チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「メンデルスゾーン交響曲第3番スコットランド終楽章コーダ/サヴァリッシュの死にあたって(壱)」

2013年02月27日 17時07分21秒 | 説くクラ音ばサラサーデまで(クラ音全般

メンデルスゾーン スコットランド交響曲


第85回アカデミー賞の作品賞は、俳優あがりのベン・アフレックが監督した
"Argo(アルゴ)"になったらしい。しかも、
念の入ったことに、ホワイトハウスから民主党大統領夫人ミシェル女史が
受賞作を読みあげる、という趣向まで凝らした。
柔道の古賀稔彦とベン・アフレックの顔が
ようやっと区別できるようになってきたものの、
AffleckとAflac(アフラック。癌保険、死の商人)との
スペルの違いを書き分けれない拙脳なる私には、
なぜ民主党支持者の古株
スピルバーグが撮った「リンカーン」を押しのけてその座席に
アフレックを据えたのか、説ける由もない。
ガチガチのオバマ支持者であるジョージ・クルーニーがこの映画の
プロデューサーのひとりであることが要因かもしれない。
映画人として当然ながら、がしかし通常以上に
アフレックも"敬虔な"民主党支持者ではある。が、
結局は米国は民主党だろうが共和党だろうが、
ロックフェラーが支配してるのだから、その都度、
都合のいいのに政権を担わせれば、あるいは、
都合のいいような人材を配置させればいいのである。
味などわからない日本のある種の層が
「旨い」「おいしい」と喜んで飲んでるチェイン店の
安い豆のコーヒーが売れようが、通ぶったのが
挽いて淹れて悦に浸ってる高価な豆が売れようが、
全部、穀物・食肉も含む食糧メジャー、ひいては全産業の
胴元であるロックフェラーが儲かるシステムなのである。
私はそれに異を唱えてるわけではない。
世の中、強いもの・頭のいいものが勝つものだから。
そんな中で、私のような虫けらには虫けらなりに
生きさせていただければそれでいいのである。

それはさておき、
映画のタイトルはアルゴといっても、
朝鮮人の誤解および歴史捏造による
竹島占領問題を扱ったものではない。1979年、
民主党カーター政権下のイランで起こった
"Canadian Caper(カナディアン・ケイパー)"
という史実に基づいた作品である。Canadian Caperは
「カナダの策謀」と呼ばれてるが、策謀はないだろう。caperは、
「やぎさんゆうびんが45年ぶりに届けたMLB三冠王の便り/ミゲル・カブレラ」
(http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/b0affda081c59801c695d517e3da8425)
でも触れたように、もとは、
ヤギ(capra)の角がクルクル曲がる
「不規則性」「不如意」から派生した語である。
「ドタバタ劇」とでも拙訳しておくことにする。で、
この作戦を古代ギリシャの神話における
Golden Fleece(ゴウルドゥン・フリース=金色の羊皮)獲得作戦の
「Argo船」に喩えたものなのである。
カーター政権の副国務長官という当事者のひとりで、
クリントン政権では国務長官だったウォーレン・クリストファーが
死ぬと同時に、この映画の製作が始まった。

クリントン政権下(1993年乃至2000年)から
911を経てブッシュ・ジュニア第1期まで、アメリカ合衆国の
二代目首都だった地を本拠にしてる
フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を務めた
Wolfgang Sawallisch(ヴォルフガング・サヴァリッシュ、1923-2013)が、
オーストリアのいわゆるザルツブルクの西約50kmにある
南ドイツいわゆるバイエルン州Grassau(グラッサウ)の自宅で
去る2月22日に亡くなったらしい。
実演(N響も含めて)にはあまり接したことがないが、
ピアノ演奏も巧い指揮者の代表という認識だった。
カヤランとかMETとか、"クラ音メジャー"の言うなりにならなかったので、
その活動範囲は地味なものになったという。
オペラ指揮者時代のヴァーグナーやリヒャルト・シュトラウス、
ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、そして、
メンデルスゾーン(とくにオラトリオ「エリヤ」)
などが主たるレパートリーだったようである。
その演奏自体は私にはなじまないものだが、
40年ほど前にNHKで放送してたN響アワーで
メンデルスゾーンの「交響曲第3番(スコットランド)」を
サヴァリッシュが指揮したのを観て、始めてこの曲を知った。
当時の音楽評論・解説者大木正興が、
「ロマンチックなとてもいい曲なんですが、最近では
演奏に取り上げられることが減ってしまって残念です」
と言ってた。が、わりとすぐに森正の指揮でも
演奏されてた。それはともあれ、この交響曲の
全音のポケット・スコアを夏休みじゅう持ち歩いてたほど、
私のfavのひとつとなった。

が、
レコードを買い漁ったが、
クレンペラーやコンヴィチュニーほどのドアホウ極まりない演奏とまではいかずとも、
サヴァリッシュも含めて、私の気に入る演奏は皆無だった。
それはともかくも、悲しみ・寂寥から一転して勇壮に始まる
この交響曲の終楽章のコーダは、
メンデルスゾーンが書いた作品の中でもっとも感動的な音楽である。
[アッレーグロ・マエストーゾ・アッサイ(速く、きわめて雄大に)、付点四分音符=104、
6/8拍子、3♯(イ長調)]
♪ソーー・<ラーラ│<ドーー・ーー、>ソ│<ドー<レ・<ミ<ファ<ソ│>ミーー・>レー●│
<ソーー・ソ>ファ>ミ│>レーー・ーー、レ│レーレ・レ<ミ<ファ│ファーー・>ミーー│
<ソーー・ソ>ファ>ミ│>レーー・ーー、レ│<シーー・>ラーー│>ソーー・ーーー♪
ここを指揮者といわれるたいていの者が遅く奏させる。が、
メンテルスゾーンはここを、喩えは悪いが、軍歌や応援歌のように、
拳を振りながら仲間が団結して力強く歌う
凱旋歌のようなものを想定してた。だからこその
"maestoso assai"という指示なのである。メンデルスゾーンは
それでもボンクラな演奏者に自作を汚されないか心配で、
メロディ・ラインを託した各楽器には
「マルカート・アッサイ・ラ・メロディア=旋律をきわめてはっきりと」
という指示までしてるのである。それを、
ノロノロと軟弱に演奏させたり、別の愚にもつかない代物にすげ替えるという
テイノウきわまりないのがやはり世の中にはいるのである。ばかりか、
そんなまやかしものをありがたがるのがまたいるのである。
メンデルスゾーンが意図したものが解らないようでは、
メンデルスゾーンを聴いたり愛でたりして何の意味があるのだ。そんな奴らに
メンデルスゾーンは無理なのである。

コーダの初め12小節、
作曲者自身が4手用pfに編曲したものにすこしだけ手を入れたものを
TwitSoundにアップしてあります。
(http://twitsound.jp/musics/tsJwA2vj6)
それから、
この箇所を「テンポを落とし」て"バグパイプふう"にアレンジしたものも
アップしてあります。
(http://twitsound.jp/musics/tsV9e7GyB)

サヴァリッシュの演奏はけっして好きではないが、
ともかくもメンデルスゾーンのこの大傑作
「スコットランド交響曲」を知るきっかけとなったことは
確かである。
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