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今から期待でワクワクしている人も多いことでしょう。
半月ほど前、正式に「ニンテンドー3DS」の詳細が発表され、ラインナップや実際に会場で触った人の話などで、盛り上がりました。
まだ発売日や価格は不明で、正式なデザインか否か?もまだ不透明な状態ですが、そんな中で一応、私が思うことを2、3まとめてみたいと思います。
●「ニンテンドー3DS」をどう売っていくか?
3DSといえば、その名にもある通り3D画像がウリです。正確には「立体視映像」ですね。
当然ながら、各メーカーがこれを活用してくることになるでしょう。他にも、センサーが搭載されていたり、外カメラで立体写真が撮れるなどがありますが…ここだけをウリにして売れるゲームを作るのは、なかなか厳しいところでしょう。どうしてもファーストインパクトって、見た目が重要になってしまいますからね。
ただ、問題なのは、見た目を重視するあまりに立体視映像をただ「迫力」だけで推し切ろうとするメーカーが多数出てこないか?が、ちょっと心配です。最近、ちょっとした「3Dブーム」なので、なおのことです。
立体視映像を「迫力ある」だけでアピールしていては、瞬間的な注目度や成果には繋がるかもしれませんが、持続的なものには繋がらないでしょう。今はすごいすごい!と言っていても、発売して1~2年も経てば珍しくなくなるわけです。そうなると、立体視映像の「直接的なアピール」というのは、効果が薄くなっていくわけです。綺麗になっていった映像に、我々がすぐに慣れてしまったように。
そこで重要なのが、立体視映像による「感覚的なアピール」です。
正式発表以来、私も何度となく言ってますが、任天堂はこの立体視映像によって「3D空間が把握できるようになってプレイが簡単になった」と言っています。私は、それこそがゲームとしてアピールしていくべき点ではないかと思うわけです。
わざわざ今になって、ニンテンドウ64の『時のオカリナ』のリメイクをしようと思ったのは、任天堂にとっての3Dゲームの出発点であるニンテンドウ64の時代。その時代から抱え続けてきた「3Dになったゲームがなぜ難しくなったのか?」という答えとして、3DS版のリメイク作品をもってきたのだと思っています。
これは個人的な妄想ですが、手前側にいるリンクを操作して、奥側にいる敵に対して、剣による攻撃が当てやすくなったりするあたりで、それを実感できるような気がしています。
ただ、その真意を何も知らないユーザーに感じてもらうことは、正直なところ容易なことではないとは思っています。まず、テレビCMなどの広告媒体では、どうアピールしても立体視映像の魅力は伝わりません。体験会なり店頭なりで体験してもらわないと、その魅力は伝わらないでしょう。
しかし、もしプレイしてもらえて、立体視映像の本当の魅力を感じさせることができたならば…いわゆる「ゲームが3Dになって難しくなったり複雑になったから遊ばなくなった人」を、呼び起こせるチャンスになるわけです。私は、ゲーム業界を長い目で見たときに、そういったアピールをしていったほうが結果的には、業界のためになるように思うわけです。
もちろん、全てのゲームがそれを目指せとは言いません。大迫力のゲームがあってもいいと思いますし、2Dのゲームで立体視映像を表現するのも、それはそれで1つの新しい魅力ではあります。しかし、大筋では「3D空間が把握できるようになってプレイが簡単になった」ことを、アピールしていくべきだとは思うわけです。
ちなみに。個人的に1つ、補足させてください。
「3D空間が把握できるようになってプレイが簡単になった」と言うと、プレイが簡単になる=難易度が下がっちゃうのか?と、悪いように受け止める人もいるかもしれません。
しかしここで勘違いしないで欲しいのは、ここで言う「簡単になった」というのは、「ゲーム自体が簡単になる」ということではなく「納得のいくプレイができるから簡単に感じる」ということです。
皆さんが、ある1つのゲームをプレイしていて、それを簡単に感じたり難しいと感じる時ってどんな時ですか?それは、ゲームを先に進めようと思った時に「自分の考えが追いつかなくなった時」だったり「本当の進み方をまだ見つけていない時」だったり。あるいは逆に「単純に感じる時」だったり「あっさりした感じがする時」だったり。
色々と理由はあると思いますが、結果的には、考える領域がわずかでも「納得のいかない領域」に差し掛かってくることで、難しい(簡単だ)と感じることがほとんどだと思います。それはもちろん、プレイを重ねて腕前が上がったりコツや弱点が分かるなどで「納得のいかない領域」が改善されていくものもありますし、そうでないものもあります。
しかし、3DSで「プレイが簡単になった」と言っているのは、まさにその逆です。
これまで、マリオなどのアクションゲームで、手前から奥への移動やジャンプが難しかった。「見えにくい」とか「距離感が分からない」とか、どこか「納得のいかない領域」があったから難しかった。しかし、それが「距離感が分かるようになった」から、「納得のいかない領域」が改善されて簡単になった。ということです。
ここでいう「簡単」というのは、普段ゲームをやり慣れている人ほど感じにくく、やり慣れていない人こそ感じやすいと、私は思っています。
●シンプルなゲームほど、3DSは引き立つ?
