「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

神話の中に立つ ~アルスター・サイクル~

2016-12-22 | 留学全般に関して
「クーフーリン(Cú Chulainn)」という英雄の名をご存知でしょうか?

ケルト・アイルランド神話の一つに『アルスター・サイクル Ulster cycle』と呼ばれる物語群があります。ゲッシュ(geis、禁忌)に縛られた英雄たちに関する一連の物語ですね。中でも随一の英雄として描かれるのがクーフーリンです。私はアイルランド神話に詳しくはありませんが、悲劇の英雄クーフーリンの物語を断片的には知っていました。

ここBelfastに来てから、とくに意識はしていなかったのですが、今日、たまたまクーフーリンの話題があって、「そういえば、ここはまさに神話の舞台であるアルスターだった!」ということに今更ですが気が付いたのでした。
英国領北アイルランドはアルスター州を含んでおり、Belfastはまさにそのど真ん中に位置する都市なのですね。つまり、Belfastにいるということは、今まさに、アルスター・サイクルの中に立っているわけです。
「決して犬の肉は食べない」などクーフーリンのゲッシュと逸話には面白いものが多く、もし興味がありましたら、ぜひ読んでみて下さい。私も改めてすこしアルスター・サイクルを調べて、勉強してみました。「教養」というカッコつけすぎかもしれませんが、民俗学的な知識は、地元の人たちとの交流など、いつか役に立つ時もあるでしょう。

写真は本学が誇る大学図書館の一つ「マックレイ図書館(The McClay Library)」の前にある謎の像です。ある意味キモカワイイです。
マックレイ図書館は、アルスター博物館(Ulster Museum)から数百メートルしか離れていませんが、北アイルランド屈指の史料や文化財を有しているそうです。つまり、半径数百メートルの範囲にはアイルランド文化を現代に伝える知識が集結しています。
私が英国に好意的なのは、このように「文化と伝統を尊ぶ気質」が日本のそれと似ているからです。ただ、日本文化の根底にある無常観と異なり、英国文化の根底には一貫した強さを感じさせられることが多い気がします。そのあたりの違いも実に興味深い。

留学の醍醐味の一つとして、研究だけでなく、このような身近な社会勉強もそれなりに楽しめることがあります。自分の視野を広げてくれるような思いがけない刺激と発見は、やはりいつだって楽しいものですね。