まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

松山大学温山記念会館(旧新田邸)再訪 その2

2024-05-27 23:17:08 | 建物・まちなみ
松山大学温山記念会館の続き。

2階へ上がろう。こんな階段を上るのはとってもワクワクする~


段違いのアーチ窓が3つ、リズミカルに並ぶ。


階段ホールは狭いが見上げると天井がこんなドーム型になっていて、まるで繭の中にいるようにやわらかく包み込まれる。


こちらの部屋は娯楽室。ドン!と中央に鎮座しているビリヤード台はめちゃくちゃ重そうで、黒柿の突板貼り。
壁には古いキューラックやスコアボードも残っている。


床はコントラストの強い2色を組み合わせた三角形の寄木で派手でにぎやかな印象。


天井の照明のすりガラスにはアールデコ調の幾何学模様が。


窓辺にはソファが造りつけられている。モダンな明るい娯楽室でゲームに興じる人々、グラス片手に歓談する人々。
楽しげな声が聞こえてくるようだ。


階段ホールに面したドアは用途不明だが、開けるとちょうど正面にあの3連アーチが見える。


こちらは会議室になっているが元はサンルームだろうか。窓ぎわの床60cmかそこらだけトラバーチン敷きに
なっているのは、鉢植えなどを並べたのだろうか。
こことさっきの娯楽室には簡易パイプベッドがたくさん置いてあり、セミナーの学生が寝泊まりする部屋として
使っているのだという。えぇ~っ、贅沢な寝室・・・


2階のメインの部屋は会議室に。部屋ごとに趣向を凝らした照明器具が素敵だな。


この部屋とさっきのサンルームとの間の窓に嵌められたステンドグラスが美しい~
色数を抑えてあり、無色透明や乳白色の型板ガラスをメインで使用し色付きのものはごくわずか。
直線と円弧のみの点対称デザイン。


調度品などは松山大学の所有となってからあつらえたものだそうだが、雰囲気に合わせて吟味されていて
もとからあったもののようにはまっている。


2階のドアは突板を張り合わせたモダンなデザイン!
新田長次郎は新田ベニヤ製造所も興しており、このような突板貼りの建材の製作はお手の物だっただろう。


洋室から和室へつながるドアは裏と表でちゃんと仕上げを変えてある。
壁の厚み分の重厚な三方枠、いや、五方枠か?敷居もあるから6方枠と言うのか!?(笑)


和室のふすまの中にラジエーターが!大丈夫なのかな!?


床脇の障子を開けると丸窓が・・・


実はこの丸窓、蝶の羽のように開くのだ!今でもちゃんと開く。
この窓から望める東のお庭は和風の池泉庭園。一方、南側のお庭は芝生が広がり噴水もある洋風の庭園。
洋室からは洋風のお庭、和室からは和風のお庭が見えるように作られている。


別の階段から1Fへ降り、庭へ出る。


1Fの窓から見えていた八重桜の木は少し前に倒れたそうだが、そのおかげで1Fの窓の高さで咲くのを見られる。


壁泉のタイルと羊頭(山羊頭か?)の吐水口。この形、何か所かで見たことあるな。




とんがり屋根の煙突は、少し離れて眺めないと見えなかった!


この日案内してくださった今山さんはこの建物の管理人の仕事を始めてから近代建築にハマり、あちこち
見学しに行っているという。庭の花や鳥のことにとても詳しくて、解説を聞きながらのんびり散策。


和風庭園の片隅にあるこのドアは、絵本に出てくるおうちのドアみたいなかわいらしい木製のアーチ形。


この中にも入れて頂けたのだが、中には金庫のドアのような金属製のドアが・・・そしてさらに内側にも
また同じようなドアが・・・その奥にはなんとシェルターがあったのだ!大きさは8畳ぐらいか?


そこから奥へも通路が伸び、同様の金属製のドアを2枚ほど通り抜けたあと、道路へ出られるようになっていた。
庭園の築山の中にシェルターがあったとは!!戦時中に実際使われたのだろうか!?


