植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

キショウブのタネは軽い

2024年11月18日 | 野草・山野草

今回はキショウブのタネのお話。

タネだと見だし写真的にイマイチなのでお花の写真を載せようと思いました。しかし、川中島古戦場史跡公園で撮っていたはずの写真が見つからず。。しかたなく18年前の善光寺庭園のキショウブの写真としました。

2006年6月7日の写真。キショウブは明治時代に観賞用として日本にもたらされた外来種です。

ハナショウブやカキツバタと比べて栽培が容易なので日当たりの良い水湿地の植栽に利用されています。しかし、現在は侵略的外来種ワースト100に指定されており野生化には注意が必要です。


ある公園でキショウブの種がこぼれ出ているのを見つけました。半野生化している箇所でしたのでそれを採取させてもらいました。

果実はカキツバタに似ています。熟すと3裂します。上の写真、大きめの果実を解体してみると・・

中には66個のタネが入っていました。このタネはやや痩せ気味でした。

別の果実からの充実したタネをとってきて拡大して見てみると・・

タネは扁平で丸い缶詰のような形をしていました。直径7~8mm、厚さ2~5mm。非常に軽く水に浮く性質を持っています。これにより水に流されてタネが遠くまで運ばれるようにできています。

キショウブのタネは、どのくらいの密度か調べました。実験器具は0.01gまで量れる秤と10ml用の注射筒です。

タネの体積の求め方:

  1. タネ20粒の重さ(S)を測定。
  2. 注射筒の目盛10mlまで水を吸い上げ全体の重さ(a)を量っておきます。
  3. 次に注射筒にタネ20粒を入れ、注射筒に水を吸い上げできるだけ空気を除き目盛10mlのところに合わせます。その重さ(b)を測定。
  4. タネ20粒の体積(v)=a-b+S・・(水の比重1mg/mlを利用)
  5. タネの密度(d)=S/v

タネをかえて3回繰り返し測定、合計60粒の重さと体積を測定し密度を求めました。

タネ1個の平均の重さは、0.0668g

タネ1個の平均の体積は、0.136ml

タネの密度は0.491g/ml これは乾燥した檜材レベル。

タネを割ってみると中に空洞がありました。

タネの密度は水の半分以下であり、これなら難なく水に浮きます。


まとめ:

  1. キショウブは水辺に生きる植物で、観賞用として明治時代に日本に導入されました。
  2. キショウブのタネは、扁平で丸い形をしており密度が約0.49g/mlで水の半分以下です。
  3. タネを難なく水に浮かせて拡散させることで生育地域を拡大する戦略をとっています。地下茎でも増殖します。
  4. 侵略的外来種ワースト100に指定されています。
  5. タネが水に浮きやすいことから、栽培地域の水がそのまま外部に流れ出ないよう注意を払う必要があります。特に貴重な山野草が生育している地域に侵入させてはいけません。
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野原にラーメン!?アメリカネナシカズラ

2024年11月01日 | 野草・山野草

秋晴れの河川敷で気持ちよく散歩していたら、うげっ! ラーメンみたいなのがぶちまけられている!・・と思ったら、今まで見たこともないような植物でした。黄色い線状でこんがらがっています。

一体何?家に帰ってすぐに図鑑で調べました。アメリカネナシカズラ(ヒルガオ科ネナシカズラ属)でした。でも今の時代スマホでも簡単に調べられるんですね。Googleレンズ、便利な世の中です。

葉緑体を持たず、緑色していないのでぱっと見は植物には見えないです。黄色してるから卵麺のラーメンかと思っちゃいました。

もっと近くで見てみると・・

あら、なんと可愛らしい花が咲いていました。ヒルガオ科なのでアサガオと同じく5つの頂点をもつ合弁花です。雄しべ5本は花冠より外に出ています。雌しべ2本はカタツムリの触覚のように突き出ています。絡みつかれているのはカタバミ。

アリが蜜を求めて花に来ていました。赤くチラチラした花はミチヤナギ(タデ科ミチヤナギ属)です。ミチヤナギにも絡みついていました。

そしてマメグンバイナズナ(アブラナ科マメグンバイナズナ属)にも絡みついていました。グンバイナズナっていう植物もいてグンバイナズナ属なんだそうです。属が別なんですね。この写真のはどっちなんだろう。自信ないです。

アメリカネナシカズラは近くにある植物ならどんなものにも絡みついていくようです。嫌いな食べ物ってないのかな。ヒルガオ科なのでアサガオと同じようにつるは右巻きです。

虫瘤発見。アメリカネナシカズラは葉緑体を持たずに全て寄生した植物から奪い取って生きているちょっと許しがたい植物、でも虫瘤つくられて奪われているという皮肉。虫瘤の下の方、少し緑がかっていますね。葉緑体を作る能力は残っているのかも。

忍び寄る茎。栄養を奪い取る植物(寄主)を感知するとこのように茎にイボイボを作って近づいていきます。気色悪ぅ〜。そういえば、光合成しないから葉っぱを持っていないんですね。

次の段階で栄養吸収を始めた茎をむりやり剥がしてみたら・・

イボイボは、タコの吸盤のように変化していました。寄主の毛がくっついています。体表面に毛があるとネナシカズラの攻撃を少しは和らげることができるのかもしれないです。寄主はヨモギだったかな?

