恐竜(一部翼竜)と鉱物が1枚の切手シートに!!夢のコラボ切手である!ステーキの上にホアグラとトリュフをのせたと想像して頂いても結構である。兎に角、ゴージャス・プレミア丼の感が否めない、スペシャル切手なのである。
現在、我々が目にしている鉱物は数百万年、数千万年の時を経ている。それこそ、恐竜が生きていた時代に形成がはじまり、1億年経って美しい形に出来上がったのだろうと想像できるのだ。それぞれ描かれている恐竜と鉱物がどういったつながりで絵が描かれたのかはわからないのだが、鉱物の「種」ともいえる結晶のはじまりが、恐竜と共に存在していたのだという事を表しているのかもしれない。
ご覧のように、様々な種類の恐竜、翼竜、そして鉱物が描かれている。
まずは上段左の切手から見てみよう。
トリケラトプスの横に”Siderite e Sphalerite ps. Calcite”(「シデライトとスファレライトps.カルサイト」)と書かれた鉱物が描かれている。シデライトは「菱鉄鉱」。スファレライトは「閃亜鉛鉱」である。カルサイトは「方解石」。
ところで、この菱鉄鉱は方解石グループの一つである。方解石の組成式CaCO3のCa部分が鉄になると、菱鉄鉱FeCo3となるのだが、他にもニッケルなどの様々な金属によって置き換わったのが方解石グループの鉱物なのである。
という点を踏まえて、「ps.」という部分が何を意味するのか考えてみた。サントメ・プリンシペはポルトガル語が公用語である。「ps.」を調べてみたが出てこない。何かの略語であることがわかる。「ps」で始まる鉱物用語というのでまっさきに思いつくのが”Pseudomorph”(仮像[かぞう]/仮晶)なのだ。
ここで、方解石グループというのがヒントになるのである。どういう事かというと、似た組成の鉱物は、仮像を形成しやすいのである。化学組成の一部分を置き換えるからだ。
絵を見る限り、形は方解石の犬牙状結晶に似ている。というわけで、ここに描かれているのは、「菱鉄鉱と閃亜鉛鉱、方解石仮晶」ではないかと考えられるのだ。
ちなみに、「仮晶」は2つ持っているので、後でご紹介しよう。(残念ながら私の手元には菱鉄鉱も閃亜鉛鉱も無いので、手に入れたあかつきにはご紹介したいと思うのである。いつかはわからないが・・・。)
続いて右の切手である。
奇妙なフォルムをした翼竜、「バトラコグナトゥス」が描かれている。その下には「パイロモルファイト」、すなわち「緑鉛鉱」が描かれている。緑鉛鉱は、美しい緑色の鉱物なのだが、これまた残念なことに私の手元にない。
バトラコグナトゥス、なんだか非常に気になるので調べてみた。翼竜グッズをデザイン、販売するサイトに、詳しい説明が掲載されていたので、拙訳にてご紹介する。
The tiny pterosaur Batrachognathus volans is known from Upper Jurassic rocks of the Karabastau Formation in the central Asian republic of Kazakhstan. The depositional environment was a warm water lagoon, similar to what's seen in similarly aged rocks of Germany's Solnhofen limestone.
小さな翼竜、「バトラコグナトゥス・ヴォランス」は中央アジアに位置するカザフスタン共和国のKarabastau累層の上部ジュラ紀の岩によって知られている。堆積物によると生息環境は、暖かい沼地で、ドイツのゾルンホーフェンの石灰岩の同時代の岩石に同様に見られるものと似ている。
Batrachoganthus volans was first described in 1948 by Soviet paleontologist Anatoly Riabinin. The name Batrachognathus comes from the Greek words for “frog jaw” and the species name, volans, Latin for “flying.”
バトラコグナトゥス・ヴォランスは1948年にソビエトの古生物学者、アナトリー・リャビーニンによって初めて記述された。バトラコグナトゥスという名前はギリシャ語の「カエルの顎」に由来し、種名の「ヴォランス」はラテン語で「飛んでいる」という意味である。
The name references the short-faced skull with a round jaw seen in the only known specimen. Batrachognathus's delicate skull is incompletely preserved but shows that it had very large eyes set far forward and its jaws had a number of small, conical and slightly recurved teeth. The remainder of the skeleton is incompletely known, but does preserve some vertebrae, portions of the wings, and hind-limbs. Comparison of preserved elements with the same bones in similar pterosaurs shows that Batrachognathus had a wingspan of approximately 50 cm (20 inches).
その名前は、唯一知られている標本に見られる、丸い顎を持った短い頭骨に由来する。バトラコグナトゥスの繊細な頭骨は保存状態があまり完璧ではないが、前向きに離れている大変大きな目を持っており、顎には幾つもの円錐形でわずかに上向きに沿った歯があった事を示している。残りの骨格は不完全にしか知られていないのだが、いくつかの椎骨、翼の一部、そして後肢が残されている。似たような翼竜の同じ骨で保存されているものと比較するとバトラコグナトゥスの翼幅は50cmだったことがわかる。
Riabinin initially described Batrachognathus as being a member of the Rhamphorhynchidae, but noted strong similarities to the short-faced German genus Anurognathus (thought to be a rhamphorhynchid at the time). Subsequent research has confirmed the close relationship of Batrachognathus and Anurognathus as members of the Anurognathidae. Batrachognathus itself appears to be most closely related to the Middle Jurassic Chinese genera Dendrorhynchoides and Jeholopterus. All known anurognathids have short faces and those with preserved hindquarters show that they have short tails.
リャビーニンは始め、バトラコグナトゥスをランフォリンキダエ類の一種であると説明していたが、短い顔のドイツの種であるアヌログナトゥス(当時ランフォリンキダエ類だと思われていた)との非常に似ている点も記載していた。後の調査により、バトラコグナトゥスとアヌログナトゥスが、アヌログナティダエ類としての近縁種であることが確認されている。バトラコグナトゥス自体はジュラ紀中期の中国の種類、デンドロリンコイデスとジェホロプテルスと最も近しい関係であることが明らかになっている。アヌログナティダエ類として知られるすべてが短い顎を持ち、後肢が保存されているものには、短い尾を持っていたことが認められる。
Batrachognathus, like other anurognathids, is thought to have been an aerial insect hunter. They all share a number of adaptations for swift and acrobatic flight and likely pursued insects on the wing like bats, swifts, nightjars, and swallows. Well-preserved anurognathid specimens show that at least some species had long whisker-like filaments around their mouth, similar to what is found in nightjars.
バトラコグナトゥスは、他のアヌログナティダエ類同様、飛行する昆虫を捕らえていたと考えられている。彼らは敏捷かつアクロバティックに飛ぶための適用を幾つも経ており、コウモリやヨタカ、ツバメに似た翼で昆虫を追いかけていた。保存状態の良いアヌログナティダエ類の標本のうち、少なくともいくつかの種類には、ヨタカに見られるような物によく似た、ひげのような繊維が口の周りに認められるのである。
というわけで、バトラコグナトゥスはとても小さな翼竜で、面白い特徴を備えていることがわかった。その顔も想像してみると大変ユーモラスである。
まだまだご紹介したい恐竜と鉱物が満載なので、次回へ続く。
【参考サイト】
・PTEROS http://www.pteros.com/pterosaurs/batrachognathus.html