勝手口は普通の家の玄関ほどある。人が住めそうな犬小屋もあったり(笑)


建物をぐるっとひと回りしてきたらもう見学時間の2時間になっていた。え~~っ、後でもう一度回って写真を
撮ろうと思ってたからあんまりちゃんと撮ってなかったよ(汗)
でも案内して頂いて豊かな気分でゆっくり見れたからいいか。また申し込んで来ようっと。
あぁ楽しい午後休だった~

おわり。
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松山大学温山記念会館(旧新田邸)再訪

2024-05-14 23:33:31 | 建物・まちなみ
松山大学温山記念会館を前回訪問したのは2009年、思い返せばもう15年も前になるのか。。
その頃参加していた洋風建築めぐりの講座で、当時はまだ一般公開されていなかった(と思う)この邸宅建築を
見学させて頂き、それはもう大感激したのだった。それ以来、時々ふと思い出してはもう一度ゆっくり見たいと
思って機会を窺っていたが、コロナ後見学の受け入れが再開されたので、休みを取って友人と一緒に行ってきた。
(15年前の訪問はまたまた書き損ねたままになっていた・・・汗)


この建物は、松山出身で現在のニッタ株式会社の創業者である新田長次郎(温山翁)の邸宅として、
1928(昭和3)年に娘婿である木子七郎の設計により建てられた。
翁は青少年の教育のため私立松山高等商業学校(現松山大学)を創設しており、新田邸は1989(平成元)年に
松山大学に寄贈された。現在は学生の春秋のセミナー等に使用されているが、それ以外の時期には見学が可能。

門の脇にある小さな木戸を入ると、外からも見えていた美しい建物が一段大きく目の前に迫り胸が高鳴る!
S字瓦が載った車寄せやぺたっとした壁に穿たれた連続アーチ窓などからスパニッシュな香りが漂ってくる。


車寄せの下に玄関があるのだがあまり目立たない。


しかし、この玄関回りの意匠は凝りに凝っているのだ!
ドアは外壁面から60cmほど引き込んであり、その回りの壁は額縁のように外に向かって広がっている。
その壁に貼られた装飾タイルは、他では見たことのない独特の色使いである。クリーム色の地に水色と淡い
グリーンで八芒星をかたどり、その内外には宝相華のような模様をあしらっている。一般的な和製マジョリカ
タイルと同じく模様の輪郭が凸状になったクエンカ技法(型押しのチューブライニング)だが、顔料絵具の
ようなマットな色合いと異国情緒漂う八芒星のデザインが、輸入品だろうかと思わせる。


しかしこのユニークな色柄のタイルは、多治見の山内逸三の手によるものということが、タイル研究家の
加藤郁美さんの調査により判明している。(※『にっぽんのかわいいタイル』参照)


モールディングのタイル(テラコッタ)もまた変わっていて、組み合わされた曲面の段の部分で違う色に
塗り分けられている。こういうパーツはだいたいテラコッタ釉とか地味な色の釉薬が全体にぼってりかけられて
いるが、こんな色付きで、しかも多色塗り分けのなんて他で見たことがない!


重厚な玄関ドアはタイルと同じ八芒星デザインで、星の部分に明るめの色の板が張られている。
ドアの外側に当時からの網戸も残っている。これは重宝だな!


そして脇の小窓もまた魅力的なのだ。


ブルズアイ(牛の目)と呼ばれる丸いガラスは瓶底メガネみたいでとても面白い。手吹きで作られるガラスは
不等な厚さで細かく波打ちほどよく視界を遮る。


玄関の内側の壁にもさっきのと同じ色合いのタイルが貼られている。こちらは八芒星ではなく全体が
植物模様の正方形のタイルと、縁取り用のタイルの2種類。壁のアールに合わせてタイルもゆるやかに湾曲
させてあり、この湾曲加減をコントロールするのは相当難しかったのではないかと・・・


玄関の床には白いボーダータイルが矢筈に貼られていて、これもまた美しい。。。


さて玄関ホールに目をやると、年代を経た絨毯に目を奪われる。この絨毯も当時のものだと言う。
こういう敷物やテキスタイルは、良いものと安物とでは建物自体の印象が全く違ってしまうので本当に重要。


そしてその絨毯をべろっとめくって見せて頂いた寄木の床もまた素晴らしい!
六角形をかたち作る3つのひし形パーツは色も木目も違う3種類の木材が使われており、コントラストの強い
3色のくっきりとした柄は存在感があり、隙間なくぴっちりと合った角が技術の確かさを見せつけている。
それにつやつやに磨き上げられ良い状態が保たれているのが感涙もの。


ディテールだけではない。ホールの空間の構成にもまた惚れ惚れする!大きな吹抜けが取れない階段も、
階段裏を曲線に仕上げて見せ場にしているのがさすがだな~


お庭に面したセミナールームは何とゴージャスなのだろうか!