拡大するとこんな感じ。「吸盤」と言っても陰圧にして張り付くのではないです。ドーナツ状の表面に粒々が見えます、これを相手の表皮にがっちり食い込ませるのでしょう。その後に吸盤の中心から寄生根をじわじわ食い込ませていくのです。おそろしや。

アメリカネナシカズラ同士でも絡み合って吸盤くっつけて栄養を奪い合っていました。これって自分自身なのかな。こんがらがっていて何が何だか・・と言った感じ。ヤブカラシという植物は自分自身を見分けて、巻きひげが絡みつかないようにしているそうです。それに比べてこやつらは修羅の世界で生きていますねぇ。

どのように栄養を奪い取っているのかを見るために、寄主の横断面で見てみると・・

くさびのように「根」を形成層あたりまで差し込んでいました。縦断面で観察すると・・

細い根を差し込んでいるようにも見えました。染色すればもっと分かりやすかったかな。

中心に寄生根です。

タネを手に入れられればおもしろい実験できそうですね。好き嫌いあるかが知りたいな。寄生根を差し込んでから、「うっわ、まず〜ぃ」とかなることあるのかな。

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山野草系・ウメバチソウとホトトギスの花の特徴

2024年10月22日 | 野草・山野草

この秋、よく行く園芸店にウメバチソウとホトトギスが売られていたので思わず買ってしまいました。育ててみて分かったこと、それはウメバチソウは育てるのが難しい山野草ということ。9月14日に つぼみが多い株を購入して様子を見ていたのですが、花弁や萼片、葉までもが褐色がかってきてしまいました。そして咲かずに萎れたつぼみも多数出てしまいました。後日、買った園芸店を訪れて売れ残りのウメバチソウを見てみたら同じような症状に・・・。プロが管理してもうまくいかない植物のようです。10月22日現在でも生きてはいるのですがね。別冊趣味の山野草「一から育てる山野草」という本では、「低地から高山まで生育し、湿地にも適湿草原にも育つ適応範囲の広い植物ですが、作ってみると意外に気難しい貴公子で・・」だそうです。夏ごしが難しいんですね。今年の9月はいつまでも暑かったですから。800円台後半もして高かったのは育てるのが難しいからなんでしょうね。一方ホトトギスは200円弱でした。

山歩きを趣味にしていたときは野生のウメバチソウに何回か出会ったことがあり、その時はたくさんの株が群落を作って元気に咲いていました。やはり山野草は育てるより野生で見たほうがイキイキしていいようです。

  • ウメバチソウ(ユキノシタ科ウメバチソウ属)

花の構造と咲き方がとても興味深いのですよ。花弁は5枚で梅の花のよう。萼片も5枚で花弁と同じくらいの大きさです。雄しべと花粉を出さない仮雄しべも同じく5本ずつあります。仮雄しべは薄緑色をしていて先は12-22本の糸状に分裂し、先端に小さい球状の腺体が付いています。仮雄しべは独特で面白い構造ですよね。これは何のためにあるの?ポリネーターにアピールするために花を飾っているという意味でしょうか。

5本の雄しべは開花当初は雌しべに張り付いていて未成熟な状態です。その後1本ずつ順番に花糸が伸びて雌しべから離れ葯から花粉を出すようになる・・・はずなのですが、購入株では花粉が見つけられませんでした。理由はよく分かりません。元気がないからか?観察した時期が悪かったのか?

