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ふと、2日前に訪ねたAのことが気になり目が覚めた。
二日前の水曜日、「ジューンベリーの花がきれいに咲いたから来て~」と快活なAのお誘い。
英語でも勉強しようと思っていた矢先だったが午後に行くことに決め、少しだけ英語の予習をして午前を過ごした。
ジューンベリーはAの家にある実のなる木。
6月のイチゴの木?「朝早くね、私と小鳥とで競争なの・・でも小鳥には負けるのよねえ・・美味しい時期がわかっているの不思議ねぇ」と聞いた事がある。
Aは林のような庭つくりに凝っていた。
数年前から仲良しの庭師が味方についているのがとってもうらやましい。
広い敷地には、人工的な池があったり、散歩道があったり、一人で眺めるにはもったいないほどの広い庭である。
それに公園にあるようなブランコまでついている。
午後に訪ねると、喜んでまっすぐ庭に案内してくれた。
退職後まだ間もないのに、そうとう動き回った形跡があちこちに見て取れた。
きれいに雑草は除かれているし、自慢したくなるこの瞬間の庭である。
退職翌日、何かのついでに急遽我が家に現れたことがあった。
髪をひっつめにし、思い切って買ったというバーバリーのコート以外は、くたびれていた。
ペイズリー模様の素敵なスカート、髪は短めにカットされ、軽くウェーブがかっていた。
とてもAの雰囲気が出ている。
何よりも退職できたのがうれしい、フリーなのが幸せという気持ちがガンガン伝わってきた。
それに少し太ったかなと思うほどだったのに半月ですっかり身も心も変革を遂げていた。
「この間ね、ご飯を食べないでずっと庭に出続けていたら気分悪くなって・・」と夢中な様子が手に取るようにわかる。
リビングに入ると美味しそうなケーキと果物がテーブルの上に並んでいた。
ウェルカムフラワーは白とクリームのヒヤシンス、アップルミント、そして白いチューリップが低く口の小さい白のオブジェ風のベイスに素敵に納められていた。
朝、電話をくれたときから私のために準備してくれたのだ。
全部Aの庭のものであるのがまたうれしい。
ピアノの上やソファには、成人式の時の帯を利用したという手作りのクッションやテーブルランナーが見事にできあがっていて黒のソファにマッチしていた。
縫うことが決して得意ではないはずのAの心意気が滴るように現れていた。
10年前に味わった私と同じAの幸せが伝わってくる。
風の音、小鳥の声、周りのすべてが至福の源であった。
しばらくすると、Aは台所から何かを混ぜ合わせながらボールを持ってきた。
それをイチゴにかけた。なんだろうか・・。
Aはとてもユニークで先進的な女性であり、時々とんでもないアイディアを振りまくことがある。
そういうことを何度か経験している私はふと嫌な予感がした。
あたらないことを願いつつ、美味しいコーヒーとお喋りに満開の花を咲かせていた。
すると、Aが急に、「ウワぁー、これおいしくない!」と叫びだした。
「アスパラにマヨネーズと生クリームを混ぜたものが美味しいというからイチゴにかけてみたんだけど・・これ、ダメ!食べない方がいいわぁ~」と仰天している。
「マヨネーズをイチゴに?」グェと思ったが、口にしてみた。
本当にまずいものだったが、せっかくなので食べた。
このイチゴとってもいいものだったのにといいながらAも食べているからだ。
ジューンベリーの白い花が見事に咲きそろい、しなやかに風に揺れている庭を眺めながら、楽しいお喋りが延々と続く午後であった。
ご主人がいつものようにどこからともなく現れ、いつものように優しく「いらっしゃい」と迎えてくださり、「ごゆっくり」と丁寧に挨拶してくれて、必ず出かけられる。
そんなことを思い出しながら、私も出来るかもしれない、テーブルランナー・・とたんに目が覚めたのである。
それで今日、晴耕雨読と思っていたがまたもや英語はやめにして、母が踊りに使い今では不要になった薄紫色の1本の帯からテーブルランナー2本とテレビの下に敷くクロスを作った。
母との共同作業の結果、なかなかの出来である。
Aの家に行って良かった。
今度私が「クレマチスが咲きそうだから来て~」と急に誘ってみようと思っている。
いつものように、車で迷いながら、1時間ぐらいかけて元気に来てくれること間違いなし。
そう思えることがうれしい。
大学時代は話すこともなかったが、幼児教育の同士であり、人生の節目節目に真摯に向き合い、話し合ってきた私のとても嬉しい友である。
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