ハンモックから片足を出し、自分で揺らしながらの読書である。
読み始めに唸ったところ・・
公園に続く階段を降りて行くと、色づいた草木の間を通り抜けた風が頬を撫で、後方へと流れていった。という表現にしばらく読書停止状態になる。
そしていよいよ終わりという時に私はおかしな感情に突き上げられた・・。
残り3ページは、どうしてこんなに涙が出るんだろうと不思議なほどである。
ストーリーは熱海から始まり10年の歳月がすぎて同じ場所の熱海で終わる。
146ページ「これが人間やで」の神谷の言葉が重く入ってきた。
熱海での花火の描写である。
ある火花のような花火を観て、其の裏にある心を感じた群衆が万雷の拍手と歓声を
送るシーン。
花火のスポンサーはこれから結婚しようとする男性である。
「ちえちゃん、いつもありがとう。結婚しよう」のアナウンスからのメッセージが流れた。
そして上がった花火は・・・地味な火花のような花火。
個人と企業力との差と作者は表現する。
しかし、群衆は二人を祝福するために、恥をかかせまいとする力を結集して、拍手を送り続けるのだ。
ここの数行が一冊分の言いたかったことが凝縮されて火花となって入り込んでくるのを感じた。
群衆の心の束の美しさが神谷が求める漫才師への道と一致した瞬間にも私には思えた。
「これが人間やで」
この言葉が「人間悪くないな~」という人間賛歌のように聞こえてきた。
これが映画化されたらこの場面はきっとこの映画を観て良かった、人間って美しいと清々しい思いになるに違いない。
清々しい気持ちこそが日本人の美しい「情緒」であると思うからだ。
ピースというお笑い芸人は知らなかったが、こんな風に漫才師を追求している人の漫才を見てみたいものだと思った。
叔母がピースの又吉がすきだからと妹が「火花」を買い、読んだ。
妹がいち早く芥川賞にノミネートされた本を読んだと聞き、それを借りて読んだ。
色々な繋がりを経て今回芥川賞受賞作品を読む機会に恵まれたことに感謝したい。
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