元ダイニングルーム。






各部屋にあるセントラルヒーティングのグリルも古いもので、デザインは様々。


そしてこちらの壁の飾り。鹿のはく製の周囲を飾るのは、これまた風変りなタイルである。
凸らんだ輪郭線に囲まれた部分に顔料と思しき彩色が施されており、透明釉などはかかっていなさそう。
壁の額縁の寸法にぴったりあってはおらず、端の方のタイルはカットしてあると見えるが、20cm角と
いうのも変わったサイズだな。玄関の山内逸三のタイルとも少し似ているが・・・いったいどういう素性の
タイルなのか。。。


この日案内して頂いた今山さんが、このタイルがオスロ国立博物館にあるバルディショル・タペストリーを
モチーフとしていることを発見されたという。すごい!
1613年に建てられた木造のバルディショル教会が1879年に取り壊されたときに、古い資料などが
オークションに出され、ぼろ布と思われ放置されていたものが、実はノルウェーで現存する最古の、また
ヨーロッパでも最古級のタペストリーだったのだ!1040~1190年の間に制作されたものと考えられている。
はてさて、このタペストリーの画像を当時の日本人が入手して忠実に模写しタイルを作ったのか、
それとも外国で作られたタイルをたまたま購入したのか、、、謎である。


窓のではちょうど八重桜が満開!


こちらは勝手口。床は玄関と同じ白ボーダータイルのやはず貼りで、壁の立上り部分には、泰山タイルっぽい
ふくよかな青色のモザイクタイルが貼られていて、勝手口ながらなんとも素敵な小空間なのだ。




トイレは無釉モザイクタイル貼りの床だった!


1Fの奥は和室や台所などの生活空間。収納力抜群の戸棚が作りつけられ広々とした台所は近代的。
銅版張りの巨大レンジフードが気に入った。


続く。

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クラブツーリズムのタイルツアー

2024-04-10 01:44:19 | Weblog
2022年に『日本全国タイル遊覧』という本を出させて頂いた。私自身はあまり大っぴらに宣伝活動も
していないのだが、以降ちょいちょいいろんなお話を頂く。
今回クラブツーリズム様より、関東発のタイルツアーを企画しているというお話があり、
神戸・京都のタイル物件をめぐるツアーに同行することになった。
訪問先は神戸のジェームス邸や京都の船岡温泉など垂涎もののスペシャルツアー!!
10月に2回開催でただいま参加者募集中。ご興味のある方どうぞ~
 ↓
<美術>『「船岡温泉」貸切見学! タイルマニアと行く 華麗なるタイルの世界in京都・神戸 2日間』【JR東京駅出発】
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2024.1.4~8 鹿児島・奄美の旅 もくじ

2024-03-29 01:10:02 | Weblog
長すぎるお正月休みにちょっくら旅に出かけた。
ANAの楽パックが意外に安くとれたので行き帰りも楽々~♪鹿児島から海路で奄美入りも楽しかった!
船に乗ったり、地鶏を食べたり、建物めぐり、お墓めぐり、まち歩き、温泉も。
ちょっと寒い日もあったけど素晴らしくよいお天気で、今回も楽しい旅だった。
今度は徳之島、沖永良部島へアイランドホッピングして那覇まで行ってみたいな~~


長いお正月休み、船旅に。
フェリーきかいで奄美大島へ。
奄美大島のタイル墓めぐり
奄美大島の教会めぐり
フェリー波之上で鹿児島へ戻る。
天文館のタイルたち
鴨池フェリーと玉利邸庭園
鹿児島の夜歩き

しかし旅先でスマホが突然壊れてしまったのには本当に困った!!
鹿児島でAUショップへ行ったり、大阪に帰ってからも電話も使えないから問合せするのに公衆電話を使ったり(苦笑)、
2週間ぐらいバタバタして新しいスマホを買ってようやく落ち着いたのだった。。。
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鹿児島の夜歩き

2024-03-26 23:28:08 | ディテール
今年のお正月休みの旅、続き



夕方レンタカーを返して鹿児島中央駅近くの市電通りを歩いていたら、レトロなビルの1Fにお洒落な飲食店が
たくさん入っているのに目がとまる。へぇ〜いいね!上は公営住宅のようだ。半地下の店や細い隙間の奥にある店
など、構造も面白い。かなり古いしこんな大通り沿いだからそのうち再開発されるかもしれないが、、、
スクラップ&ビルドの再開発ばかりするよりこういう建物を活用する方が楽しい。
今日の夕食は予約してあるのでまたの機会に入ってみたいな。


