こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。
かつて、「アマミノクロウサギ裁判」という有名な裁判がありました。
1995年2月、鹿児島地方裁判所で始まった裁判です。原告は人間ではなく、アマミノクロウサギのほかオオトラツグミや アマミヤマシギなど、奄美大島に棲息する希少動物でした。ゴルフ場の開発許可を出した鹿児島県を被告として、その開発許可取り消しを求めて、動物が裁判を起こしたものです。
残念なことですが、日本の法律では、訴訟の当事者となることができるのは人間(法人も含む)に限られており、動物が訴訟を起こすことは認められていません。日本の法律では、動物は「物」(自動車などと同じ「動産」)と規定されているため、「物」が訴訟を起こすことはできないためです。
「アマミノクロウサギ裁判」で動物が原告となった背景には、次のような事情がありました。
奄美大島では、1990年代から観光開発のために、次々とゴルフ場が建設されていて、それに伴う森林の減少や希少動植物の絶滅が危惧されていました。島が開発される一方で、島の環境を守るために自然保護団体が自然保護活動を続けていました。
このような状況下で、ある企業が、アマミノクロウサギが棲息する森林にゴルフ場を建設することを決めます。そして、鹿児島県に森林開発の許可を求め、許可が下りてしまいます。
ゴルフ場建設を中止に追い込むには、県に開発許可を取り消してもらうしかありません。しかし、ゴルフ場建設に反対している自然保護団体の人たちは、ゴルフ場建設予定地であるアマミノクロウサギの棲息地に住んでいるわけではありません。
ゴルフ場の建設予定地から離れた場所に住んでいる人たちのため、森林が伐採されてゴルフ場が建設されても「法律上の利益」を有していなかったのです。
自然保護団体の人たちが、ゴルフ場建設予定地であるアマミノクロウサギの棲息地に居住していたのであれば、ゴルフ場建設により自分たちの住環境が破壊されるなどの理由で「法律上の利益」を有することになり、自分たちが原告となって裁判を起こすこともできますが、それができないわけです。
そこで苦肉の策として考え出したのが、ゴルフ場建設により直接の被害を受けるアマミノクロウサギたち、建設予定地に棲息する奄美大島固有の希少動物を原告として、裁判を起こすことでした。
動物が原告となる訴訟は、日本ではこのアマミノクロウサギ訴訟が初めてのものとなりました。動物が原告となったこの事件は全国のマスコミにより報道され、世間の注目を集めることになりました。
裁判では、アマミノクロウサギたちが原告となった訴えは却下されたものの、マスコミの影響力のおかげもあり、ゴルフ場建設は結局中止されています。
人間の利益(エゴ)のためには動物たちの棲息環境を破壊してもよい、などという道理が通るわけがありませんので、良い結末に終わったと言えます。
それにしても、動物を「物」扱いする日本の法律には納得いかないものがありますね。動物を原告とする訴訟が認められて然るべきだと思います。法改正すべき点のひとつでしょうね。ちなみに、動物先進国であるドイツの民法では、「動物は物ではない」と規定されています。
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