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チンパンジーが教えてくれる、健康な老後の生き方

2021-11-25 12:00:00 | 日記

日経ビジネスオンライン様のホームページより下記の記事をお借りして紹介します。(コピー)です。

この記事はナショナル ジオグラフィック日本版サイトからの転載です
チンパンジーのヨギは、ウガンダの「キバレ・チンパンジー・プロジェクト」で調査している約60頭の野生の個体のうちの1頭。2011年10月に撮影。(PHOTOGRAPH 
 2007年の初めに亡くなった「アンティー・ローズ(ローズおばさん)」は、人類が知る限り、最高齢の野生のチンパンジーだった。推定63歳と、チンパンジーとしてはかなり高齢で、最後の数カ月は困難な生活を送っていた。「体毛はすべて失われ、森の中をはい回っているような状態でした」と、アフリカ、ウガンダのキバレ・チンパンジー・プロジェクトを率いるナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー、エミリー・オタリ氏は振り返る。
 しかし、アンティー・ローズは最後の最後まで、自力で生活していた。チンパンジーは、相手が高齢であっても食べ物を分け合うことはほとんどないので、年老いた個体は自分で食料を探し続けなければならない。オタリ氏によると、チンパンジーも年を取れば活動量が減り、筋肉が衰えるという。「けれど、彼らは私たちよりもはるかに上手に老いと向き合っています。ただ力強く生き続ける。それは見事です」(参考記事:「三つ子の魂百まで、チンパンジーにも該当、研究」)
 一方、米国の研究施設では、飼育するチンパンジーが35歳を過ぎると老年期とみなしてきた。米国では長年、4つの施設が何百頭ものチンパンジーを飼育し、人間の病気を治療・予防するための実験研究を行ってきた。これらのチンパンジーが、心臓病や糖尿病といった、人間が加齢に伴って発症する病気を患うと、研究者たちは、彼らがいかに私たちに似ているかに驚嘆した。(参考記事:「実はこんなに人間的なチンパンジーの母親、3つの研究成果」)
 米国立衛生研究所(NIH)が2015年にチンパンジーの侵襲的研究を中止し、彼らを国内の保護施設に移動させることを決定した時には、60歳に満たない数十頭のチンパンジーが、体が弱っていて移動が難しいと報告された。しかし、チンパンジーたちが弱っていた理由は、実験に使われていたことだけではないのかもしれない。
 野生のチンパンジーやアフリカのサンクチュアリで十分なスペースを与えられているチンパンジーは、実験施設で飼育されていたチンパンジーと比べ、老齢での健康状態が驚くほど良好であることがわかっている。これは、現在もなお飼育下にあるチンパンジーたちをどうケアすべきか、明確な教訓を与えてくれる事実だ。飼育下のチンパンジーの行く末はむしろ、多くの現代人がますます座りっぱなしの生活を送るようになることのリスクについて教えてくれているのかもしれない。
 人間は、「体は自然と弱っていくものだから、必然的に体調も悪くなる」と思い込み、年齢を重ねるごとに非活動的になることが多い。しかし、食べ物を見つけるために1日に何キロも歩かねばならず、病気やケガをしても医療を受けられなかったアンティー・ローズのような野生のチンパンジーでさえ、私たちよりも健康的に年を重ねているように見える。そう話すのは、キバレ・チンパンジー・プロジェクトを共同で率いる、米ニューメキシコ大学の人類学者、メリッサ・エメリー・トンプソン氏だ。
キバレ国立公園のカニャワラ地域の野生のチンパンジーたちは、1987年から観察されていて、霊長類の行動やヒトとの関係についての知見に貢献してきた。
 トンプソン氏によれば、狩猟採集生活を送っている人々は、年を取るにつれのんびりする私たちに比べて、人生の最後まで活発に活動し、長く健康を維持しているとの研究結果が多く出ているという。例えば、タンザニアのハッザ族の人々は生涯にわたって採集を続けるが、年を取っても歩行速度が大きく低下することはない。(参考記事:「ハッザ族 太古の暮らしを守る」)
「弱るのは、活動するからではなく、活動しなくなるからなのです」
野生と飼育下、両方のメリットを享受
 ウガンダのンガンバ島チンパンジーサンクチュアリでは、密猟者の手から保護されたチンパンジーたちが、広い熱帯林の中を自由に動き回っている。年に一度、獣医師がチンパンジーに鎮静剤を投与したうえで健康診断が行われる。これは、老化のプロセスについてのデータを収集する絶好の機会だ。
 米ミシガン大学の人類学者アレクサンドラ・ロサティ氏は、「飼育下での研究から、チンパンジーはコレステロール値が非常に高いと考えられていました」と語る。しかし、同氏らは最近の研究で、ンガンバ島のサンクチュアリのチンパンジーたちは、飼育下のチンパンジーよりもはるかにコレステロール値が低いことを発見した。
