「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

放射線小咄 ~Wilhelm Röntgenの誕生日

2018-03-26 | 学術全般に関して
25日日曜日から再び英国は夏時間期間に突入し、日本との時差は9時間から8時間へなりました。つまり、1時間損した気分です。本日、大学院で友人と会った時に「軽い時差ボケがあるよね」という会話になりました。たしかにちょっと眠いような気もしますね。

27日火曜日はドイツ人物理学者ヴィルヘルム・レントゲン Wilhelm Röntgen博士の誕生日です。
放射線の研究に携わっている人間としては、X線を発見して第1回ノーベル物理学賞を受賞したこの偉人に対して、やはり経緯を払いたく思います。今日の放射線医学の原点は、間違いなく、彼の優れた洞察力にあったといえます。おそらく今日の先進国において、生まれてから1度もレントゲン撮影やCT撮影をしたことがない人はいないと思われます。現代を生きる我々は、やはりレントゲン博士に感謝をすべきなのでしょう。

「Serendipity セレンディピティ」という言葉があります。
偶然のような幸運や予期せぬ発見に恵まれることを言います。自然科学史上、このセレンディピティは数多くの大発見に関係しているように思われますが、レントゲン博士による「X線の発見」もその一つと言われることがあります。
たしかに、当時、陰極線の性質を研究していたレントゲン博士は、1895年11月8日に偶然、X線を発見しました。その時の状況は色々な媒体によって語り継がれていますが、レントゲン博士が研究者として非常に素晴らしかったのは、この正体不明だったX線の基本的性質を明らかにするためにすぐに種々の実験を行ったことです。とくに磁気に曲がらないことを見出したことによって(陰極線は電子の流れなので当然磁気で曲がる)、このX線が陰極線とは異なる新しい現象であることを確認し、さらにその透過性などまで検証しています。
しかも、奥さんの手の骨の透過像を現像して、視覚的にX線の持つ有用性を判りやすく示したのです。これらの実験結果によって、X線という人類史上において画期的な発見は人々に受け入れられたのでした。
ただ見つけるだけでなく、それが何かを明らかにしようとした点に、すくなくとも新種の現象を見ていることを確認したことに、レントゲン博士の真骨頂があったといえます。つまり、X線を見て、それが「新しい何かである」と示すことが出来た、世界で初めての人がレントゲン博士だったわけです。発見とはえてしてそういうものでしょう。

かつて、医師でないにもかかわらず史上最も重要な医学者とたたえられたフランス人医化学者 ルイ・パスツール Louis Pasteurはこう言いました。

幸運は準備された心のみに宿る
Chance favors the prepared mind

けだし名言であります。


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