春本番。
いつもの川沿いの桜並木が、今年も見事に咲き誇った。
しかし、今日は少し様子が違う。空は晴れているのに、風がやけに強い。枝を揺らすその音が、まるで自然の鼓動のように耳に届く。





強風に煽られながらも、桜の花びらは枝にしがみつくように咲いていた。
そして、その一部は容赦ない風にさらわれ、空へ、街へ、そして川の流れへと舞っていく。
舞い上がった花びらが一斉に空を漂う様子は、まるで春の雪のようだ。
桜吹雪という言葉がこれほど似合う瞬間はないだろう。



立ち止まり、風を受けながら、しばしその光景に見入った。
強風は確かに花を散らしてしまう存在だけれど、その中にもまた、儚さの美しさがある。
「満開」という時間が永遠ではないからこそ、心に深く残るのだと、改めて思う。
風に逆らうように咲く桜。
風に身を任せて舞う花びら。
どちらも春の姿であり、生き様のようにも見える。
今日はスマホのカメラもポケットにしまったまま、ただ目と心に焼き付けてきた。
写真では伝えきれない、風と音と香り、そして感情。
そんな春の一日だった。



