下記の記事は日刊ゲンダイヘルスケアデジタル様のホームページからお借り紹介します。(コピー)です。
高齢者による自動車事故が相次いでいる。“隠れ認知症”などがその原因だが、それとは別にチェックすべきなのが肝機能だ。
認知症患者は2025年には730万人になるといわれている。大半はアルツハイマー型や脳血管性型など脳疾患による認知症だが、10%を占めるとされているのが、原因不明の認知症だ。
この10%に該当するのが「認知症との鑑別が必要な疾患」とガイドラインに記載される疾患。ビタミン欠乏症、甲状腺機能低下症、神経梅毒、特発性正常圧水頭症、そして肝性脳症で、肝性脳症は「肥満の増加から、特に今後増えるだろう」と注目されている。
「肝機能が低下すると慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんと進んでいきます。このうち肝硬変の段階で起こしやすいのが肝性脳症。初期では睡眠障害、物忘れ、意識障害などがあり、症状が認知症と非常に似ています」
こう指摘するのは、奈良県立医科大消化器・内分泌代謝内科の吉治仁志主任教授。肝性脳症であれば、認知症の薬は効かない。
さらに肝硬変の患者のうち3分の1が、症状がごく軽く、通常の診療では鑑別が非常に難しい潜在性肝性脳症だという。
「肝性脳症は症状の程度によってⅠ度からⅣ度に分類されます。Ⅰ度の前段階が潜在性肝性脳症で、20%が半年以内に症状が進んだⅡ度へ移行するといわれています」
Ⅱ度まで進むと「時間・場所がわからなくなる」「物の取り違え」「お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなどの異常行動」「眠りに陥りがちでうとうとしている」などの症状が顕著になる。交通事故や日常での転倒・転落につながりやすく、こうなる前に手を打つことが重要だ。
■通常の診察では見過ごされる
潜在性も含め肝性脳症を調べる検査は、血液中のアンモニア濃度測定検査と行動で認知機能を測るテスト。後者はランダムに散らばった番号を1から順に線で結ぶ時間を測定するナンバーコネクションテストや、ブロックを見本と同じ組み方に並べるテストなどだ。
「ただし、これらは肝臓専門医が管理している状況では行われますが、現実には実施されずに肝性脳症が見落とされているケースも多い」
肝硬変は前述の通り、慢性肝炎から徐々に進行して発症する。その原因はC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、アルコール。さらに近年は、肥満などアルコール以外の原因が関係して発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も問題視されている。
いずれも定期的に健康診断などで肝機能のチェックをしていれば分かる疾患だが、「分かっていたが無症状なので放置していた」「そもそも知らなかった」という人も珍しくない。認知症を疑う症状があり、肝機能の状態を把握していないなら、検査を受けるべき。
肝性脳症が判明すれば、認知症と違い、薬でコントロールできる。筋肉でのアンモニア代謝を促すBCAA(分岐鎖アミノ酸)、または腸管の中でアンモニアの産生を抑える合成二糖類、または腸管内のアンモニアの産生を抑える難吸収性の抗菌薬だ。難吸収性は、肝硬変の診療ガイドラインの中の「肝性脳症を改善するか」というクリニカルクエスチョン(臨床的課題)に対し、最も高いエビデンスレベルAに位置付けられている。
「“難吸収性”は昨年11月に『リファキシミン』という薬が海外に30年遅れで保険適用になりました。『ニューイングランドジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された文献で、肝性脳症の再発を抑制することが明らかになり、生命予後の改善も別の文献で報告されています」
再発抑制に関しては、投与開始後168日でリファキシミン服用群は約8割が再発していなかったが、プラセボ群では6割を下回った。5年間の生存率では、リファキシミンは約60%で、対称群は20%より下だった。なお、リファキシミンの薬価は1錠200ミリグラム201.9円。1回400ミリグラムを1日3回服用だ。
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