植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

ナス・「あのみのり」という品種

2024年09月19日 | 家庭菜園

お皿に乗せたピカピカのナスを透明水彩で描いてみました。表面についている白い点は水滴のつもり。

以前、チャノホコリダニの被害があって8月12日に農薬のモベントフロアブルを散布しました。即効性はない農薬でしたが効果はありました。

 

上の写真のように、茎の下の方はダニ被害で真っ白ですが、農薬散布後に成長してきた茎は紫色を取り戻していました。収穫物も綺麗なものが取れて、やれやれ・・と言っていたものの・・。

最近、またダニ被害がひどくなってきて上の写真のように花より上に伸びてきた茎は白くなっていました。場所によっては収穫した実が既にダニ被害を受けています。トホホ。まだまだ収穫は続けられそうなのであと1回くらいは農薬を散布しておこうかな。明日にでもアファームを撒いておきたいと思います。アザミウマについてはあれ以来被害はありません。

花についてはご覧のように雌しべがピンと伸びて元気!肥料は十分のようです。

肥料不足になるとナスの雌しべが雄しべより短くなることがあります。ミソハギの回で説明した異花柱花(長花柱花や短花柱花)は遺伝的に決まっているのですが、ナスの場合はそれとは違って栄養状態による形態の変化なのですね。


次に「あのみのり」という品種について。

この品種は、単為結果性があるイタリア産のナス「Talina」を先祖に持ち、その性質が維持されています。「Talina」はどんなナスかというと、本体は明るい赤紫色でヘタが緑色です。形も細長く日本で見られる一般的なのとはだいぶ違いますね。Googleで「MELANZANA TALINA F1 Hybrid」をキーワードに画像検索してみてください。外見は日本人に合うようにしつつ単為結果性はしっかり残すという・・品種改良の技術ってすごい!!。この性質により、低温時で花粉が元気ない時も結実するし、他品種と比べてもトータルの収穫量は多くなります。露地栽培なら訪花昆虫によりタネはつきますが、ハウス栽培するとタネがなくて身が綺麗なナスができちゃうらしいです。さらに、脇芽の伸びが遅いという性質もあるので切り戻しを頻繁にしなくていいからズボラな私にうってつけ。今年は一度も切り戻さないというチャレンジをしています。それでも枝数が多くて収拾がつかないということはありませんでした。ただ、株の身長が高くなり過ぎているかな。なので一度くらいは切っておいた方がいいかなとは思いました。

この品種は、全国チェーンのホームセンターでは売っていないかも。私は近くにある種苗会社の園芸専門店で接木苗を購入しています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

きゅうりの巻きひげが巻く理由とは?

2024年09月18日 | 植物の生態

今回は、きゅうりの巻きひげについてです。タイトル用の写真を準備しようとしたところ、全然撮っていないのに気づきまして。既に家庭菜園から撤収した後だったので仕方がないので水彩画を描いてみました。支柱が1本しかないのもヘンなのですがこれは想像上の絵、背景の里山も想像で描きました。

今年はつるおろし栽培をした関係で巻きひげは邪魔な存在でした。なので気づいたら切除することを繰り返していてほとんど観察はできませんでした。そうした中、撤収前に巻きひげを顕微鏡で観察することにしたのです。

巻きひげはバネ状になっていて弾力を出すことで風雨からの力を受け流しています。バネがそうであるようにその断面は円形と思い込んでいましたが、そうではありませんでした。

このように かまぼこ形をしていました。平らな面が外側で山形の方が内側となっていました。巻いていない巻きひげはどうなのか、と気になるところですが撤収済みでそのサンプルもありません。来年栽培した時に調べたいと思います。また機会があればインゲンやエンドウなど他の種の巻きひげでも調べてみたいと思います。

次にその断面を顕微鏡で見てみると・・

これはサフラニンO染色をしたもの。リグニンが沈着して固くなった部位や木部などが赤く染色されています。このように木部はつるの内側に寄っていること、そして、内側の表皮やそれと道管の間の層が赤く染まったことでそこにリグニンが沈着していることが推察できました。リグニンは、特に樹木の強度を保つ成分として知られているように硬い物質、そのためそれが沈着する側では細胞の伸長が抑えられます。その一方、巻きひげの外側ではそれがないので伸びやすくなり、その差により沈着側を内側に巻いて丈夫になっていくという仕組みです。

巻きひげは葉が変形したもので葉に表裏があるように巻きひげにも表裏があるそうです。きゅうりの場合はどうなのでしょうか。色々な部位で観察してみないとわからないかも。それからきゅうりの巻きひげと言えば途中で巻く方向が変わる反旋点の存在。それらの観察や巻き始めるきっかけの接触屈性についても来年の課題にしたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街路樹にサルノコシカケ

