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骨密度は加齢とともに低下していきます。何も対策をせずにいると、骨粗しょう症になってしまう危険性大。 毎年10月20日は世界骨粗鬆症デーです。「骨力」をアップするコツを専門家に聞きました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/葛西由恵《インパクト》)
進行すると、骨折などのリスクが増す
骨は知らず知らずのうちにもろくなっていくことをご存じですか?
「45歳くらいまでは女性も男性も同じくらいの骨密度を保っているのですが、女性の場合、閉経の5年前から急激に骨密度が減り始めます。その原因は、骨の破壊を抑制する働きがある女性ホルモン・エストロゲンの減少です」と説明するのは、川崎医科大学総合医療センター産婦人科特任部長の太田博明先生。
20~44歳の健康な人の腰よう椎つい骨密度(若年成人平均値)と比べて、どのくらい減ったかを示す数値が「YAM」です。YAMが80~70%になると
「骨粗しょう症予備群」とされ、70%以下になると「骨粗しょう症」と診断されます。
「平均的な日本人女性の場合、腰椎骨密度は50代でYAM80%まで低下。その後、何も予防をしないと、年齢とともにさらに下がっていき、60代では3人に1人、70代以上では2人に1人が骨粗しょう症になってしまうのです」(太田先生。以下同)
加えて、骨密度の低下が進むと、日常生活のちょっとした動作で骨折する危険性が高まると指摘します。
「骨密度の低下は自覚症状がないまま進行するため、骨折してはじめて骨粗しょう症だとわかる人が多いのが実情です。60代では背骨の圧迫骨折を起こす人も増加。背骨の椎体が1つ潰れると、2つ目、3つ目と連鎖的に骨折を引き起こすことも少なくありません」
なかには転んだ拍子に大腿骨を骨折し、そのまま寝たきりになってしまうケースも。
「大腿骨を骨折した場合の5年生存率は約50%です。これは大腸がんや胃がんの5年生存率よりも低い数字。骨粗しょう症は、命にはかかわらない病気というイメージがあるかもしれませんが、軽視するとがんよりも怖い病気なのです」
まずは、自分の骨の状態を把握するために、必ず骨検診を受けてほしい、と太田先生は強調します。
運動で骨に刺激を。
予防的治療も検討して
予防のポイントになるのが食事と運動です。
「毎日の食事で骨を作る材料となるタンパク質、カルシウム、そしてカルシウムの吸収に必要なビタミンDの摂取を心がけてください。もっと大切なのが、運動です。ウォーキングなどの有酸素運動は、生活習慣病の予防には効果的ですが、骨を作る意味では、やや刺激が不足しています。例えば、床の上でジャンプするなど、骨に少し強めの振動が伝わる運動が有効。骨を作る骨芽細胞が活発に働くようになるのです」
また、予備群の段階で積極的に治療することも大事。
「骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する『骨吸収抑制剤』や、骨の形成を促す『骨形成促進剤』などの薬を病態に合わせて使い分けます。女性ホルモンを補充する治療も効果的です。最近の新薬では、10年間の治療で、脊椎なら20%ほど骨密度を高められます。これまで骨粗しょう症は、老化現象としてあきらめなければならない病気でした。しかし今は、積極的な治療をすることで、治せる病気になっているといっていいでしょう」
骨にいい生活と早めの治療を心がけ、骨貯金を減らさないことが人生後半をすこやかに過ごすコツといえそうです。
次ページから、強い骨を作る生活習慣について紹介します。
骨力をアップする3つの生活習慣
1)刺激を与えて、新しい骨の成長を促して
丈夫な骨にするためには、骨に刺激を与える運動が不可欠だといいます。
「かかと落としは、家の中でも外出先でも、ちょっとした隙間時間にできるのでおすすめです。毎日行いましょう。ミニジャンプは、さらに強めの刺激を与えられる運動です。そのほか、踏み台昇降、なわとびなども適しています」(太田先生。以下同)
〈かかと落とし〉
