下記の記事をプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
「老人ホーム」はなにを基準に選べばいいのか。老人ホームコンサルタントの小嶋勝利さんは「空室の多いホームは難ありである可能性が高い。また質の高い老人ホームほど、職員教育に力を入れている。組織図をみて、職員教育の専門部署の有無を確認するといい」という――。
※本稿は、小嶋勝利『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
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いつでも空室を抱えているホームはダメ
老人ホームには二つあり、それは、相性が良いホームと悪いホームです。これが私の持論です。しかしながら多く人は、そうは言っても「相性だけでなく、客観的に良いホームはあるはずだ」と考えるのではないでしょうか。では、その「良いホーム」とは何か。その解説をしていきましょう。
入居率、入居維持率の双方が高いホームは、一般論として「良いホーム」と考えて問題はないと、私は考えています。逆に、何時までたっても、空室ばかりのホーム、いつでも多くの空室を抱えているホーム。このようなホームは、悪いホーム、ダメなホーム、と言ってよいはずです。
老人ホームの入居基準、受け入れ態勢は、きわめて曖昧で、介護看護職員に大きく左右されます。そうである以上、次のようなことが言えます。
能力の高いホーム長や施設長、介護職員や看護職員が働いているホームは、どのような状態の入居者でも受け入れることができるので、その結果、空室は少なくなります。
逆に、空室がなかなか埋まらない老人ホームは、配置されている職員の質が低いため、“多少難あり”という入居者の受け入れを拒絶してしまいます。空室が多いホームは問題アリのホームなのです。
良いホームは受け入れる前提で検討してくれる
良いホームとは空室がないホーム、という理解でかまいません。したがって、良いホームに自分の親を入居させたいと考えているならば、空室のないホームを探して入居させるということになります。
空室のないホームは、空室待ちのホームです。空室があったからといって、これ幸いと急いで入居することはお勧めできません。
多少、考慮しなければならないことは、入居希望者の身体状態の評価について時として、医療と介護の立場の違いによって、議論が起こることです。この人に入ってもらっていいのかどうか、判断が割れるケースがあるのです。
私の経験で言うなら、ダメなホームは、入居を断る方向で双方が調整に入り、良いホームは、多少難のある入居者ではあっても、どうすれば自分たちのホームで受け入れることが可能なのかを考える、という違いがあるということです。
組織図に職員教育の専門部署があるか確認しよう
もう一つ、良いホームの条件を記しておきます。
ほとんどの人が、ホーム選び時に際してほぼ無視していることですが、良い老人ホームは、職員教育に力を入れています。
ちなみに、ホームに対して「職員教育に力を入れていますか?」と聞けば、「もちろん、力を入れています」と、どのホームも回答します。しかし、私が知る限りはその逆で、多くのホームは「職員教育」に力を入れていません。正確に言うと、「職員教育どころではない」というのが本音だと思います。
外から見て、どんなホームが職員教育を熱心にやっているのかといえば、ホームや会社の組織図が確認でき、「教育部」「指導部」のような専門部署があるかどうかです。
さらに、その部署が、どこにあるかも重要です。教育に熱心なホームでは、社長など経営者の直下に置いているケースもあります。これは、「介護職員の教育は、社長である自分が直接、関わっていく」という強い意志の表れです。
もちろん、絵に描いた餅であることも少なくはないため、ちゃんと機能しているかどうかの確認は必要ですが、それは、施設長やホーム長をはじめとする現場職員と話をすれば、おおむね判断することができるはずです。
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老人ホームにおける職員教育が重要なワケ
私が老人ホームにおいて、なぜ「教育部」という組織の存在が重要だと言っているのか、おわかりになりますでしょうか?
