工事現場から本社に上がり内勤業務に異動になってから11年経過して、工事部内では現場事務所の応援や竣工検査の手伝い・書類の作成など、雑用ばかりで現場が終われば次の現場と中途半端な処遇に嫌気をさしていた3年前。当時の技術部積算課の次長に引き抜いてもらった。主に分譲マンションの工事金額を算出する部署だったが、自分にも担当を任されたりと仕事の楽しさを覚えさせてくれた。いかにも江戸っ子気質の豪放快闊な人で、今時珍しく「間違えたのなら俺の責任」と言い張ってくれた人だった。半年たって8人が呼ばれ次長から「来月から技術部積算課は無くなる。見積部として独立し俺はそこの部長になる」と言って、事業部の中では部長以下9名という一番小さな部に昇格した。とにかく面倒見のいい人で若い社員にどんどん大きな仕事をさせ、休日出勤をしていると夕方あたりに来てくれてチェックもすばやく済ませ「1時間だけ飲みに行くぞ」と連れて行ってくれる。部長の1時間はホントに1時間だし、ちょっと飲んだ会計が3人で6000円だったりすると5000円出して「残り出してくれ」と言う。割り勘で2000円出そうとすると「そんな面倒臭い事するな」と言って駅の改札では「どーもどーもどーも!」とお決まりの手を挙げるポーズで颯爽と帰っていく。一緒に仕事をした3年間であったが、定年を向かえ送別会をする事になった。この1年は人員の退職・異動が多くて何回宴会を段取りしたか覚えていなかったが、部長の送別会の段取りを次長から言われた時はさすがに「僕やりたくありません」と断った。「お前が一番かわいがられたんだろうが、他の人に任せていいのか?」と言われて断腸の思いで引き受けた。部長以下8名の部署だったが、参加希望者が多く結局中途退社した元社員も含め20名の宴会になった。午後にちょっと記念品を買いに行く為に会社を抜け出したけど部長が大好きなビール券にする事にした。なんて味気ないと思われるかもしれないが、使わないコップや置物などよりは遠慮なく飲み干して欲しいと思ったからだ。大きな花束は大袈裟なのでブーケより少し大きめの花束を作ってもらっているときに「ジワ」っと来た。会社側も引きとめを依頼したらしいのだが、業績が大変な時期である事と自分のやりたい事があるみたいで、定年できっちり辞めるみたいだ。来月からは海外シニアエンジニアリングの指導者として発展途上国に赴くらしい。散会した後、駅の改札まで見送って中途退社した若い3人をつれてスイーツの店に行った。あまり大きな声では言えないが勘定を済ませたら5000円の黒字だったので「嫁・子供にプリンでも買って帰ってやれ」と言った。そしたら3家族で4000円もかかってしまい、残りは1000円…自腹ならかっこよかったのだが、まだ自分はそこまで人間が出来てないわけで。
最新の画像[もっと見る]
一時間でのサクット飲み