すべての写真を見る
かかとを上げてつま先立ちになり、かかとをストンと床や地面に落とす。不安定な場合は、イスの背もたれにつかまって行いましょう。(1日30~50回)
〈ミニジャンプ〉
高さ10cm程度の台を用意し、両足を揃えて乗る。軽くジャンプして、台から下りる。(1日30~50回)
※膝に痛みがある場合などは、無理に行わないようにしましょう
2)筋トレでバランス力を強化
骨に振動を与える運動に加えて、筋トレも効果的。
「筋肉が増えると、骨が作られるサイクルが活発化します。ダンベル体操やスクワットといった運動で筋力強化を図りましょう。筋肉を鍛えることは、体の柔軟性やバランス力を高めることになり、転倒防止にもつながります」3)食事で
「タンパク質」「カルシウム」「ビタミンD」を摂取
「日本人女性は、骨の健康を守る栄養素であるタンパク質、カルシウム、ビタミンDが不足しがち。カルシウムの補給には、牛乳が効率的です。ビタミンDは魚類、とくにサケに豊富に含まれます。カルシウムやビタミンDをサプリメントで補う場合は、規定量をしっかり守ってください」
ビタミンDは、紫外線に当たると皮膚で大量に生成されるそう。
「ウォーキングや散歩など、なるべく外に出て太陽の光に当たりましょう」
\早めの検査で骨密度を知ろう/
QUS法 …超音波をかかとの骨に当てて骨の質を評価する
MD法 …両手のX線を撮影して手の骨密度を測定する
DXA法 …X線で腰椎や大腿骨の骨密度を測定する
「QUS法は、自治体の検診などでも広く用いられますが、骨密度そのものを測っているわけではなく、あくまでも目安です。MD法とDXA法は、診断にも用いられる検査法で、MD法よりもDXA法のほうが信頼性が高い検査法。ただし、設備がある病院が少ないので、かかりつけ医に相談するか、人間ドックのオプションなどを活用しましょう」
出典=『婦人公論』2021年10月26日号
太田博明
川崎医科大学総合医療センター産婦人科特任部長、同大学産婦人科学2特任教授、医学博士
骨密度は加齢とともに低下していきます。何も対策をせずにいると、骨粗しょう症になってしまう危険性大。 毎年10月20日は世界骨粗鬆症デーです。「骨力」をアップするコツを専門家に聞きました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/葛西由恵《インパクト》)
進行すると、骨折などのリスクが増す
骨は知らず知らずのうちにもろくなっていくことをご存じですか?
「45歳くらいまでは女性も男性も同じくらいの骨密度を保っているのですが、女性の場合、閉経の5年前から急激に骨密度が減り始めます。その原因は、骨の破壊を抑制する働きがある女性ホルモン・エストロゲンの減少です」と説明するのは、川崎医科大学総合医療センター産婦人科特任部長の太田博明先生。
20~44歳の健康な人の腰よう椎つい骨密度(若年成人平均値)と比べて、どのくらい減ったかを示す数値が「YAM」です。YAMが80~70%になると
「骨粗しょう症予備群」とされ、70%以下になると「骨粗しょう症」と診断されます。
「平均的な日本人女性の場合、腰椎骨密度は50代でYAM80%まで低下。その後、何も予防をしないと、年齢とともにさらに下がっていき、60代では3人に1人、70代以上では2人に1人が骨粗しょう症になってしまうのです」(太田先生。以下同)
加えて、骨密度の低下が進むと、日常生活のちょっとした動作で骨折する危険性が高まると指摘します。
「骨密度の低下は自覚症状がないまま進行するため、骨折してはじめて骨粗しょう症だとわかる人が多いのが実情です。60代では背骨の圧迫骨折を起こす人も増加。背骨の椎体が1つ潰れると、2つ目、3つ目と連鎖的に骨折を引き起こすことも少なくありません」
なかには転んだ拍子に大腿骨を骨折し、そのまま寝たきりになってしまうケースも。
「大腿骨を骨折した場合の5年生存率は約50%です。これは大腸がんや胃がんの5年生存率よりも低い数字。骨粗しょう症は、命にはかかわらない病気というイメージがあるかもしれませんが、軽視するとがんよりも怖い病気なのです」
