを失うと必ず何かいいものが生まれる。

日本の国がある意味、豊かさゆえに失ってきたものが再び復活してきつつあると
感じるのだ。

それは一番に家族だった気がしてならない。
帰るべきところ、拠り所があまりに不安定な気がしてならないのだ。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Weblog」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事