植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

黒い花の紫外線吸収と反射について

2025年04月11日 | 植物の生態

今回は黒い花を咲かせる園芸品種で調べますね。前回同様に紫外線透過可視光吸収フィルターを用いて写真を撮りました。

ビオラ ヌーヴェルヴァーグ パピヨンノワール

サトウ園芸の品種で黒色の花を咲かせるビオラです。花弁全体で紫外線反射は少ないようです。その中でも花弁の脈部分は紫外線を強く吸収していたので、可視光ではわからなかった花弁の模様が浮き出ていました。

次に比較対象として、色変わり品種のビオラ・天使の誘惑では・・

咲き始めの白色花と、開花後時間経過した紫花でも紫外線反射に大きな違いはありませんでした。青色花の紫外線パターンがやや暗く見えるのは日光の当たり方の違いによるものです。花の中央近くにあるネクターガイドと似たパターンで紫外線が強く吸収されていました。しかし、ネクターガイドの模様とは完全に一致はしていませんでした。

次に、村岡オーガニックで作出されたパンジーのジョリーアンジュについて・・

こちらは水色の上弁2枚が紫外線を強く反射し、側弁と唇弁の黄色部分で紫外線を吸収する傾向でした。側弁と唇弁にある青色の模様部分は反射していました。


次に黒色のペチュニアのソフィスティカ ブラックベリーについて

全体的に紫外線の反射は弱いようです。花の形状で日光が当たらない部分では当然紫外線の反射も弱くなります。

次に比較のために、代表してラテリーナ ラベンダーアイス(たぶん)・・

こちらは花弁の外周で紫外線の反射が多めで中央に向かって反射が弱くなる傾向がありました。別品種のペチュニアでも程度の差はあれ同じ傾向が見られました。

ちなみに、なぜかわかりませんが、メーカーのホームページにあるラベンダーアイスの写真に比べて花が白っぽくて模様が少ないですね。何年にもわたって挿木更新しているからかなぁ。さらに情報を付け加えるとこの花は良い香りします。ただし1日の時間によって香りの強さが変わる印象です。実際のところはどうなのでしょう。

【まとめ】

  1. 花弁の紫外線反射と吸収パターンは、ハナバチなどの紫外線を認識できるポリネーターに対して植物側がアピールするためのものです
  2. 今回用いた黒い花のビオラとペチュニアではどちらも紫外線の反射は弱い傾向でした
  3. 紫外線を認識できない人間が選択淘汰しているため、自然界ではありえない反射パターンの花が作られていると考えられます
  4. ジョリーアンジュの紫外線反射パターンは、偶然に起きたものであり虫にアピールしているわけではないと考えられます
  5. 可視光で認識できるネクターガイドと紫外線吸収パターンは類似であっても完全に一致ではありませんでした
  6. 故に、ネクターガイドの色素とは別の物質が紫外線吸収を担っていると推測されます

【今後は・・】

  1. 花弁が黒くなる理由の調査
  2. 黒い花にも虫は来るのか?
  3. その他の園芸品種の紫外線反射パターンを調査
  4. ペチュニアなど香りを出す花と時間の関係について
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花の紫外線吸収と反射・雑草編

2025年04月10日 | 植物の生態

以前、「ゼラニウム他・花弁の紫外線吸収と反射」の回で、紫外線透過可視光吸収フィルターを用いて色々な花を調べました。今回は、それの雑草編です。

まずは、カタバミ(カタバミ科カタバミ属)

左が通常の可視光写真で右が紫外線透過可視光吸収フィルターを用いて撮った写真です。カタバミは、花弁外側が紫外線反射、中心部分が紫外線吸収を示しました。また花弁にあるネクターガイド(蜜標)の筋と類似のパターンで紫外線を吸収していました。

オオイヌノフグリ(オオバコ科クワガタソウ属)

これも花弁外側が紫外線反射、中心で紫外線吸収を示しました。ネクターガイドと見られる花弁の筋は、部分的に紫外線を吸収しているように見えました。

タンポポ(キク科タンポポ属)

キク科の頭花は舌状花と筒状花で構成されることが多く、外側の舌状花で紫外線を反射し、中央側にある筒状花は紫外線を吸収する傾向にあります。タンポポの場合は舌状花のみで筒状花はありません。それでも他のキク科と同様に、外側の花弁は紫外線を反射し、雄しべ雌しべが出ている中央側では紫外線を吸収していました。

庭で野生化していた白花のスミレ。花の中央が緑がかっており、その部分は紫外線を吸収していました。

このスミレ 入手した覚えないのですが・・。白色が綺麗なスミレ。でも雑草並に繁殖力の強い多年草なのでかなり抜いて処分しています。

グーグルレンズで検索したら、アメリカスミレサイシン ’スノープリンセス’という園芸種でした。何かの花苗を買った時にタネが紛れて来たのかもしれませんね。

【まとめ】

  1. 自家受粉をするカタバミやオオイヌノフグリでも、花の外側で紫外線を反射し花の中央部で吸収するパターンを示しました
  2. このパターンによりポリネーターに蜜のありかを示し訪花をアピールしているとみられます
  3. 紫外線透過可視光吸収フィルターを用いれば、紫外線領域の蜜標も観察することができます
  4. 可視光で認識できる蜜標と類似のパターンで紫外線吸収が見られましたが、完全には一致はしていませんでした
  5. ゆえに、可視光の蜜標を担っている色素と紫外線吸収に関わる色素は別物であると考えられました
  6. 舌状花だけからなるタンポポでも、舌状花と筒状花を持つ他のキク科植物と同様に、花の外側では紫外線を反射し中央側で吸収していました
  7. ビオラ・ソロリア(アメリカスミレサイシン)’スノープリンセス’は外来の園芸品種で繁殖力が強い多年草です

