植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

ゼラニウム他・花弁の紫外線吸収と反射

2024年11月23日 | 植物の生態

花はなぜ美しいのでしょうか。それは花粉を運ぶポリネーターの視覚があったからこそです。植物は子孫を残すため、ポリネーターに美しく飾ってアピールするように進化してきました。その代表であるハナバチなど昆虫は、ヒトが認識できない紫外線も見ることができるといいます。そして植物側もその波長域を利用してアピールしていることが知られるようになりました。今回は紫外透過・可視吸収フィルターU-360)を利用してゼラニウム、菜の花「オータムポエム」、ガイラルディアの花を観察したので報告したいと思います。


まずはゼラニウム(フウロソウ科テンジクアオイ属)です。普通に可視光で撮った写真が・・

テンジクアオイ属は花弁が5枚あり、そのうち上方にある2枚において模様や脈の深さなどが他の花弁と異なっています。写真の品種でも上方の2枚は付け根で色調が薄くなり、脈の溝がやや深くなっていました。別種によっては上の2枚に濃い色をした蜜標があるものもあります。

写真の花を紫外線透過可視光吸収フィルターを通してみると・・

 

この写真での撮影条件は(ISO1600 F2.2 1/8sec)でした。このように晴天時でも紫外線写真では大きく露出をかける必要があります。さらに紫外線では可視光の屈折率と異なるため可視光の時とは異なるピント調節が必要です。紫外線写真の場合、可視光で合わせた後にピントを近距離側にシフトします。カメラの性能や撮影条件によっては液晶の映像が暗くてピント調節は当てずっぽうになることもあります。

上の写真の場合補正しないと赤被りがひどく見にくいので画像処理ソフトで適当に修正したのが次の写真・・

花弁は基本的に紫外線を反射する性質がありますが、上方の2枚の花弁では付け根付近に紫外線を吸収している部位がありました。写真では赤褐色に写っている部分です。

撮影時に光線の方向や露出を変えてみると・・

 

同じ花でもかなり違って見えることがあります。紫外線領域での撮影では光線の方向や露出の程度など条件を色々変える必要がありそうです。

過去、別品種のゼラニウムで同様に観察した写真も載せておきます・・

可視光では5枚の花弁に違いなどは無いように見えましたが、紫外線領域では上2枚の花弁にはっきりとした模様がありました。

次にオータムポエム(アブラナ科アブラナ属)の花の観察・・

オータムポエムは、とう立ちした茎がアスパラガスのような風味があるのでアスパラ菜という名で流通しています。8月に播種すれば春を待たずに秋から咲き始めます。花の様子は他のアブラナ科の植物と同じです。今年は夏から秋の気温が高かった影響なのかは分かりませんが、これまでになく葉が大きくなりました。

花の観察・・

これを紫外線透過可視光吸収フィルターを通して見てみると・・

色補正はしてあります。4枚の花弁の基部に紫外線吸収帯がありました。可視光ではその吸収模様は判別できないことから、まさに人知れずハチに知らせているということのようです。

次に、キク科テンニンギク属のガイラルディアの花を観察します・・

この品種はグランフレイム・イエローです。可視光では、舌状花の花弁基部がオレンジ色に濃い色になっており、蜜標の役割をしているようにも見えます。紫外線領域ではどういう模様でしょうか・・

舌状花の花弁基部について、可視光で観察されたのと同様な模様は見られませんでした。花の中心である筒状花部分が濃く写っており紫外線反射が少ないことを示します。


【まとめ】

  1. ゼラニウムとオータムポエムでは、花弁の一部に紫外線吸収帯がありました。細胞中にある紫外線吸収物質が関与していそうです。
  2. ガイラルディアについては、紫外線吸収物質の有無については断言できません。筒状花部分で紫外線レベルが低いのは、吸収物質によるものか、乱反射させる複雑な構造によるものかがはっきりしないためです。
  3. 共通の特徴として、花弁で紫外線を反射させることで花の存在をアピールし、その中で虫に訪れてほしい部位では紫外線の反射を抑えています。紫外線吸収帯は蜜標と言ってよさそうです。
  4. ゆえに紫外線透過可視光吸収フィルターを用いれば、紫外線領域の蜜標も観察することができます。