 同様に、体重など、心血管疾患のリスクを示す他の指標も、ンガンバ島のチンパンジーの方が低かったとロサティ氏は言う。その理由は、実験用だったチンパンジーたちよりも動き回っているからではないかとのこと。また、実験施設で主食とされていたような栄養価の高いチンパンジー用の食物よりも、野菜や果物(一部は自生しているもの)を多く食べている。
 チンパンジーに老化の兆候が見られないわけではないと、ンガンバ島チンパンジーサンクチュアリでかつて獣医長を務め、現在はその責任者であるジョシュア・ルクンド氏は話す。高齢のチンパンジーには関節の炎症がよく見られるという。「また、チンパンジーは歯に問題を抱えることが多く、繊維質の食物を消化できなくなります。食物が不足すると、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなります」
 しかし、これらの症状のほとんどは治療可能だという。ンガンバ島のチンパンジーは、健やかな老い方という観点から見るならば、野生と飼育下、両方のメリットを享受している。つまり、野生と同じように動き回れるスペースがありながら、食事や医療・健康管理など飼育下ならではの恩恵も受けられる。
 このことは、現在米国のサンクチュアリで飼育されている元実験用チンパンジーや、動物園で飼育されている類人猿などの様々な動物たちを、どのように世話するのがいいか考える上でのヒントになるかもしれない。
野生や野生に近い環境のサンクチュアリで暮らすチンパンジーは、飼育下のチンパンジーと異なって生涯活発に動くため、健康的に年を重ねることができるようだ。
骨や筋肉は「使うか、失うか」
 最近、世界で最もよく知られている類人猿の個体群のひとつから、同様の知見が得られた。ルワンダ北西部の火山国立公園に生息するマウンテンゴリラは、1967年にダイアン・フォッシーが研究を開始して以来、研究対象となっている。その初期から、自然死した野生ゴリラの遺体は、腐肉を食べる動物から守るための特別な檻に入れて埋葬され、将来の研究のために安全に保管されてきた。2008年からは、ナショナル ジオグラフィック協会がこの遺骨の回収と研究を支援している。(参考記事:「ダイアン・フォッシー:彼女が愛し、守ったゴリラたち」)
「100体をゆうに超える、すばらしい骨格のコレクションです」と、米ジョンズ・ホプキンス大学の解剖学者、クリストファー・ラフ氏は語る。これらを調べることで、ゴリラの骨が人間のように年齢とともに弱くなるかどうかを知ることができる。ラフ氏らは最近の研究で、加齢によって骨の強度が低下する骨粗しょう症の兆候を調べたところ、ゴリラの骨においても人間と同じように空洞が広がっていくものの、加齢によって骨の強度が低下することはなく、骨折もまれであることを発見した。
 ゴリラがカルシウムを多く含む植物をよく食べることも理由の一つかもしれないが、最も重要な要因は、やはり身体活動だとラフ氏は考えている。マウンテンゴリラは1日に何時間も座って食事をする。それをテレビで見る私たちも、そのとき、同じように座って何かを食べているかもしれない。しかし、マウンテンゴリラが私たちと違うのは、この地域の特徴である急な斜面を上り下りし、たっぷりと運動をしているということだ。
 これは非常に重要な点だとラフ氏は言う。骨は受ける力に応じて常に作り変えられているからだ。骨や筋肉は機械部品とは違って、使えば再編成や修復が行われ、使わなければ故障した状態になってしまう。「使うか、失うか、そのどちらかなのです」とラフ氏は話す。
引退して若返る
 これは、言い換えれば、運動量を増やすことで弱った体を回復させることができるということであり、新型コロナによるロックダウンのための不摂生から抜け出したい私たちにとっても、良いニュースだと言える。
参考ギャラリー:引退した実験用チンパンジーたちの静かな「余生」 写真6点(画像クリックでギャラリーへ)
米ルイジアナ州にある全米チンパンジーサンクチュアリ、通称「チンプ・ヘイブン」では、引退した実験用のチンパンジーが余生を送っている。(PHOTOGRAPH BY 
 幸いなことに、元実験用チンパンジーたちの多くも、老化した筋肉を再び働かせる機会を得ている。米ルイジアナ州キースビルに2005年に設立されたサンクチュアリ「チンプ・ヘイブン」には、NIHが資金提供した研究所から何百頭ものチンパンジーが移され、実験を引退した彼らが動き回れるような広いスペースが確保されている。(参考記事:「研究室に行ってみた。京都大学野生動物研究センター 熊本サンクチュアリ」)
 ここでは侵襲的な研究が一切禁止されており、チンパンジーの研究を希望する科学者には厳しい条件が課せられている。承認されているのは、高齢のチンパンジーの認知、運動能力、細菌叢など、観察を主とする研究だ。これらの研究の中には、将来、人間の健康に役立つものもあるかもしれない。しかし、現在サンクチュアリが優先するのは何よりも、チンパンジーたちの幸福な生活である。
[ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2021年7月14日掲載]情報は掲載時点のものです。



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