2024年09月17日 | 植物の生態

9月12日に日野市のイチョウ並木で枝折れ事故があり亡くなられた方がいらっしゃいました。それを聞いて、木が腐っていたのかと思ったのですが、そうではなかったようです。イチョウは隔年結果の性質により多量に稔らせる年があり、今年の実つきは多く その重みで折れたということ。2022年8月にも鹿児島でイチョウの枝が折れて校長先生が下敷きになってしまいました。この時も折れた枝に腐朽はなかったらしく、実の重さが原因だったようです。めすのイチョウの木は8月〜秋には気をつけなければいけませんね。実を収穫するために剪定を控えがちですが、特に街路樹の場合はこざっぱり剪定しておかなければいけないのかもしれません。


さて、私が住む地域でも街路樹に関して気づいたことがありました。散歩途中で大きなサルノコシカケが出ている木を見つけました。

 

サルノコシカケは木材腐朽菌に属し、半円形の傘を柄を介さずに直接幹から発生させるきのこの仲間です。リグニンを効率的に分解できるので森における分解者としては重要なポジションにあります。ただし、生きている木にも発生することがあり木の寿命を短くしてしまうので注意しなければなりません。写真の場所では、他の街路樹は元気で枝葉も青々としているのですが、この木は勢いが弱く、高いところに枯れ枝も見えました。なのでさらに腐食が進むと枝折れに注意する必要がありそうです。台風被害に遭いやすい地方自治体ではサルノコシカケを街路樹に見つけたら知らせるように案内しているところもあります。

森林総研チャンネル【森林講座 長生ききのこ「サルノコシカケ」の秘密】の説明聞いていたら色々知らないことがわかりました。材木では 心材の方を赤身といって抗菌物質などを蓄積し保護層が作られているので耐久性が高くなるのですが、生きている木の場合はその逆で、辺材の方が防御反応をとれるので心材よりも丈夫になるそうです。なので、この写真の木でも辺材が弱くなったところにサルノコシカケが感染し、心材にある程度蔓延したところで木の表面に傘を発生させたものと考えられます。幹周りの様子は他の木と大差ないように見えますが、内部はかなり傷んでいるのかもしれません。

それから動画での説明では、地球の歴史上で腐朽菌が出現したことによって木がすぐ腐ってしまうので石炭ができなくなってしまったとのこと。すなわち腐朽菌の出現は石炭期の末期であると2012年のサイエンスで報告されたそうです。さらに、半円形の傘が幹から直接出ている形をしていれば、全てサルノコシカケの仲間だと思いこみがちです。しかし、遺伝子解析の結果は そうでは無かったということでした。写真のコフキサルノコシカケ(?)は同じ形をしたレンガタケとは別のグループで、柄付きのきのこを生やすケガワタケと同じ仲間だったということでした。


写真ではサルノコシカケの上に黄色のものがベッタリ付着しています。こちらは、おそらくは地衣類のロウソクゴケでしょうか。地衣類とは、葉緑体を持つ藻類と持たない菌類が共生関係を構築している植物体のこと。菌類は藻類に居住環境と水分や養分を提供し、その代わりに藻類が光合成で作り出した栄養を受け取っています。この共生関係により他の植物が生きられないような樹皮上でも見ることができます。生活の場を広げるときも両者が一緒に含まれる小さな粒になって行動するそうです。そんな生活様式なので、樹木にはほとんど悪影響はないと考えられます。


過去、森の中で撮った写真にもっとすごいサルノコシカケがあったので載せておきますね。

生きている木に出るサルノコシカケは菌糸が維管束に沿って蔓延することも多く、この写真のように縦に連なることがあります。


「サルノコシカケに腰掛ける猿」の写真を撮った方がいらっしゃるのですね。野生の猿が相手では狙って撮れるものでもないけれど・・いい写真でした。#お前よくぞそんなもん撮ってきたな・とツッコミもしたくなります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アサガオの茎が日焼けしている?

2024年09月13日 | 植物の生態

9月も中旬だというのに毎日暑い日が続きますね。今日、黒いジーンズを履いて庭で草取りをしていたのですよ。そしたら直射日光で膝のあたりがすごく熱くなって・・。これ、火傷するんじゃないの?と冗談を言っていたら、本当に火傷してしまいました。そんなことってある?今日の太陽、赤外線マシマシですか?