1つ上で、立体視映像を「迫力ある」だけでアピールするのはあまり良くない、なんてことを言いましたが、そう言った理由はもう1つあります。
これは、会社でE3に行ってきたかたが開いた報告会で聞いた話なんですが、立体視映像として綺麗に見えたと言っていたのは『マリオカート』『どうぶつの森』などで、特に『どうぶつの森』については「私自身、このシリーズはほとんど興味なかったが、そんな私でも今すぐ欲しいと思えるほどだった」と、かなり絶賛していました。
逆に、立体視映像として見るとそんなに綺麗でもないと言っていたのは、意外にも『新・光神話 パルテナの鏡』でした。一応ちゃんと立体には見えるらしいんですが、色使いがけっこう複雑なこととアクションによってカメラがかなり激しく動いたりすることで、ちょっとぼやけて見えるみたいで、「あれだけ推していたわりには…」と言ってました。
もう1ついい例としては、『バイオハザード: レボリューションズ』が綺麗に見えたと言ってました。公開されたデモをご覧になったことがある人は分かると思いますが、あれは基本、暗いです。暗く見せることで色使いを抑え、結果的に綺麗に見えるわけです。普通の3Dでも使われる手法ですが、立体視映像についてもどうやら同じことが言えるみたいです。
ここで思ったのは、シンプルなグラフィックのゲームのほうが、立体視映像は活きてくるのではないか?ということです。
もちろん、私はまだ実際に見ていないので何とも言えないですし、「シンプル」と「複雑」の境界線がどこなのか?と言われると難しいところですが、実際に触れた人の話を伺って、そう感じました。
もちろん、今後技術が発展していくことで、それが改善されていく可能性はあるので、ここではあくまで「可能性」というレベルで捉えていただければ幸いです。
●業界人として「ニンテンドー3DS」に期待していること
当然なんですが、やっぱり売れて欲しいですよね(笑)
E3でも、あらゆるサードパーティがすでに動き始めているのを見ていただいても分かると思いますが、やっぱり勢いがありますからね。3DSにはこう、ドカン!と花開いて欲しいものです。
しかしその裏で、こっそりと期待したいことがもう1つ。それが、コピー対策です。
正直なところ、今のゲーム業界ってかなりヤバいです。
PS3が世界的に見てまだまだなのは明白ですし、逆にXbox360は海外でのみ活性化しているので、日本のメーカーとしてはやりづらいところ。じゃあWiiが安全圏か?というと、Wiiだってゲームソフトが売れていない現状はそんなに変わりません。
だったら携帯ゲーム機があるじゃん!と思うでしょうが、正直なところDSとPSPにもあまり期待していないのが、正直なところだったりします。理由はただ1つ。コピー天国だからです。
日本では表から見れば、DSもPSPも何となく勢いがありそうに見えたりするものですが、海外ではもう惨憺(さんたん)たる有様らしいです。もちろん、日本だって例外ではありませんしね。コピーを何とかしていかないといけないとは誰しもが思うものの、ほとんどのメーカーが今それどころではないですし、ここまで広がってしまっては正直諦めがついてしまうのもまた、事実だったりします。
ちなみに私は、ある機会で、とある有名なタイトルの違法ダウンロード数を知りました。もちろん機密事項なので言えませんが、正直、笑えません。
そういう意味では、3DSってある種、日本のゲームメーカーにとっては「ノアの方舟」のような存在かもしれません。乗れない人は溺れるだけか、あるいは別の業界の舟に乗るか…そんなところです。ちなみに、ここでいう「別の業界の舟」というのは、携帯アプリなども含まれています。
●まとめ
実際に触るまでやっぱり確信はもてませんし、いちユーザーとしては正直ワクワクしているわけです。
しかし一方でいちクリエーターとしては、3DSに「期待せざるを得ない」という部分があるのは、ちょいと哀しい気もします。PS3並のガッチリしたセキュリティ・コピー対策が3DSに入りさえすれば、また傾向は変わってくる、と思いたいものです。
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