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「南アでピークアウトしたから日本でも」は本当か?

2022-02-05 10:00:00 | 日記
下記の記事はヨミドクター様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

外的妥当性について考えてみよう


南アフリカのオミクロンが早期に収束したから、日本のオミクロンも早期に収束するだろう。そういう意見をあちこちで耳にします。そうなればよいとは思いますが、そうなるとは限らないのが、難しいところです。
これはつまり、「他人に起きることは、自分に起きるとは限らない」という話です。専門的に難しく言えば、「外的妥当性(がいてきだとうせい)」ということです。
外的妥当性とはどういうことか。
例えば、ある人のある病気にAという薬を使いました。患者さんがよくなりました。別の患者さんが同じ病気でやってきました。はたしてAという薬は効くでしょうか。
このとき、この患者さんにもAという薬が効くのであれば、外的妥当性はあり、ということになります。しかし、前の患者さんでは効いたのに、次の患者さんでは効かなかった場合は、これは外的妥当性がなかった、ということになります。
厳密に言えば、ぼくらはみんな、別々の人で、一人として「まったく同じ」な人物はいません。たとえ一卵性双生児であったとしても、生まれた後の生活はまるで同じ、ではありませんから、この双生児の二人も「別の人」です。よって、「あの人に起きたことがこの人に起きる」、100%の保証はどこにもありません。
南アで感染が収束した特有の理由とは

ましてや、国レベルとなると、かなりバラバラです。僕は南アには2回、短期訪問しただけで、そんなに詳しいわけではないですが、それでもデータを比べてみると日本と随分違う国なのが分かります。例えば、 かなり高齢者が少ない、とか。
南アがオミクロンに対して、何もしなかったわけではありません。 昨年末までは夜間外出禁止令を出していましたし、現在もロックダウンレベル1ということで、一定の集団形成の禁止など、様々な社会抑制策を取り続けています。
南アが「何もしなくても」「自然に」オミクロンを制圧したわけではないのです。 地域的にもヨハネスブルクのあるハウテン州中心の感染だったことも幸いしたのかもしれません。
そんなわけで、南アはオミクロンをうまく抑え込んだのですが、「だから日本もそうなる」とは限らないのです。もっとも、同じ理由で「日本は南アとは異なる帰結をたどる」と断定もできないのですが。
英国では下げ止まり傾向 流行の経過は各国各様
そこで、 英国です。英国も南ア同様、オミクロンの激しい感染爆発が起きました。そして南ア同様、わりと速やかにピークアウトしたのですが、そのピークアウトもさーっと下がっていくのではなく、下げ止まり、停滞状態が起きています。
 英国と似たような時期に流行拡大が起きたフランスでは、英国のようなピークアウトはしませんでした。 ずっと患者が増え続けたのは、ゆるい感染対策のためだったのでしょう。ここ数日でようやくピークを越えた感がありますが、あまりにピークが高すぎたので、これが収まるには相当時間がかかりそうです。
というように、感染の経過は各国各様です。これは、流行がオミクロンの特徴のみならず、「人の活動のありかた」も加味されて決定されるからです。そりゃ、そうですよね。人の活動と感染の流行が全く無関係、というのなら、僕らが感染対策をするのは全くのムダ、ということになりますから。
南アと英国とフランスと日本では人口動態も違いますし、各国の感染対策も、国民の防護態度も異なります。あちらで起きることがこちらで起きるとは限らない、は当然なのです。
感染力が強く重症化しにくい特徴は共通


じゃあ、外的妥当性なんて、言っても仕方のないことだよん、とニヒルになってはいけません。外的妥当性を担保する条件は、それなりにあるのです。
例えば、再現性です。異なる条件でも繰り返し観察される出来事は、外的妥当性が高まります。
南アでも、英国でも、フランスでも、日本でも、その他の国でも、オミクロンは感染力が強く重症化しにくいことが分かっています。あと、ワクチンを打っていない人よりも2回打っている人の方が感染しにくく、3回打っている人はさらにかかりにくいことも分かっています。
条件が違う複数の地域で同じ現象が繰り返し再現されれば、それは「一般法則」として採用し、外的妥当性を活用したほうが便利です(厳密に言えば外的妥当性は完全には保証されていないのですが、そういうポパー的な議論は現場的には役に立たないので、ここでは棄却します。役に立つのが、大事です)。
「2回接種なのに入院」が多いのは分母の人数が多いため
そうそう、こんな話をすると、「病院に入院してるオミクロン患者はほとんどワクチン2回打ってるらしいやんけ。ワクチンなんか効かへんわ」と怒られることがあります。が、これは分数の数え間違え。確かに、「入院患者」を分母にすると、ワクチン2回群が最多となるのですが、これは日本ではワクチンを2回打ってる人がめっちゃ多いという、ただそれだけの話です。
 「ワクチンを何回打った」を分母にして、「ワクチン2回接種群の感染率」「ワクチンを打っていない群の感染率」という数え方をすると、ワクチンを打ってない群の方が感染率は高いです。 分数を扱うときは、分母に注意する。基本です。
最良の策はブースター接種


