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『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』~ラブストーリー

2011-10-03 21:52:56 | X-MEN(HJその他)


You go there you' re gone forever
I go there I' ll lose my way
If we stay here we' re not together
Anywhere is


── Anywhere Is:Enya


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『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』とはどういう映画かと訊かれたら、まずアメコミ原作のヒーローアクションものであり、また社会に於けるマイノリティの受容および逆に彼らが社会をどう受容するかということをテーマに、キャラクターを借りて理念の対立を描いた作品であると答えるでしょう。それらはX-MENシリーズ全体の基本ですが、今作ではそこに青春学園物のテイストも加わっています。
人間ドラマの部分が描き込まれているのはシリーズを通しての特長として、今回更に特筆すべきは、この作品が驚くほど正統的な「恋愛映画」だったということです。そしてそれは、若者たちではなく、チャールズとエリックという二人の主人公によって描き出されたものでした。書いていいかどうか迷ったのですが、やはりこのことは記しておくべきだと思います。

公開当時、シネマトゥデイのレビューで「やおい的」などという言葉を見た時には我が目を疑い、その後雑誌やネット上でそれに類する評も幾つか見ましたが、この映画は別にそういうことをネタ的に扱っているわけではありません。と言って「暗示させる」方法を取っているのでもありません。また、それを以て何か社会的問題などを訴えようとしているのでもありません。
そういったこと以前に、そもそもこの映画の基本的なストーリーラインが、恋愛映画のそれに沿っているのです。

異なる人生を歩んで来た二人の主人公、二つの孤独な魂が運命的な出会いをし、心通わせて幸福な時間を過ごしながらも、やがて道を分つ──
この作品はそこに到るまでを正面から描き、どのようなレッテル貼りも必要ないオーソドックスなラブストーリーとして成立していました。実は海外レビューやインタビューなどでもそう言われているのですが、ハリウッドのヒーローアクションムービーで、よくぞここまで正々堂々とそれを描ききったものです
更にブルーレイディスクの映像特典を観れば、スタッフサイドによってはっきり「これは tragic romance(悲恋)である」との見解が述べられているので、この作品が「そういうもの」であるとの解釈は間違っていないと思います。

彼らが別れるに到った理由について、過去数回に分けて書いてきた感想に付け加えることは特にありませんが、それにしてもクライマックスに於けるエリックの暴走ぶりとその後の展開には、自分はいったい何を観ているのだろうかと呆然とし、このすれ違いをどうすれば──と、胸しめつけられるばかりでした。

「ヤツら」が俺たちを引き離そうとする。これは全部ヤツらのせいだ。別れてしまったらヤツらの思うツボだ。そばにいてくれ、離れないでくれ、ずっと一緒にいてくれ──と懇願するエリック。
いやそうじゃない。これは君とそして僕のせいなんだ、だから一緒には行けない──と答えるチャールズ。

観る側の捏造や妄想ではなく、本当にこういうことを言っているのが、この映画のすごいところですが、自分がこれで思い出したのは、山岸凉子さんの名作マンガ『日出処の天子』でした。

我々が揃えば無敵だ。二人ならば何でも出来る、完全な存在になれる。「世界」だって手に入れられる。なぜそれがわからない?──と、一人が言う。
そうは言っても、その世界の半分またはそれ以上を占める存在を排除してしまったら、それは既に「世界」ではない。完全なものではあり得ない──と、もう一人が答える。

ともに強い力を持ち、多くを共有し、何よりも互いを必要とし、だからこそ一緒にはいられない二人。前にも書きましたが、憎み合って別れたのではないところが、寧ろつらいです。
共に過ごした時間の中で、クールで無表情なエリックが、チャールズの前でだけはポロポロ涙を零したり全開笑顔を見せたりしていたのを思い出すと、更に悲しくなります。
ラストシーン、「マグニートー」と化したエリックが「(あのテレパスとは)別れた」と言う台詞が、原語だと "Gone." なのがまた何とも……彼の認識では、去って行ったのはあくまでもチャールズの方だということなんでしょうね。
本当はショウに復讐を遂げた時点で、エリックはチャールズを拒絶してしまっていて(その後、潜水艦内から出て来た時の彼のポーズは、既に「マグニートー」のそれです)、それなのにチャールズには自分を受け入れてほしいという甘えがあるんですよ。
本当にこのすれ違いっぷりを何とかしてくれ!と言いたくなりますが、でもここで道を分かったがために、彼らは却って一生お互いから逃れられなくなってしまったとも言えるわけで、それに巻き込まれる「世界」こそいいツラの皮かも知れません。

繰り返しになりますが、ハリウッドのヒーローアクションムービーでこういうものが観られるとは思ってもみませんでした。本当にいろいろな意味ですごい映画でした。


■当ブログの『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』感想■
X-MENサーガ
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』感想その1
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』感想その2
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』~無敵のプロフェッサーX
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』~マグニートーの誕生
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』~人ふたり別れるときは(追記あり)

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