「日本維新の会」国政進出 「八策の下結集」 理想と打算交錯
■TPP慎重派参加/公明推薦前のめり
橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」がいよいよ、国政進出の号砲を放った。「既成政党の打破」を掲げ、次期衆院選での勢力拡大と政権獲得を目指す。その支柱になるのが基本政策「維新八策」であり、橋下氏は「集団(維新)をまとめるための軸」ともいう。しかし、政策を軸に政治を動かす「理想」と、打算が渦巻く「現実」とのギャップが早くも表面化している。(今堀守通)
「価値観を一緒にしないと、困難を一緒に乗り越えていけない。既存の政党では決定できないようなことが、維新八策の下に集まったメンバーなら決定できる」
維新八策の意義をこう訴える橋下氏は、とりわけ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題を強調する機会が多い。「農協改革なんて自民も民主もできない。TPPに賛同できる人は農協改革も賛同できるメンバーだ」として、既成政党との対立軸になる政策だというのだ。
一方、大阪維新幹事長の松井一郎大阪府知事は「日教組、自治労、官公労にべったり支援されてきた方とは無理だ」と、民主、共産両党の議員を激しく突き放す。
◆政策すり合わせなく
しかし、現職議員らの維新新党への合流の可否を判断する9日の公開討論会には、松野頼久元官房副長官ら3人の民主党議員が出席する。しかも松野氏は、民主党の「TPPを慎重に考える会」の幹事長だった。
松野氏は先月下旬のテレビ番組で「政策論でTPP反対なのではない。民主党はTPPでなく、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)推進だったからだ」と釈明したが、すでに新党参加が認められるのは確実とみられている。自民党の石破茂前政調会長は8日のテレビ番組で「政策はどうでもいいから入れてね、というのはよくない」とクギを刺した。
一方、7日には、橋下、松井両氏が公明党の白浜一良副代表と会談、公明党が次期衆院選で擁立する9小選挙区の候補者を支援することを伝えた。大阪と兵庫の計6選挙区については、維新として推薦を出す方針だ。しかし、公明党とは八策を基に政策のすり合わせをしていない。「大阪都」構想実現に向け、大阪市議会で公明の協力を得るための「見返り」なのだという。
◆首相は市長の部下?
橋下氏は8日の記者会見で、自らの国政進出を改めて否定した。新党本部を大阪に置くことも含め、「大阪から国を変える」ためで、市長と新党代表との兼務についても「プライベートな時間を削ればいいだけだ」と強調する。
しかし、政治判断を迫られる場面で代表が東京にいないと政党活動、場合によっては国政の停滞を招く。維新が衆院で第一党になると、国会議員団長が首相候補になる。国会議員団長は代表の部下なので、市長が首相に指示するという異常な現象も生じかねない。
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