アオとホシに 乗る 2012-07-09 | 馬 アオとホシに 乗る えみと源ちゃんが アオに乗り りえと啓ちゃんがホシに乗った。 二頭の馬が ならんで 田んぼの道を 歩く姿が よく 見られるようになった。 ヒシの実や フナをわけるとき 猛ちゃんは ないしょで 源ちゃんに よけいに あげた。 そのかわりに アオにのせてもらった。 健ちゃんも 啓ちゃんにたのんで りえといっしょに ホシにのった。 P.93
猛ちゃんが うたれた 2012-07-09 | 馬 猛ちゃんが うたれた 猛ちゃんの頭から どくどくと 血が 流れだしていた。 猛ちゃんの下で 健ちゃんが 気絶していた。 猛ちゃんの血で 健ちゃんの顔も まっ赤だった。 なげだされた 猛ちゃんの 手の そばで キキョウが 風に ゆれていた。 猛ちゃんが かり残したものかも しれなかった。 P.102
八月十五日の夕日 2012-07-09 | 馬 八月十五日の夕日 戦争が 終わった。日本が まけた。 子どもたちは みんな 気をつけの姿勢で 校長先生の話を 聞いていたが なくものは だれもいなかった。 「猛ちゃんがうたれてから まだ 四十九日にも なっちょりゃあせん」 だれかが 小声でいった。 そのとたんに すすりなきの声が うねりのように 子どもたちのあいだに ひろがった。 だれが いい出すともなく 猛ちゃんのお墓のある 山にいった。 はりつめた胸から きゅうに 空気が ぬけたようだった。 西の山に 大きな太陽が しずんでいった。 P.110
啓ちゃん びんぼう柿の熟柿を もぐ 2012-07-09 | 馬 啓ちゃん びんぼう柿の 熟柿を もぐ ヤマブドウも ビンボウ柿も ミミダカ柿も 小さな実の中に 大きなたねが ぎっしりつまっていて 食べるところは ちょびっとしかなかったが 山行きは 子どもたちの 秋の 楽しみの一つだった。 どの家にも 大きな実のなる しぶ柿が 一本か二本あって ほし柿にしたり 熟柿にしたりした。 それは それで おいしかったが 友だちといっしょに 山で食べるヤマブドウや ビンボウ柿や ミミダカ柿の味は また かくべつだった。 P.114
ミミダカ柿を ザルで うける 2012-07-09 | 馬 ミミダカ柿を ザルで うける 茶づけたちは ふろしきを まえかけのように 腰にしばって 受けとめた。 ろこと蘭子は ふろしき組だったが 家には 子どもが使える ふろしきが なかった。 二人は おばあちゃんから もらった 古いドンゴロスの 両はしをもって ひろげた。 ふくろの まんなかに あなが あいていたが じょうずに あなをよけて 柿をうけとめた。 ときどき 健ちゃんが 大きなザルを かしてくれた。 健ちゃんの家の 台所で使う 茶わんめごだった。 P.117