引き続き、ベルリン国際映画祭で上映された『300』について。レビューも続々上がって来ています。
毀誉褒貶と言うより、プレミア上映時には、どうもネガティブな反応の方が多かったようですね。
代表的なのがドイツ発の下記レビュー。
signandsight.com
一方、北米メディアでは、ここまで否定的な評価はされていません。
ロイター(元記事は Hollywood Reporter らしい)
ネガティブな評は、それがドイツ(ましてやベルリン)だから、ということもあるかも知れません。
祖国の大義のために死ぬことを名誉とする軍団が、一致団結して戦いへ向かう──という内容だけでも、あの国ではアレルギーがありそうです。私にしても、デイヴィッドのインタビューにあった「カミカゼ」との比喩(次回掲載予定)には、いささか戸惑いを感じましたし。
もしかして、「自由と民主主義」を標榜する国家が、現代で言うところの「中東の独裁者」に立ち向かうという構図に、何らかのメタファーを見出して、キナ臭く思う向きもあったかも知れません。
加えて、「あの」コスチュームや、背景がほぼフルCGであることへの違和感もあるだろうし、フランク・ミラーの血腥くマッチョな作風自体にも好き嫌いは多そうです。
ミラー流のアレンジが、古代ギリシアというヨーロッパ文明の母(学術的には様々な議論がありますが、とりあえず一般的なヨーロッパ人のメンタリティに於いては、という意味で)への侮辱と捉えられた可能性もあったかも知れません。
それでも、以上のような観点に基づく殆ど感情的なレビューは、いわば想定の範囲内だろうと、私は考えます。
そもそも原作を読んだりその設定を見聞きしたりした時、たとえばデイヴィッドのファンである自分たちだって、強烈な拒否感や違和感を抱きはしなかったでしょうか?
撮影時から公開まで、情報を集める過程で、次第にその感覚や感情は薄れて行きましたが、いきなり「あれ」を突きつけられたら、一時の感情的混乱の結果としても、ネガティブな反応や評価が生じるのは無理ないと思いますよ。
アメリカでは、フランク・ミラーに対する認知度もヨーロッパとは違うし、とりあえず上で挙げたような問題点は踏まえた上で、「映画」として評価しようという感じでしょうか。
全米公開後この映画がどう迎えられるか、続く世界公開ではどうか、正念場はこれからでしょう。