まずは、自分の骨の状態を把握するために、必ず骨検診を受けてほしい、と太田先生は強調します。
運動で骨に刺激を。
予防的治療も検討して
予防のポイントになるのが食事と運動です。
「毎日の食事で骨を作る材料となるタンパク質、カルシウム、そしてカルシウムの吸収に必要なビタミンDの摂取を心がけてください。もっと大切なのが、運動です。ウォーキングなどの有酸素運動は、生活習慣病の予防には効果的ですが、骨を作る意味では、やや刺激が不足しています。例えば、床の上でジャンプするなど、骨に少し強めの振動が伝わる運動が有効。骨を作る骨芽細胞が活発に働くようになるのです」
また、予備群の段階で積極的に治療することも大事。
「骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する『骨吸収抑制剤』や、骨の形成を促す『骨形成促進剤』などの薬を病態に合わせて使い分けます。女性ホルモンを補充する治療も効果的です。最近の新薬では、10年間の治療で、脊椎なら20%ほど骨密度を高められます。これまで骨粗しょう症は、老化現象としてあきらめなければならない病気でした。しかし今は、積極的な治療をすることで、治せる病気になっているといっていいでしょう」
骨にいい生活と早めの治療を心がけ、骨貯金を減らさないことが人生後半をすこやかに過ごすコツといえそうです。
次ページから、強い骨を作る生活習慣について紹介します。
骨力をアップする3つの生活習慣
1)刺激を与えて、新しい骨の成長を促して
丈夫な骨にするためには、骨に刺激を与える運動が不可欠だといいます。
「かかと落としは、家の中でも外出先でも、ちょっとした隙間時間にできるのでおすすめです。毎日行いましょう。ミニジャンプは、さらに強めの刺激を与えられる運動です。そのほか、踏み台昇降、なわとびなども適しています」(太田先生。以下同)
〈かかと落とし〉
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かかとを上げてつま先立ちになり、かかとをストンと床や地面に落とす。不安定な場合は、イスの背もたれにつかまって行いましょう。(1日30~50回)
〈ミニジャンプ〉
高さ10cm程度の台を用意し、両足を揃えて乗る。軽くジャンプして、台から下りる。(1日30~50回)
※膝に痛みがある場合などは、無理に行わないようにしましょう
2)筋トレでバランス力を強化
骨に振動を与える運動に加えて、筋トレも効果的。
「筋肉が増えると、骨が作られるサイクルが活発化します。ダンベル体操やスクワットといった運動で筋力強化を図りましょう。筋肉を鍛えることは、体の柔軟性やバランス力を高めることになり、転倒防止にもつながります」3)食事で
「タンパク質」「カルシウム」「ビタミンD」を摂取
「日本人女性は、骨の健康を守る栄養素であるタンパク質、カルシウム、ビタミンDが不足しがち。カルシウムの補給には、牛乳が効率的です。ビタミンDは魚類、とくにサケに豊富に含まれます。カルシウムやビタミンDをサプリメントで補う場合は、規定量をしっかり守ってください」
ビタミンDは、紫外線に当たると皮膚で大量に生成されるそう。
「ウォーキングや散歩など、なるべく外に出て太陽の光に当たりましょう」
\早めの検査で骨密度を知ろう/
QUS法 …超音波をかかとの骨に当てて骨の質を評価する
MD法 …両手のX線を撮影して手の骨密度を測定する
DXA法 …X線で腰椎や大腿骨の骨密度を測定する
「QUS法は、自治体の検診などでも広く用いられますが、骨密度そのものを測っているわけではなく、あくまでも目安です。MD法とDXA法は、診断にも用いられる検査法で、MD法よりもDXA法のほうが信頼性が高い検査法。ただし、設備がある病院が少ないので、かかりつけ医に相談するか、人間ドックのオプションなどを活用しましょう」
出典=『婦人公論』2021年10月26日号
太田博明
川崎医科大学総合医療センター産婦人科特任部長、同大学産婦人科学2特任教授、医学博士
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