令和無色のetc日記

音楽や動画を紹介したり、街を散策して写真を撮ったり、ギターを弾いてみたり、コルク材で絵を描いたり、読書をしたりetc

キタニタツヤ「白無垢」 歌詞の解釈と好きなポイント 狐と葡萄とは?

2020-12-23 20:04:02 | 日記




本日12月23日
キタニタツヤさんの新曲白無垢が配信リリースされました。
実は白無垢30分verを密かに作って、ずっと聞いていました。
今回はリリースを記念して、歌詞の個人的な解釈を披露しようと思います。
なのでこちらの記事はだいぶ長文になっています。


歌詞→解釈→感想の順で展開していきます。


まず楽曲の設定として、
歌詞は破局したカップルの男性目線で書かれています。

1番目冒頭
悲しくもなくただ情けなくて俯いた
轍と足跡で泥まみれの一昨日の雪に苛ついた
手を繋ぎ歩くような綺麗なもんじゃないけれど
走馬灯のような思い出 少しだけ滲んだ

 車の通ったあとに残る車輪の跡
走馬灯 感情が昂ぶると昔の記憶が蘇ること


破局して悲しくもないのは、少し違和感があります。
別れて間もないのではないのでしょうか?
俯いているため足元に視線が行っています。
雪が溶けた後で地面はドロドロ、手を繋いで歩くシチュエーションでは
ないものの、付き合っていた頃の思い出が不意に思い出されて、
少しセンチメンタルになっている。


別に何も変わることはない
詮無い生活が続くだけだぜ
なんて狐と葡萄みたいなこと
吐き捨てるほど 虚しくなるんだな

詮無い 無益 仕方ない、甲斐がない(物事を行ったことに見合う成果がない)
狐と葡萄 自己正当化 負け惜しみ
虚しい 空っぽ、甲斐がない、無駄な

今まで通りの何も変わらない生活をするだけ。
でもそんな強がりみたいなことを考えてると虚しくなる。

この葡萄という不思議なフレーズは、
イソップ童話の「酸っぱいぶどう」の話を指していると思います。

心理学や哲学の分野で適応機制の動機付けの話でよく持ち出される例で
簡単にいえば、なんかしら理由をつけて自分の失敗ではないと言い聞かせる
ことをいいます。

「今まで通り生活していくが続くだけ」というのはこの酸っぱいぶどうの話で
照らし合わせると、負け惜しみ強がりであるように聞こえます。


サビ
いつかの君がまとった白無垢の雪は
暖かで柔い真綿のようでした
今僕の上に降って脆く崩れてく
それは重く冷たい 涙のようなみぞれでした

白無垢 結婚式などで女性が着る和装
みぞれ 雪が溶けて半分雨になってる状態

彼女といた時の情景現在の孤独な光景が対比的に描写されているサビ。

白無垢という言葉を自分はキタニさんが作った言葉だと思っていたら、
和式のウエディングドレスみたいな奴↓のことを白無垢と呼ぶようです。



彼女がいた時は彼女が白無垢を着ているみたいに
ゆっくりふんわりとした雪が降っていたのに、
今自分の頭上に降るのは、涙と錯覚するほど重く冷たいみぞれだった。

「彼女は雪が似合う」っている思い出とその光景を「白無垢」と表現しているところに彼女への愛を感じるし、多分男性目線ではこのまま結婚してずっと一緒に暮らしていくつもりだったのではないでしょうか?


ここの表現、ホントに美しいと思いました。
「涙のようなみぞれ」の部分では、
みぞれの特徴と男性の傷ついた精神状態を同時に表現されてて
鳥肌が立ちました。
歌詞を読む時に描写が頭の中に出来る。




2番

アスファルトの泥を跳ねて
忙しく駆けずる人の群れの中
失うはずのないものを失い
その残滓に縋りついていた

駆けずる  駆け回る走り回る
残滓  残りカス

周囲の人間は忙しそうに歩いている中、自分は彼女のことを引きずっている。
「人の群れの中」という言葉がさらに自分の孤独感を表現してますね。

「失うはずのないものを失い」の部分なんかは、サビの「白無垢」と
繋がっているように聞こえてしまいます。

ここの部分をきいたとき、不思議と「穴の空いた生活を思い出します。
彼女のことを忘れられず、思い出に浸る情景がどちらの楽曲でも
浮かび上がります。



君にそれを告げられた朝
僕の表情は間抜けでいただろう
想像しただけで笑えてくるのに
君は少しも笑わなかったな


君に「別れよう」と告げられた朝、あまりの突然さに間抜けな顔をしていたにもかかわらず、君は全く笑わなかった。

( ;∀;)「本気で別れたかったってこと?」
彼女は真面目に別れたかったのでしょう。



優しい記憶だけ抱いて眠りたいのに
アルコールじゃこの目は冴えてしまうのだ
街を這いずり回ってただ管巻いても 虚しい
君に触れたい

管を巻く どうしようもないことを何度も繰り返し喋ること

彼女との幸せな思い出を思い浮かべて眠りたいのに、
アルコールを飲んでも全然眠れない。
君と来た場所、もしくは君が居そうな場所に行っても君は居ない
君と縒りを戻したい。


自分が思ったのは、この男性は彼女に不満はなかったんだと思います。

だからこそ1番の「狐と葡萄みたいなこと吐き捨てる」とか
「街を這いずり回って管を巻く」という表現が「愚痴をこぼす」という
意味ではないような気がします。

「きっとまた一緒に居たい」と男性側の気持ちを考えると、
「狐と葡萄みたいなこと吐き捨てる」は頭ん中の話で、
「街を這いずり回って管を巻く」は彼女がいそうな場所を辿ること
指しているんだと解釈しました。


ラスサビ
いつかの君がまとった白無垢の雪は
暖かで柔い真綿のようでした
今僕の上に降って痛みをぼかしてくれたのは
重く冷たい 涙のようなみぞれでした

忙しい街の只中なるしめやかさよ

しめやか ひっそりと静か 気分が沈んで悲しげ しんみり

自分に降り注ぐのは、心の傷をぼやかすようなみぞれだった。
慌ただしい街の真ん中でしんみりとしている。

みぞれを見たことがある人ならわかると思いますが、
吹雪よりは穏やかですが、ボソボソした雪がたくさん降ってくるものの、
雪みたいには積もりません。ですが、結構視界が遮られるものです。


歌詞では「痛み」をぼやかしているのですが、
もしかしたら実際のみぞれが降った時のように「視界」をぼやかす、
つまり現実逃避のような意味合いも込められているのかもしれませんね。

深読みのしすぎかもしれませんが、そんな受け取り方も出来る歌詞を書ける
というのは本人でさえ把握しきれていない才能なのかもしれません。


o(`ω´ )o「いかがでしたか?」

解釈にはもちろんこれが正解というものもないですし、
本人がそう考えていたから他の解釈が間違っているというものでもない。

ただ右から聞いて左に流すだけではもったいないので、
暇があったら自分の言葉で楽曲の感想を書いてみてください。
もっとその曲を好きになれると思います。

自分は全体的に歌詞が好きです。
すごく繊細に描写が表現されていて、
自分の中ではこの曲をきくと勝手にアニメーションが思い浮かびます。

特に「君がまとった白無垢の雪」「狐と葡萄みたいなこと吐き捨てる」
という部分は自分でも使ってみたいほどお気に入りの歌詞でした。

それではこの辺で失礼しますm(_ _)m