多くの老人ホームの場合、老人ホーム内で介護や看護業務を実施しています。そして、その介護と看護業務を実施している者が現場職員です。当たり前のことです。
つまり、現場職員は、ホーム内で提供される介護看護業務の「質」そのものだと言っても過言ではありません。現場職員の質が高ければ、そこで提供されているサービスの質も高い、という当たり前の事実がここにあります。
介護サービスの質を上げるには、介護職員の質を上げるこが何よりの大切、ということになるのです。そして、それを日夜、指導、教育をしている組織が恒常的に存在しているとことが重要になるのです。
空室待ち物件にアプローチする2つの方法
空室のないホームはよいホーム。それでは、どのようにして、空室のないホームに入居をすればよいのでしょうか。方法は2つあります。
1つは、事前に予約をしておく方法です。「空室が発生したら連絡ください。必ずホームに入りますから」と言っておけばよいのです。もちろん、この場合の「空室が出たら」とは、死亡退去のことを指します。つまり、今、入居している誰かが亡くなって空室が出たら連絡をもらう形です。もちろん、多くのケースでは、在宅でそのホームの空室を待つことができないでしょうから、自宅で待機するのではなく、他の場所で待機することになります。
老人ホームの入居者の中には、最終的には「特養ホーム」に行きたいという希望を持つ人が多くいます。つまり、特養ホームの待機場所として、老人ホームに入居しているのです。理由は明確。価格が安いからです。その人が退所した場合にも空室ができます。
事前予約で良いホームに入るためには、当然、当該ホームのことをよく理解しておくことが重要です。そのために実践しなければならないことは、ホームの見学とホーム長、施設長、さらには介護や看護職員との面談です。
しかも、何度も見学や面談をするべきです。中には、当該ホームにボランティアとしてかかわり、ホーム内のことを理解する努力をしている方もいます。介護職員、看護職員など、どのような人たちなのか? ここの評価が一番重要になります。
もう1つの方法として、友の会のような会員組織に入会するというパターンがあります。これは予約ではなく、当該老人ホームのファンクラブに入会するというイメージです。一定の時間をかけて、入居予定のホームのことを理解していくことができます。
そして、一番大切なことは、この2つの行動は、要介護状態になる前から準備をしなければならないという点です。老人ホームに親を捨てるという考えであれば、難しいでしょう。親と一緒に老人ホームのこと、介護のこと、を考えていくことが、重要なのです。
このような労力に値するホームは、自身の予算に見合ったホームであるということは当然の話です。現実的なレベルで考えていかなければなりません。
老人ホーム選びで口コミは訳に立たない
例を挙げて説明します。ある人の口コミです。
「Aホームは、ひどいホームです。介護職員はたくさんいるにもかかわらず、近くで着替えをしている入居者がいても無視。よく見ると、その入居者は手が不自由で、必死の形相で洋服の着替えに悪戦苦闘しています。気の毒に見えました。しかし、介護職員は、そんな入居者のことなどおかまいなしで、反対側の入居者とたわいもない話を笑顔でしています。何度もチラチラ見ているので、着替えで困っているということは認識していたはずです。ひどい介護職員です。こんなホームに親を入れると大変です」
こういう口コミだったとしましょう。
介護に対する知識と教養を持っていない人が、この文面を見れば、「ひどい介護職員」だと考えるはずです。しかし、私はこう考えます。このホームは自立支援が売りのホームです。特に、このホームの自立支援は、残存機能を維持していくことに力を入れています。本人が、あきらめない限り、このホームでは残存機能をフルに使うことを「良」としています。したがって、手伝うことはしません。手伝うケースは、本人がギブアップした時だけです。
もし、こういう情報や知識が事前に知っていたら、この口コミの評価はどう変わるでしょうか? 何度もチラチラ見ていたということは、気にかけて様子を伺っていたとのでしょう。つまり、私のような専門家からすればそのホームは、ひどいホームとかひどい介護職員という評価にはなりません。むしろ、自立支援に真剣に取り組んでいるホームということになります。口コミを信じてしまうと、本当の姿が見えなくなることが多いのです。
体験入居やショートステイはいつもと違う営業モード
体験入居も、あてにはなりません。老人ホームでは「まずは体験入居をしてみてはどうでしょうか?」という提案をしています。その提案に対し、多くの入居相談者は「なるほど」と共感し、体験入居に進みます。そして「このホームでいいんじゃない」という結論に至り、入居を決めてしまいます。
小嶋勝利『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社)
また、体験入居とほぼ同じ意味合いで「ショートステイ」というものがあります。ショートステイとは、数日から1週間程度を目安に、当該ホームにステイすること。体験入居と違うところは、料金体系です。
体験入居やショートステイは、ホーム側からすれば営業目的です。不快な思いをさせないよう、気を使います。実は、多くの職員には歓迎されていないのです。この制度や仕組みを前向きには受け止めていません。理由は手間がかるからです。職員は、可能な限り業務を平準化している為、いつもと違うことに対する違和感は、かなりのストレスになります。
さらに、体験入居者、ショートステイ入居者に対する支援で労働比重が重くなるため、本入居で何カ月間も住んでいる入居者に対する支援が手薄になってしまいます。体験入居の時はすぐきてくれたのに、本入居になったとたん、ナースコールを鳴らしても、忙しければ「待たされる」という現象が起きます。
だから、体験入居などでホームの介護実態を知ることは、無意味なことだと私は考えています。
老人ホームコンサルタント
神奈川県生まれ。長年、大小さまざまな老人ホームに介護職員や施設管理者として勤務後、有料老人ホームのコンサルティング会社AFSONを設立。介護施設紹介センター大手「みんかい」の経営スタッフとして活躍中。(株)ASFON TRUST NETWORK常務取締役。公益社団法人全国有料老人ホーム協会業務アドバイザー。著書に『誰も書かなかった老人ホーム』『老人ホーム リアルな暮らし』(共に祥伝社)、『老人ホームの金と探し方』(日経BP)、『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)など。
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