そんなこんなでアサガオも太陽の日差しで苦労しているようです。今回はそのレポートです。

 

アサガオの茎がフェンスに絡まり過ぎだったので取り除いていたら・・

白矢印の先の茎の色に注目! まるで海水浴後の水着の跡のようになっていました。実は緑色のところは葉が重なって日陰になっていたのですよ。まさに茎が日焼けしたのかな、と思える状況でした。

絡まったつる(茎)を解いてみると・・

予想通りに外側になって太陽が当たっていた面が赤褐色に、そうでない面は緑色のままでした。

半面が日焼けした茎の断面を顕微鏡で観察してみると・・

写真の上側が太陽に向いている側です。色がついているのは表皮の1列の細胞だけでした。

色素はアントシアニンだろうと推測して酸性・アルカリ性テストしました。まずはクエン酸で酸性にすると・・

くすんだ赤褐色が鮮やかな赤色になりました。色素が一部溶け出したため赤色が広がっています。

次にアルカリ性。掃除用のセスキ炭酸ソーダを利用しました。いずれも濃度は適当。

クエン酸で赤色になったところが青緑色に変色しました。以上のことから茎を赤褐色にしていたのはアントシアニンであると考えて良さそうです。

この特徴はアサガオだけに限りません。写真では示しませんが、クレマチスの茎でも同様の特徴がみられました。

それではなぜ太陽光の当たる面がアントシアニンで着色されるのでしょうか。アントシアニンは植物にとっていくつかの役割があります。ここでは位置的に太陽光と深く関連しているので、過剰な紫外線による障害を防ぐためのフィルターの役割と考えて良さそうです。人はメラニン色素を作ることで紫外線から防御していますが、それと同じ意味ということでしょう。

ちなみに生垣のレッドロビンが赤色しているのも同じ意味らしいです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

驚異の発根力!・アゲラタムとエンサイ

2024年09月12日 | 植物の生態

今回は 春〜晩秋の花壇で大活躍のアゲラタムと、夏場の貴重な葉物野菜のエンサイについてです。エンサイの別名に空芯菜、ヨウサイ、アサガオナがあり中国野菜として炒め物を中心に利用されています。

まずはアゲラタム(キク科カッコウアザミ属)から。

アゲラタムは紫色の細い花弁がたくさん集まって咲くのでふわっとした感じになります。黄花のメランポジュームと補色の関係で花壇でも相性がとても良いです。両者とも開花期間が長いです。霜が降りる晩秋まで元気に咲き続けてくれる優秀な植物たちです。午後に撮影したため、一緒に写っているマツバボタンの花が閉じていたのは残念。

切り戻したアゲラタムの茎を8月29日に水に差しておいたら・・・

それから6日で発根を確認、この写真は9日目です。撮影時点で茎の1本だけ根が出ていませんでしたがその後発無事に発根、100%の成功率です。これを土に植えればしっかりとした株になりますよ。実際問題、作った株を活用するのであれば今からでは遅すぎです。私は毎年春に購入した際、たくさんの挿し穂を作って子株を育てています。成長も早いので種から育てるより効率的です。

実は同時にメランポジュームも水に挿しておいたのですが、こちらは切り口から腐りました。同じキク科でも植物によって全然性質が違います。何が発根力を高めているのか興味ある所です。


次に家庭菜園で育てているエンサイです。こちらの発根力にも目を見張るものがあります。

まずは枝ぶりから

こんな感じ。葉の出方は上の葉と下の葉を角度をつけて展開することで太陽の光を効率的に浴びられるようになっています。

空芯菜という名の通りに茎の中は空洞です。これにより調理の面ではシャキシャキ感を保ちながら味付けがしっかりできるというメリットがあります。植物視点では、茎と中空が円形なので材料を節約しながらも丈夫にできるというメリットがあります。タンポポや竹など成長の早い植物がこの戦略をとっています。

具体的にどのように中空になっているのかを調べてみました。それが下の2枚の写真です・・

 

まずは下の方の茎から。下の方では中の空洞が大きくなっています。葉柄も中空になっていました。葉脈になった所で空洞は無くなりました(写真のブーメラン形の破片)。そして竹と同様に枝が出る部分(節)では中空にはならずに中に「仕切り」がありました。その仕切りは、エンサイでは弾力のある白い膜のようでした。この構造は茎の折れにくさにも貢献しています。

茎の先のどこまで中空なのか関心あったのでさらに上を切ってみると・・

写真のように、展開前の葉がつく節の下側で中が詰まっていました。このように先端ギリギリのところまで中空にして節約しているのですね。成長が早いのも頷けます。油断していると、あっという間に隣の畝に遊びに出ちゃう困り者でもあります。

次に発根能力の凄さについて。下の3枚の写真は茎を水につけて24時間後、48時間後、72時間後に撮影したものです。

驚くことに、切って24時間でこんなにも根が伸びていました。水につけてあった節、全部からの発根です。根の長さを測ったところ、約11mm(一番上の節)でした。

48時間後でさらに伸びました。前回測った根は長さが31mmになっていました。

 

72時間で長さが57mmになっていました。そして側根が出始めていました。アゲラタムが1週間弱で発根するのもすごいけれど、エンサイの発根力は桁違いですよね。驚きました。

最後に根がどこから出ているのかは押さえておきました。

根は節から出ていました。具体的には葉柄の付け根の両側からです。

それではこれから空芯菜のガーリックソテーでいただきたいと思います。鰹節を乗せたおひたしもかなりイケますよ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする