ボシュエは殺され、フイイは殺され、クールフェラックは殺され、ジョリは殺され、コンブフェールは一人の負傷兵を引き起こそうとするせつな、三本の銃剣で胸を貫かれ、わずかに空を仰いだだけで息絶えた(ユゴー)
グランテールは立ち上がっていた。参加しそこなって仲間に入ることが出来なかった全戦闘の燦然たる光は、様子を変えたこの酔漢の輝く目の中に現われた。彼はしっかりした足取りで部屋を横切り、アンジョルラスのそばに立って銃口の前に身をおいた(ユゴー)
アンジョルラスは微笑しながら彼の手を握った。その微笑が終わらぬうちに、発射の音が響いた。アンジョルラスは8発の弾に貫かれ、あたかも弾で釘付けにされたかのように壁に寄りかかったままだった。ただ頭をたれた。グランテールは雷に打たれたようになって、その足下に倒れた(ユゴー)
自分が外出している間にバリケードは占拠され、ジャベールさんはバルジャンに命を救われ、そしてアンジョルラスとグランテールは今年もまた手を取り合って共に銃弾に倒れたのでした…
前にも呟いたけど。
サン=ドニは死してのちも自らの首を抱えて歩みを進めた聖人なのだそうです。だからアンジョルラスたちはサン=ドニ通りのバリケードで戦って死んだけれど、彼らの死後も人類は歩みを止めなかったのだと思うのです。
レミゼ原作では「シャンヴルリー通りのバリケード」と表記されることが多いのに、章タイトルだけ「サン=ドニ通りの叙事詩」なのは、訳の違いだけではない意味があると思いたいのです…。
セーヌ河の水際で思いがけなくバルジャンに出会った時、ジャベールのうちには、逃げた獲物をまた捕まえた狼のようなものと、見失った主人にめぐり会えた犬のようなものとがあった(ユゴー)
だが君達のした事は無駄ではない。君達がこのバリケードで灯した灯りは、今日立ち上がらなかった人々の心にも、小さな火種を残すだろう。いつかその小さな灯りが寄り集まり、大きく赤々と燃える時、再び革命が起こる。その時こそこの国は変わるんだ【ヴァルジャン:44話】
人類の歴史というのは、おそらくそうやって灯されるたくさんの灯りによって、ゆっくり進んで行くものだ。暗い過去を抜け出し、明るい未来へと【ヴァルジャン:44話】