おや、一番端っこの階段の横の店は何だろう?半地下のドアの窓越しに、真っ暗な中に点々と灯る小さい灯りが見えていて
占いの館か!?と思うような、なんだか秘密めいた雰囲気。。。。でも看板には「COFFEEとくなが」と書いてある。
夕食の予約時間までまだ1時間ほどある。もう日が暮れてまちも見えないし、喫茶店ならちょっと入ってみようか。


数段降りてドアを開けると、、、うわぁ!カウンターだけの店内はかなり暗く、そして驚くほどたくさんの花が
飾られていた!店が花に埋もれているといっていいくらい。実はこれらは造花なのだが、精巧で本物のように見える。
花の間に小さなステンドグラスの灯りがぽつぽつと点いている。魔女の館に入り込んだかと錯覚するその雰囲気に
一瞬ひるんだが、念のために聞いた「喫茶店ですよね?」との問いかけに、そうですよ、どうぞ、とママさんが
優しく招いてくれた。あぁよかった。


カウンターには常連と見られる先客が2人。珈琲屋さんなので恐縮気味にココアを頼みながら、これはもしや
超地元密着系の常連の溜まり場かも、場違いをやらかしてしまったか、、と少し気が引けていたが、ママさんに
話しかけると、気さくに話してくれる。
今のビルで15年(5月で16年)、その前は駅前のイオンが建つ前の長屋で15年営業。その前は転々と。
「以前は年配の人が多かったけど最近はインターネットを見て若い子が来ることも多いんですよ」と。
私も昔ながらの純喫茶が大好きなんだけどコーヒーは苦手なので、コーヒー店なのにすみません・・・と話すと、
そんなこと気にしないで好きなものを飲むのが一番いいですよと、とても優しい。
30分弱の滞在だったけど、おいしいココアを頂いてほっこりできた。あ〜たまたま見つけて入ってよかった。
また鹿児島来たら寄りますね!


さて予約しておいたお店へ向かいながら、ビルやお店を鑑賞して歩く。
商店街にあったこんな幾何学的な模様のファサードのお店。ぱっと見てすぐ「こむらさき」と読めるのは
我ながらすごいな(笑)


天文館本通りの脇には、グルメ通り、セピア通り、七味小路という横丁があって細い路地に小さなおしゃれな
飲食店がずらりと並んでいて面白い。こんなところがあるのは知らなかった。凝ったファサードの店が多く、
あちこち入ってみたくなる。




タイルや面格子を使ったファサードの雰囲気の似たお店がちょいちょいある。同じところが手がけたのだろう。




さて予約しておいたのは「蘇麻」という店で、以前母と妹と鹿児島に来た時にたまたま入ろうとしたら満席で
入れなかったところなのだが、ちらっと見た店内がタイルだらけだったのでずっと気になっていたのだ。
今回リベンジで訪れたら、めちゃくちゃいい店だった!


1Fのカウンター後ろの壁一面デザインタイル、天井は格天井。


2階は半個室の仕切り壁が同じタイル貼り。


厨房の中の壁もタイル貼りだ。


そして2ヶ所あるトイレもモザイクタイルが床から天井までみっしりと!シンクは笠原のタイル流しだ。







古い木材や面格子などうまく使われていて、タイルも元からあったように見えるが、聞けば全てお店の内装として
作ったものだという。へぇ〜〜!さっき見た店と同じデザイン事務所の作だろうか。

そして鶏のたたきと地鶏の炭火焼きを頼んだら、これがもう唸るほど美味しくて、ボリュームありすぎて
鳥刺好きの私でもひとりでは食べきれないほど。って、全部食べたけど(笑)
カウンターでも広々、お手頃価格でボリュームがあっておいしくて店員さんも親切。そしてタイルだらけ。
素晴らしいお店だな!




昼間に見て気になっていたビル、夜見たらめちゃくちゃかっこよかった!!


全面ステンドグラスの階段室がガス灯の行灯のよう。


今回おいしい鳥刺(たたき含む)を食べるために鹿児島に泊まった。お昼永楽荘でも食べたし昨夜のわっぱ飯の店でも
食べたので3連チャン、満足満足〜!鹿児島も何度行っても楽しいな。また行きたい。

おわり。
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