このように、「外的妥当性が使えるもの」と「使えないもの」があります。「あちらで起きたことが、こちらでも起きる」のか、「そうとは限らない」のかを、区別できることがとても大事なのです。
さて、第6波が「さっと」静まってみんなが楽になるか、それともなかなかピークアウトせずに中長期戦を強いられるかは、我々次第です。ウイルスの方は変えられませんから、ヒトの方が変わるしかないのです。
まずは、3回目のブースター。接種できるチャンスがあれば、これを活用するのが最良の手です。
一般に、感染力が強くなればなるほど、「普通の」感染対策の効果は目減りしていきます。そして、ワクチンの効果が相対的に強くなります。感染力の強い病原体ほど、ワクチンが効力を発揮するのです。前回も同じことを言いましたが、大事なことなので繰り返します。最良の策は、ワクチンです。
重症者や死亡者は増えている
あとは、結構、難しい。社会全体に抑制をかけるほど、オミクロンの病原性は高くない。しかし、だからといって、ぶらりノーガードでほったらかしにしていると、感染爆発が起きて重症者や死亡者は少しずつ増えていきます。数週遅れで。時間をずらして。
今回の波でも「重症者全然出てないやん、死亡者全くいなかったやん」という主張をするインフルエンサーがいましたが、この話は何度繰り返せば……。
厚生労働省のデータを見ても、重症者・死亡者は増えています。今後もしばらくは増え続けるでしょう。
ただし、英国やフランスがそうだったように、絶対的な重症者数・死亡者数は、第3、4波のそれより小さくなる可能性が高いです。可能性が高いので、そのようなシナリオに流行を収める必要があります。強すぎず、弱すぎない、中くらいの感染対策です。
新たな変異株のタイプは予想できず

さて、予想できないことが一つあります。それは、新たな変異株の誕生です。
いや、変異株が誕生すること「そのもの」は容易に予想できるのですが、これが「いつ」「どこで」誕生し、どのような変異株になるのか。これは全く予測できません。地震や津波の発生予測にちょっと似ているかもしれません。
変異株が誕生するたびにウイルスは弱毒化するという、これまたインフルエンサーが言いそうな説がありますが、この話は根拠薄弱です。
事実、ワイルドタイプから発生したアルファ株やその後出てきたデルタ株は、むしろ病原性が高まり、重症化しやすかった可能性があります(論文によってデータがいろいろなので決着がついていません)。
ウイルスが弱毒化するというのは一つのシナリオに過ぎず、そうなるという保証はどこにもないのです。ここでも外的妥当性の適用可能性の検証は必要です。オミクロンでそうだったから、次もそうだとは言えないというわけで。
いずれにしても、今回紹介した「外的妥当性」の概念は、めっちゃ重要です。このことだけ知っておけば、日々のニュースや、インフルエンサーの主張の見方が、少し変わると思いますよ。(岩田健太郎 感染症内科医)

岩田健太郎(いわた・けんたろう)
神戸大学教授
1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。

下記の記事は日刊ゲンダイヘルスケアデジタル様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

3回目接種「あり」の症状が出る確率は「なし」より66%低くなる 米で論文が

 オミクロン株によるアメリカのコロナ感染はピークを越えましたが、先週の時点で1日の死者が2400人と、昨年のデルタ株の記録を更新。まだまだ予断は許しません。そんな中「ブースターショットがオミクロン株に効果あり」というアメリカ人の実感が数字で証明されました。

 アメリカのコロナの99%はオミクロン株に置き換わり、ワクチンを打っていても感染するブレークスルー感染が当たり前になっていますが、CDC(米疾病対策センター)がその状況下で数百万人のデータを分析しました。それによるとブースターが入院を防ぐ確率は90%、それに比べ、ブースターなしで2回目から半年経っていた場合は57%。また、ブースターありだと医者にかからずにすむ確率は82%、なしだと38%。さらに10万人当たりの感染は、ブースターありだと149人、なしだと255人という結果でした。

 さらにJAMA(米国医学会雑誌)に発表された別の論文では、ブースターショットを打っていた場合に症状が出る確率を1万3000人を対象に調査した結果、症状が出る確率はブースター「あり」は、「なし」に比べ66%低いことがわかりました。
アメリカでは12歳以上ならブースターを打つことができますが、実際に打ったのはその5割にとどまっています。でもこの数字を見る限り多くの人は今回ブースターに救われたと言えそうです。

一方で、2回のワクチンを完了していない人も人口の4割近くいて、それが死者や重症者の数につながっています。

ただ、気になるのはニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された記事で、オミクロン株に対しては今のブースターショットの効力も半年後には落ちてくるとのことで、4回目の接種が現実味を帯びてきました。

一方、モデルナとファイザーがオミクロンに特化したワクチンを開発中で、すでに臨床実験の段階と報告されています。またあらゆる変異種に効果がある万能ワクチンも開発されていますが、こちらはまだまだずっと先になりそう。いずれにせよ今後かなり長い間コロナとワクチンとの共生が続くのは間違いなさそうです。
シェリー めぐみ
ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター
横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。


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