今回はキショウブのタネのお話。
タネだと見だし写真的にイマイチなのでお花の写真を載せようと思いました。しかし、川中島古戦場史跡公園で撮っていたはずの写真が見つからず。。しかたなく18年前の善光寺庭園のキショウブの写真としました。
2006年6月7日の写真。キショウブは明治時代に観賞用として日本にもたらされた外来種です。
ハナショウブやカキツバタと比べて栽培が容易なので日当たりの良い水湿地の植栽に利用されています。しかし、現在は侵略的外来種ワースト100に指定されており野生化には注意が必要です。
ある公園でキショウブの種がこぼれ出ているのを見つけました。半野生化している箇所でしたのでそれを採取させてもらいました。
果実はカキツバタに似ています。熟すと3裂します。上の写真、大きめの果実を解体してみると・・
中には66個のタネが入っていました。このタネはやや痩せ気味でした。
別の果実からの充実したタネをとってきて拡大して見てみると・・
タネは扁平で丸い缶詰のような形をしていました。直径7~8mm、厚さ2~5mm。非常に軽く水に浮く性質を持っています。これにより水に流されてタネが遠くまで運ばれるようにできています。
キショウブのタネは、どのくらいの密度か調べました。実験器具は0.01gまで量れる秤と10ml用の注射筒です。
タネの体積の求め方:
- タネ20粒の重さ(S)を測定。
- 注射筒の目盛10mlまで水を吸い上げ全体の重さ(a)を量っておきます。
- 次に注射筒にタネ20粒を入れ、注射筒に水を吸い上げできるだけ空気を除き目盛10mlのところに合わせます。その重さ(b)を測定。
- タネ20粒の体積(v)=a-b+S・・(水の比重1mg/mlを利用)
- タネの密度(d)=S/v
タネをかえて3回繰り返し測定、合計60粒の重さと体積を測定し密度を求めました。
タネ1個の平均の重さは、0.0668g
タネ1個の平均の体積は、0.136ml
タネの密度は0.491g/ml これは乾燥した檜材レベル。
タネを割ってみると中に空洞がありました。
タネの密度は水の半分以下であり、これなら難なく水に浮きます。
まとめ:
- キショウブは水辺に生きる植物で、観賞用として明治時代に日本に導入されました。
- キショウブのタネは、扁平で丸い形をしており密度が約0.49g/mlで水の半分以下です。
- タネを難なく水に浮かせて拡散させることで生育地域を拡大する戦略をとっています。地下茎でも増殖します。
- 侵略的外来種ワースト100に指定されています。
- タネが水に浮きやすいことから、栽培地域の水がそのまま外部に流れ出ないよう注意を払う必要があります。特に貴重な山野草が生育している地域に侵入させてはいけません。