【今後】

  1. 園芸種、野菜の花などで同様に調査

 

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マーガレット・スラッシュピンクのその後

2025年04月09日 | 園芸

3月29日、「マーガレットの色変わり品種」を記事にしました。その時は、「マーガレットの色変わり品種(おそらく「スラッシュピンク」)は筒状花が全て咲ききると舌状花の花弁が白からピンク色に変わるようです」と報告しました。というのも手に入れた時、筒状花が開き切っている花は舌状科の花弁がピンク色で、そうでない花は白色であり、十数輪咲いていた花全てで例外が無かったためそう思いました。しかし、その後の観察で そうでもないことがわかりました。

4月4日、中心部の筒状花も咲き始めて、この日完全開花しました。

それから5日経った本日はどうなっているかというと・・

完全開花から5日経ったというのに、舌状花の花弁は全然ピンク色になっていませんでした。

一方・・

未開の筒状花があったとしても、ピンク色になっている花はかなりの数みられました。

さらに・・

何なら蕾でも濃いピンク色になっている花もあったので、筒状花の開花状況と舌状花の花弁の色は全く関係ないことがわかりました。購入した時に例外が無かったのは たまたまだったようです。

何が原因で白色とピンク色の違いが生まれるのか、咲いている位置や枝の違いなど色々と観察したものの法則は見つからず全然分かりません。

さらに、花にやってきたハナアブを観察したところ、白色とピンク色を区別せずに訪花していました。筒状花が咲き切って花粉がほとんど残っていない花では無駄足を踏んでいました。このことから花の色を変えることで開花状況を虫にお知らせしている?、という仮説も違ったようです。

【まとめ】

  1. マーガレット・スラッシュピンクは白色とピンク色の花が生じます
  2. 開花後、時間経過と共にピンク色が濃くなるという傾向はあったものの、つぼみの時点でピンク色の花もあり完全な法則とは言えませんでした
  3. 筒状花が全て開花すると舌状下の花弁の色が白色からピンク色に変化するのでは?という仮説は誤りでした。
  4. 訪花したハナアブを観察したところ、白色とピンク色の花を区別していないように見え、花の色を変えることで虫にメッセージを送っているのでは?という仮説も違っていたようでした
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キャベツとハボタンの抽苔を食べてみた話

2025年04月08日 | 家庭菜園

3月30日の記事「収穫後のキャベツを放置していたら・・」で、結球しないキャベツは とう立ち(抽苔ちゅうだい)で伸びてくる茎の収穫に切り替える予定とお伝えしました。

キャベツも春になると、とう立ちを食べる菜花のように茎が伸びてきます。

そしてそして・・

このように、ボール型の鉢で栽培していたハボタンも同じようにとう立ちしてきたのでキャベツと食べ比べをしてみることにしました。

ハボタンなので彩りが豊富です。さすがに葉が枯れ始めているのは食べられそうにはありません。


キャベツとハボタンの歴史を簡単にまとめますね。原産は地中海から西ヨーロッパの沿岸地域。両品種とも、結球しないタイプのキャベツ、またはケールが祖先ということらしいです。江戸時代に日本に持ち込まれた当初キャベツは食品として日本人に馴染みがなかったことから園芸用に品種改良されハボタンが作出されたということでした。だからキャベツとハボタンは非常に近い仲間なんですね。

ネットサーチしてみると、ユーチューバーがネタとして「ハボタンはまず〜い」とやっていて、食感が悪い、茹でるとまずい、野菜炒め、天ぷらやアヒージョなどの油による調理ならいける、のような話でした。多くの人がチャレンジしているのは、園芸的に見頃なハボタンを使用しているということ。キャベツでも、結球していない葉は硬くてまずいですよね。わざわざ美味しくない部分を食べようとすることに何の意味があるのでしょうか。野菜高騰・キャベツ高騰の昨今、私はマジで食べられないかの調査しました。

結球しないキャベツでも、とう立ち部分をかき菜や菜花のように食べるのは有りだと思うので、ハボタンもとう立ち部分を「収穫」しました・・

右がキャベツで左がハボタンです。代表で一つずつ撮りました。色違いのハボタンを収穫しましたが、白色だけは見た目に不味そうなので避けました。

ちまたでは、ハボタンは茹でると固くてまずい、と言われています。そこで今回の調理法は あえて茹でて比較しました。

約2分間塩茹でし、その後冷水に漬けました。

そして味付けせずに比較。食レポは苦手・・なので詳しくは書きません。ゴメン。

【結果】

  1. ハボタンを茹でてもアクは出ませんでした
  2. ハボタンの抽苔はキャベツと同等の風味と食感で口に残るということもありませんでした(個人の感想です)
  3. ハボタンの色や柄の違いで風味に違いは感じられませんでした
  4. 茹でる時間は2分より短くしても良さそうでした
  5. キャベツ、ハボタンともに、抽苔専用の「かき菜」には劣るものの、味付けすれば普通に食べられると思いました