以下は野生のウメバチソウを観察した時に記録したメモです。

日当たりの良い湿地に生える多年草です。先に成熟した葯は最後の一本が成熟する前に花糸から落ちてしまいます雄しべを一本一本順番に成熟させることにより花粉の出している期間を長くして受粉のチャンスを高めていると考えられます。最後の雄しべが雌しべから離れてしばらくすると柱頭が4裂して開き始めます。柱頭が開く頃には雄しべは花粉を出し終えていてほとんどの葯は落ちているので雄性先熟の植物と言えます。やがて花弁も落ちて種子成熟に向けて子房が大きくなっていきます。その時でも仮雄しべとがく片は落ちずに子房と一緒です。


  • ホトトギス(ユリ科ホトトギス属)

以前の山歩きでホトトギスの仲間であるヤマジノホトトギスとタマガワホトトギスに出会ったことがあります。これらの花の構造も興味深いものです。

以下は野生のホトトギスを見た時のメモ。

6本の花糸は花の中心で花柱と密着し上方に伸びたあと噴水のように中心から放射状に垂れ下がっています。花柱は3裂した後、それぞれがさらに2裂し、同様に放射状に外を向いています。単独で見ると奇妙な形でも、送粉者であるマルハナバチが訪花した時を観察するとその理由に納得できます(下の写真・ヤマジノホトトギス)。蜜腺は基部の膨らみの中にあります。蜜を求めてやって来たハチが花被片の上を歩き回ると、葯がハチの背に触れて花粉が付きます。写真のように雄性期では柱頭が下に下がり切っていないのでハチには触れません。この数日後に雌性期になると花柱が下に曲がり、柱頭が葯よりも下の位置となるので花粉を背に付けたハチが訪花すると受粉できるようになるのです。

・・というようにこの植物も雄性先熟で自家受粉を避けています。

この花の構造に似た園芸植物があるのでそれを紹介しておきますね。

  • トケイソウ(トケイソウ科トケイソウ属)

トケイソウは中南米原産のつる植物です。この花の構造は外側から3枚の包葉、10枚の花被、色鮮やかな糸状の副花冠、5本の雄しべ、濃紫色の3裂した花柱からなっています。子房は花被より上位にあり、雄しべより上に付いているという独特で複雑な構造をしています。そしてほぼ一日で花を閉じてしまいます。これらの特徴を見ても、ユリ科ホトトギス属とは近縁ではありません。しかし、花被、雄しべ、雌しべの位置関係がホトトギス属の花と類似していることに驚かされます。遺伝的に遠い種でも形態的に類似する事を収斂(しゅうれん)といいます。花の大きさはヤマジノホトトギスが2cm前後なのに対してトケイソウは10cm近くにもなるので当然送粉者は異なります。しかし、日本にはトケイソウに適したポリネーターがいないようで、効率よく結実させるためには人工授粉をしなければなりません。原産国ではどんなポリネーターが関係しているのかは知りませんが、ホトトギス属と同様に、訪花した虫(または鳥?)が副花冠上を動き回ることで受粉をすることは想像できます。ポリネーターの行動が似ていると、全く別の科でも類似の花の形に進化する収斂の見本と言えると思います。

最後に、これから花被片が開き始めようとしている花の写真を載せておきますね。

ユリ科なので、萼片にあたるものは花弁と同じ色形をしており、まとめて花被片といいます。細かな毛も美しい!花の一番下にある花被片の膨らみの中に蜜が溜まっています。どれくらい溜まっているか確かめたいのはやまやまなのですが、こんなに美しく咲いている花を壊して調べてみるのは気が引けてできませんです。

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種子の観察・ポーチュラカとスベリヒユとマツバボタン

2024年08月26日 | 野草・山野草

今回は、ポーチュラカとスベリヒユとマツバボタンの種子の比較です。どの種も大変小さな種子なので顕微鏡で観察。

1枚の顕微鏡写真で種子を表現しようとすると非常にピントが浅くなります。なのでピントの深さの異なる3枚の写真を利用して被写界深度合成をしました。現時点で利用できる合成ソフトを持っていないので仕方がなく手動で深度合成しました。なので、不自然さは否めず、ご了承ください。

  • まずはポーチュラカの種子・・・

種子の表面はジグソーパズル的なタイル状のもので覆われています。サザエの貝殻のような円錐状突起が見られます。中央の凹んだ部分「へそ」の左側についている蓋のようなものは種柄の一部の残骸です。

写っている面に関して、種子の長径は743μm、短径は621μm

  • 次にマツバボタンの種子・・・

ポーチュラカと同じようにジグソーパズル状タイルで覆われています。こちらは金属光沢があり大変美しいです。円錐状突起は見られますが、ポーチュラカよりかなり小さいです。「へそ」の左側に見られる種柄の残骸は見やすく撮れました。写っている面に関して、種子の長径はポーチュラカとほぼ同じで756μm、短径は621μmでした。

  • 次にスベリヒユの種子・・・

スベリヒユの種子表面は、他の2種とは印象が違います。茶褐色をしており鈍円錐状突起が密生しています。種柄の残骸は黄褐色であり、種子の濃い色との対比が印象的です。種子の大きさについては、他より小さく、長径は675μm、短径は594μmでした。

ポーチュラカ・スベリヒユ・マツバボタンについてのレポートは、後日一つにまとめたいと思います。

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