そんなこんなでもう丸二日。
初日に色々諸事情を聞いて、2日目に必要なものをそろえて。
僕と美都の逃亡生活が始まったわけだが。
元々僕は学校に真面目に行っていたわけでもないので、その辺は心配ないが、問題は美都の家族だ。
どんな行動をとるか分からない。もしかしたら、追ってくるかもしれないし、警察に駆け込むかもしれない。
放っておくという可能性もある。
それよりも今、僕は猛烈に知りたいことがあった。
「なあ、美都」
「なに?」
「身長、120センチなんだろ?」
「なんて失礼なことを言うお兄さんなのかしら…134センチだよ」
「ウソだろ。見栄張んなくていいよ」
「ウソじゃないし~。ふざけないでよ」
まさか、130センチもあったとは…いやはや、恐るべしというか、さすがというか……。まあ、一応中2だしな。
「そういや、その服。どうやって手に入れたんだ?」
「ああ、コレ?」
「確かお前、制服で家出てるって…」
「はい、初日に男に貢がせた~」
「お前はどんなことを学校で学んだんだ!?」
「簡単だよ。暇そうなオヤジ、もしくは秋葉原の劇場に入っていく、出ていくオヤジを狙うの。それで、ちょこっと可愛く『おじさん、私家出しちゃったの。服、欲しいなぁ』って言ったら、服買ってくれたよ。ちょっとアタシの趣味じゃないけどね」
いやいや、そんなことは聞いてないが。侮るべからず、中学二年生。
とりあえず、常にこんな感じでだらだらと過ごし、僕が買ってきたコンビニ弁当や、おにぎりを食べて過ごしている。ここの場所には人は一人も入ってこず、ずっと2人で過ごしていた。
正直言って、今でも美都の家庭の問題はどうすればいいのか僕にはわからない。
でも、僕は今まで美都ができなかったことや制限されてきたこと、知らなかったことを教えてあげたい。
なんて、かっこつけたこと言ってもかっこつかないけれど。
「ねぇ、家に住みたい」
「はぁ!?何言いだすんだよ」
「なんかアパートとか借りれないの?」
「ん~……」
美都がチッと小さく舌打ちをする音が聞こえる。しょうがないから本気で考えて見ることにした。
――――――――――――――そういえば、僕の祖母は家を地方にいくつか持ってるんだっけ?
「ん~家ならあるよ。一応」
「じゃあそこ住む!」
「ん」
ここから一番近いのは………海岸沿いのあそこか。歩いていっても大丈夫なのだろう。
ということで、僕と美都は歩き始めた。
外に出るのは久しぶりなのだろう。僕は少なくとも買出しに行く時は外に出ていたから平気だけど、美都は2日ぶりの太陽の光だ。目がくらみもするだろう。
「おばあさん、金持ちなの?」
「ん~全然。一般家庭」
「じゃあ、なんで家なんて持ってるの?さっき悩んでたってことは…色々あるんでしょ?」
「なんかさ、いろんな方面のお偉いさんに顔が利くみたいでさ、色々もらってんだよ」
「ふ~ん…なんか、金持ち発言だね」
「違うと思うけど…」
のんびりと、だけど確実に前へ進んでいく。街中をのんびりと歩いていると、僕なんかは明らかに高校生っぽいが、今のご時世、学校をさぼってるやつは結構いるから、あんまり目立つことはないだろう。問題は、美都だ。
「あの子…小学生?」
「あいつ、ロリコンかよ」
「まじぃ?ウケる~」
こんな会話が少し耳に入ってくる。
違う、僕はロリコンじゃない!!
って叫びたいけど…美都は全く気にしてないようだ。鼻歌歌いながらニコニコと歩いている。
海岸沿いの別荘あでは歩いて15分といったところか。都心に住んでるわけでもないから、案外早くつく。
美都の家はどこにあるのか分からないが、あのゲームセンターから近いのだろうか。
でも、毎日ゲーセンを転々と変えていたと言うから、だんだんと遠くのゲーセンへと行っていたのだろう。
「ねえ、ロリコンさん」
「さっきまでお兄さんと呼んでいたではないか」
「なんなの?その口調。皆にそう思われてんじゃん」
「聞いていたのか!!」
「うん。面白過ぎて鼻歌歌っちゃったよ」
「美都は小学生と思われているのも聞いていたんだな?」
「え?そんなことは聞いてないなぁ」
「自分に都合の悪いことだけ聞き流しやがって…なんとずるい耳なんだ」
「こういうことでもしないと生きていけないのよ」
なんてセコイ生き方をしてきたんだ。この小娘。
でも、美都はそんな生き方でしか生きていけないのかもしれない。小さなことで生きる価値を見いだすしかないように、小さなことを気にしながら生きていたら生きていけないのだろう。
僕は今まで考えたこともなかった。
「ねえ、まだつかないの?」
「もうちょっとのはず……あ、あったあった。あそこだよ」
「どこよ」
「あそこの…ポツッて建ってるやつ」
「は?もしかして、あの見た目は綺麗だけど明らかに一部屋しかないだろって感じの家?」
「………文句あんのか?ならボウリング場に戻るか?」
「ううん!全然ない!!可愛い家だなぁと思ってたんだよ。うん。もう戻らない」
案外簡単に脅せれた。美都はそんなことされてたまるかと、急いでまくしたてた。
それでも、嬉しそうに家へと走って行った。
美都が言った通り、小さく簡素な家だが、僕たち二人が住む家としては上出来だ。
たしか、月に一度掃除に来てたはずだから中はきれいなはずだ。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
先に中に入っていた美都の悲鳴が聞こえる。
一体何が………!!