【まとめ】

  1. 他の人の食レポによると、園芸的に見頃な期間のハボタンを食べるのであれば、油を用いた調理が良さそうです
  2. 抽苔部分ならハボタンでも茹でて食べることが可能です
  3. 故にハボタンは、抽苔部分をキャベツと同等の野菜として食すことができます
  4. 園芸用の苗は食べる前提で仕立てられていないので、野菜に登録されている農薬以外の薬品が使われている可能性があります
  5. なので、食べる前提であればタネから栽培したものの方が良さそうです
  6. キャベツと同等な食味なので あえてハボタンを求めて食べる必要はないものの、とう立ちで捨てるのであれば料理に使っても良いかもしれません
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ホトケノザとヒメオドリコソウの花

2025年04月07日 | 野草・山野草

今日は春の雑草、ホトケノザとヒメオドリコソウの花について。

ホトケノザ(シソ科オドリコソウ属)

ヒメオドリコソウ(シソ科オドリコソウ属)

マクロ撮影で、ファインダーから見ていると、ホトケノザとヒメオドリコソウは、草姿は違っていても花の方は瓜二つくらいよく似ているなと感じたのですよ。そこでどのくらい似ているのか比較してみることにしました。

花を外して観察すると・・

上がホトケノザで下がヒメオドリコソウです。まず、花の大きさが違いました。写真の1目盛は5mmです。花筒の長さもホトケノザの方がだいぶ長かったです。花冠の色は似ているものの、ホトケノザの方が濃い色のように見えました。萼はどちらも5裂していました。ヒメオドリコソウの萼は開いているのでツンツンした感じでした。

花の上部方向から見てみると・・

ヒメオドリコソウの上唇(ぼうしの部分)外側には細かな毛が生えていました。しかし、ホトケノザの方は肉眼でもすぐわかるくらい長い毛が生えていました。下唇の中央裂片がさらに2つに分かれている部分、その大きさの差に注目です。ホトケノザの方がだいぶ大きいですね。

次に、葯のあたりにピントを合わせてみますと・・

どちらの雄しべも4本でした。長い雄しべ2本と短い雄しべ2本があり、4つの葯は柱頭を取り囲んでおり、キンギョソウと似た配置でした。ホトケノザはの方は葯どうしがくっついていました。一方、ヒメオドリコソウの葯は少し離れて存在していました。

葯の辺りを顕微鏡で見てみると・・

どちらの葯にも写真のような白く長めの毛が生えていました。写真では判別しにくいですが、どちらの柱頭も前後に二股に分かれている形をしていました。

次に花粉を顕微鏡で見てみると・・

上がホトケノザ、下がヒメオドリコソウです。

どちらの花粉にも縦に花粉溝があり、ラグビーボール型でした。ただ、大きさがわずかに異なっていました。ホトケノザは長径が48μm前後、短径が29μm前後で、ヒメオドリコソウは、長径が40μm前後、短径が30μm前後でした。両者で長径と短径の比が違っているのでヒメオドリコソウの方がより丸い感じに見えます。

【まとめ】

  1. ホトケノザ、ヒメオドリコソウはシソ科オドリコソウ属の植物です
  2. 葉の形や節間が長さの違いで草姿は異なっていますが花は大変よく似ているように見えます
  3. 詳しく比較してみると、花の長さではホトケノザの方が1.4倍くらい長くなっていました
  4. 特に花筒の長さの違いが顕著でした
  5. 萼はどちらも5裂ですが、ホトケノザは閉じて花冠に沿っているのに対しヒメオドリコソウは開いた形をしていました
  6. 上唇外側の毛はホトケノザの方が顕著に長いものでした
  7. どちらも雄しべは4本で、長い雄しべ2本と短い雄しべ2本の組み合わせで柱頭を取り囲んでいました
  8. ホトケノザは長短の雄しべで各々の葯どうしがくっついていました
  9. 一方、ヒメオドリコソウでの葯は離れて存在していました
  10. 花粉については、両者ともオレンジ色のラグビーボール型で花粉溝が縦にありました
  11. 花粉の長径と短径の比が両者で異なることでヒメオドリコソウの花粉の方がより丸く感じました

【感想と今後】

マクロ撮影での印象では両者の花は区別できないと思えるほどそっくりに見えていました。しかし、詳しく比べると思いの外違いがあってびっくりしました。特に気になったのが花筒の長さと下唇の大きさの違いです。これは、ポリネーターの吸蜜行動に違いを生じさせる部分です。ぜひ虫が蜜を吸う様子を観察してみたいと思いました。暖かな日にでも日向ぼっこしながらのんびり観察してみましょうかね。

 

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