震災短編『決断』最終話
津波の悲劇から十一年過ぎた今でも、三陸小学校の校舎はひっそりと残っていた。 今はもう、何処からも子どもたちの歓声は聞こえもせず、そこはもう文字通りの廃墟と化していた。 この十
震災短編『決断」8
あれから十一年の歳月が流れた。 大切な我が子の命を信頼して預けた学校が、それを護っ...
震災短編『決断』7
この日。 娘の結婚式で、学校に不在だった校長もまた、この未曾有の大惨事に呆然自失する...
震災短編『決断』6
A教諭は、生きる「決断」をした。 そう。 生きて、この惨劇を後世まで語り継がねばならない「語り部」としての使命が自分にはある、と悟ったのである。 何かと口さがない地方の
震災短編『決断』5
裏山を黙々と登って逃げたA教諭は、途中、倒木に行く手を遮られ、危うく倒れ掛かる木の下敷きになるところだった。 なるほど、あの七十名あまりの子どもたちをこの山へ一斉に避難させてい
震災短編『決断』4
A教諭は、裏山の傾斜面に立ち尽くし、まさに〝魂消た〟というように、魂の抜け殻のように...
震災短編『決断』3
A教諭は、背中に突風を受けたかと思うや否や、グワーという至近距離でのジェットの轟音のようなものを耳に聞いた。 振り向くと、そこにはまるで超巨大ダムが決壊したかのような水の塊が唸...
震災短編『決断』2
校庭にきちんと整列した子どもたちの足元は、幾度となく、巨大な余震によって揺らいだ。 そのたびごとに、一、二年生の低学年の子どもたちは悲鳴をあげた。 五、六年生の高学年の女児たち...
震災短編『決断』1
3・11で、七十四人の児童と十人の教師が津波の犠牲となった小学校がある。 未曾有の大震災とはいえ、一校の子どもたちや教師たちがそれほどの犠牲になったのは、後世まで記憶に留めてお...
震災短編『母燃ゆ』最終話
消防車も来ず、何の救助の手も差し伸べられないまま、生きながらにして火葬された母。 ...
震災短編『母燃ゆ』6
道という道が、地震で亀裂が走り、凹凸ができて、民家や塀や電柱などの瓦礫で分断されて...