【今後の予定】

  1. 以前行った実験と観察で、花弁の紫外線吸収は、表皮細胞に貯えられた紫外線吸収物質によって行われており、その物質は植物によって異なるがフラボン類に属するだろうことまで分かっています。
  2. 追試的な観察でアップデートはしておきたいと思います。
  3. キッチンラボでは物質的な研究を進めるのは困難でしょうね。
  4. いろいろな花で紫外線領域での蜜標を観察しておきたいと思います。
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ビオラ:咲き進むと花色変化する品種

2024年11月22日 | 園芸

今回はビオラの色変わり品種の紹介です。花色が徐々に変化していく様子がたいへんおもしろいので、以前から店頭で見つければ入手してきました。また、一品種だけでも花色のバリエーションが楽しめるから、わたしみたいなケチな人に最適です。

一つ目:気まぐれロージー・・

咲き始めが白です。その後、中心の模様(ブロッチ)はそのままで、全体が赤紫色に変化していきます。(注:写真の花は変化前後ではなく別の花です)

二つ目:オセロブルー・・

ブロッチがケムンパス?的。唇弁の模様が黒く大き目です。咲き始めが白で、その後花弁全体が紫色に変化していきます。

3つ目:パンプキン・・

咲き始めが黄色〜オレンジで、その後に紫色に変化していきます。この写真は、変化途中のもの。今1輪しか咲いていなかったので変化前後の写真はありません。たくさん咲いてきたら変化の写真を紹介しますね。


そして、これ以外の色変わり品種として育てているのが、「乙女心」です。これは、トーホク交配から販売されているタネで、「気まぐれロージー」「天使の誘惑」「ひとつぶの涙」の三種が混合されています。ビオラのタネとしては、タネ数が比較的多く入っていたので2021年購入のものを今年も蒔きました。有効期限は2022年3月に切れていましたが今年2024年も無事発芽しました。

このうち、わたしのおすすめ品種は「天使の誘惑」です。色の変化前後が、淡黄色〜淡紫色で補色の関係の色違いが同居している様子は素敵。それと「気まぐれロージー」の赤紫色も良い色合いです。

ネットで調べたところ、これら以外に

  1. 「ラベンダーマジック」 クリーム色 → 淡いラベンダー色
  2. 「パラダイスネオン」 上弁がクリーム色 → ピンク系 幅がある色の変化
  3. 「黄金伝説」 ゴールド → テラコッタカラー
  4. 「ネオンミクスチャー」 ?
  5. 「キティールーレット」 気温変化などの環境によりよっても淡黄色〜淡紫色の変化があるそうです。

これ以外にもあるかもしれません。


まとめ

  • ビオラには色変わり品種があります。
  1. 気まぐれロージー: 白 →  赤紫色
  2. オセロブルー:   白 → 紫
  3. パンプキン:    黄〜オレンジ色 → 紫 
  4. ひとつぶの涙:   白 → 青紫色
  5. 天使の誘惑:    淡黄色 → 淡紫色
  6. ラベンダーマジック:クリーム色 → 淡いラベンダー色
  7. キティールーレット:環境により淡黄色〜淡青色
  8. 黄金伝説・他
  • 咲き始めは白〜薄い色で、咲き進むにつれて濃い色に発色していきます。開花後に発色に関わる遺伝子が働き始めるからなのだと推測できます。
  • ビオラは元々温度の影響を受けて花色が変わることが知られています。気温が低くなると赤系の色味が強くなるとのこと(PWのホームページ情報)。
  • 一品種でも色変わりが楽しめるのでケチな人に・・ではなくて物価高の時代に最適なビオラです。

今後の予定:

  1. 色の変化について、時間を追ってもう少し細かく観察していみたいと思います。おそらく来春。
  2. タネから育てている「乙女心」の「天使の誘惑」と「ひとつぶの涙」についても記録して報告したいと思います。
  3. 可能ならそれら品種のタネを採取して来年以降、育ててみたいと思います。
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しいたけ栽培セット

2024年11月21日 | 家庭菜園

市販の栽培セットでしいたけを育てて収穫しました。収穫してすぐにいただくと風味は格別、バター炒めにすると とっても美味しいのですよ。物価高傾向で1キット1000円を超えてしまいましたが、たいへんおすすめの商品です。

わたしは寒くなってくる時期にほぼ毎年栽培しています。今年はDCMブランドの栽培セットを利用しました。それには品種の記載があり、F312(菌王1号)だそうです。過去には「もりのしいたけ農園」でも栽培したことがあります。どちらも菌床ブロックで似たような栽培方法です。簡単に説明すると・・

  1. 菌床ブロックを軽く水洗いします。
  2. ブロックに傘が開いたきのこがあれば除去します。指先ほどの大きさの芽であれば除去せず栽培を続けます。
  3. バケツにブロックを入れ約10時間(8〜15時間(注1)水没させます。ブロックは水に浮くので上から重しをします。
  4. 専用容器(注2)に入れ、毎日夕方に霧吹きで濡らします(注3)。
  5. 数日〜2週間ほどで芽が出始めます。
  6. 傘が開いてひだが見えるようになったら収穫します(注4)。

注1:厳寒期になるほど長い時間浸水が必要です。「もりのしいたけ農園」では1回目の水没は行いません

注2:「もりのしいたけ農園」には栽培容器付きのものが売られています。透明なプラスチックでできた苗ドームのようなかぶせ物をする容器です。

注3:栽培適温は、昼(15〜25度・湿度低め) 夜(5〜15度・湿度高め)で夜は必ず20度以下にします。

注4:傘を全開にしてし収穫が遅れると胞子が飛んで次のきのこの発生が悪くなります。傘の裏側の膜が切れたら食べごろです。

11月11日から栽培始めて19日と20日に収穫しました。合計21本でした。実は、開封時に「きのこが発生している場合、芽は残して傘が開いているきのこは取り除く」と書いてあったのに、小さなものも全て除去してしまったのでした。そういうのが5〜6本あったかな。過去には「もりのしいたけ農園」で、小さいものも含めて82本収穫したこともあります。その時は一度に食べきれなかったので冷凍しました。わたしの経験では、平均50本弱。同じメーカーからのキットを使用しても、たくさん収穫できる年とそうでない年があります。何の違いでそうなるのかはよくわかりません。菌床ブロックの新鮮さなのか、開始時の気温なのか?浸水手順には問題ないとは思うのですが。


収穫後、休養と浸水をさせれば2回目〜4回目も収穫できます。その手順は・・

  1. ブロックを2〜3週間ほど休ませます。その間、専用容器の中で表面が乾かないように毎日霧吹きで保湿します。
  2. 1回目と同様に浸水させます。
  3. 1回目と同様に毎日霧吹きで保湿します。
  4. 1回目と同様に収穫します(注5)

注5:2回目〜4回目は、回を追うごとに収穫量が減ります。過去の収穫量は、2回目は多くても十数本、3回目は数本、4回目は1本くらい

3回目〜は労力の割には収穫量が少ないのでお好みで。

使用後の菌床は腐葉土と一緒に発酵させて堆肥として利用できます。廃棄は地域の廃棄方法に従って。おそらく可燃ゴミでいいと思います。


結論:しいたけは自家栽培がおいしい。


今後の予定:今回1回目の収穫が終わり、引き続き2回目の栽培に向けて休養期間中です。

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「ロマネスコ」とフラクタル

2024年11月20日 | 家庭菜園

みなさん、ロマネスコという野菜はご存知でしょうか?たいへんおもしろい形の花蕾をもったカリフラワーです。以前、苗から育ててみた印象は、菜園の占有面積にしては収穫できる花蕾が小さいなといったもの。さらにカリフラワーなので一株に一つしか収穫できないからブロッコリーに比べてコスパは良くないなぁと感じました。面白い形なので一度は栽培してみるのもいいかもしれません。苗だけでなくタネも売っています。今回、画像に使用したロマネスコは先日スーパーで手に入れたものです。

一つの花蕾は大きくみれば一つの円錐の形状をしています。さらに幾つもの円錐状パーツがくっついて一つの花蕾を形作っています。円錐表面にある粒々も円錐であり、それが渦巻き模様を作り目が回りそう。よく見ると、渦巻きは右回りと左回りのものがあります。そして各渦の本数は、以前に「すご〜い背の高いひまわり」で解説した通りにフィボナッチ数列と関係しています。

拡大してみると・・

美しい模様です。一つ一つの円錐表面に並ぶ粒々は、それも自体も円錐状をしており、その表面にも粒々があることがわかります。さらに拡大すると・・

さらに拡大して顕微鏡・・

小さな粒々にもさらに小さな粒々があり、これを含めると円錐状の繰り返しが6回でした。最後の一番小さな粒々の表面にはそれ以上の渦巻きは観察できませんでした。

これの花を咲かせてみるのも面白いかもしれませんね。花穂の出方ってどうなるんでしょう。渦巻き状にたくさんの花が咲くのでしょうか?


数学用語であるフラクタル(fractal)とは・・

フラクタルはマンデルブロ(B.B.Mandelbrot)によって作り出された語で、次の二つの性質を持つ形状のことです。

  1. 形状に自己相似性がある
  2. 形状を特徴づける長さを持たない

ここで「特徴づける長さ」とは、例えば球の半径や物体の長さのように、図形の特徴あるいは性質を決める長さをいいます。 フラクタルでは、いくら拡大や縮小をしても同じ相似図形が現れるので、 一つの長さでその図形を特徴づけることができません。 完全なフラクタルとは言えませんが、それに近い形状は雲の形、稜線や海岸線、植物の枝や葉の様子など自然界に実に多く見ることができます。一見複雑に見える植物の形でも基本となるルールは限られ、それが繰り返されているだけで、後は風などの物理的な力が加わったり、虫に食べられたり、光を受ける方向が偏ったりと外的要因によって形状に影響し複雑化していると考えることができます。

今回のロマネスコの渦巻きや円錐がマトリョーシカのように繰り返す様子も「フラクタル的である」と言っていいでしょう。

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長野県の平地でも紅葉が見頃に

2024年11月19日 | 日記

久しぶりに川中島古戦場史跡公園で散歩しました。11月14日は暖かで気持ちの良い散歩日和でした。

以前、公園内の台座に佐久間象山像がありましたが、現在プレートに「信濃国 川中島古戦場」と書かれた台座には誰もいませんでした。2017年7月から公園名が「八幡原史跡公園」から「川中島古戦場史跡公園」に変更になって佐久間象山像は松代小学校に移されたようです。また、以前あった紅葉の木も見当たらず。年月立てば少しずつ変わっていくのですね。


長野市立博物館前の池ではガマの穂が見られます。

まるで串に刺したソーセージ。この穂をつまんでみると綿毛がブゥアって爆発して面白いのですよ。綿毛がもこもこと湧き出してくる感じになります。大人気ないのでわたしはやりませんでしたけれども・・

写真のように、綿毛がモコモコと自然に「爆発」している穂もありました。なぜそうなるかというと、ソーセージの形状のときは、綿毛がついた小さなタネがぎっしり詰まって支え合っている状態なのです。風や鳥がとまった刺激で、一箇所でも綿毛が飛び出すと、タガが外れたように次から次へと綿毛が湧き出すといったしくみです。

・・と書いているうちに、やっぱりモコモコやっておけばよかった。。

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