らば~そうる “IN MY LIFE”

旅、音楽、そしてスポーツのこと。過去、現在、そして未来のこと・・・「考えるブログ」。

706.ビートルズ・エフェクト(#3:レズリー)

2007-10-12 | 12.THE BEATLES
【YAMAHA ELECTONE E-3】

 レズリーは、ハモンド・オルガンとともに使用されることを想定し
て開発された機材である。ハモンド・オルガンは教会やホールに設置
されたパイプ・オルガンの音を電気的に再現しようと開発された楽器
である。付帯的に実装されているレズリーは、パイプ・オルガンの音
が壁面などの反射により、いろいろな方向から聴こえてくる雰囲気を
スピーカーを回転させることにより再現しようとしたのだ。回転する
スピーカーから発せられた音は、「ドップラー効果」によって周波数
の周期的な変化を受け、その「うねり」がサウンドに爽やかな広がり
を与えたのである。

 ちなみに、わたしの実家にかつてあった「エレクトーン」にも古い
機種ではレズリー・スピーカーが実装されていた。エフェクターとし
て「コーラス」と「トレモロ」が選択でき、前者はレズリー・スピー
カーの遅い回転による「ゆったりしたうねり」の効果を、後者は同様
に早い回転による「ヴィブラートに近いうねり」の効果を原音に対し
創出していた。この関連記事についてはこちらをどうぞ。

 1966年になると、ジョンは‘Tomorrow Never Knows’のヴォーカル
を斬新なサウンドに仕立てたいと思っていた。あの有名な「丘の上で
ダライ・ラマが経文を唱えているようなサウンド・・・」だ。それは
従来のエコーやリヴァーブのようなエフェクトでは、得ることができ
ない音であった。ジョンの「要求」に対し、スタッフはどうしたのか。
ジョージ・マーティンとエンジニアのジェフ・エマリックが考え出し
たのが「レズリー」であった。つまり、ヴォーカルの音源をレズリー
に通す方法である。

 どちらかと言えば保守的な体質であったEMIスタジオではこの頃
今まで誰もがトライしなかったレコーディング手法が、次から次へと
実行されたのである。‘Paperback Writer’のスピーカーをマイクに
したベースの録音、ドラムスやホーン・セクションに対し限りなく接
近したマイク・セッティング、ADTの考案などである。このことは
注目すべき点であり、レズリーの利用もその延長線上にあるものなの
である。

 ‘Tomorrow Never Knows’の後半から、レズリー処理されたジョン
のヴォーカルが聴こえてくる(あの遠くで鳴っているような)のだが
前半のADT処理されたヴォーカルの音と比較すると、モーターの回
転ムラのようなレズリー独特のうねりを聴くことができる。その音は
もはや「有機的」な音ではなく、素晴らしく「無機的」な音である。



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2 Comments

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濃密な時期 (らば~そうる)
2007-10-14 01:19:48
to:タケチャンさん

「あの音」を含め、1966年前後の4人の変化のプロセスについては
本当に知りたいことがまだまだたくさんあります♪
密度の濃い「時期」ですね。
返信する
あの音 (タケチャン)
2007-10-13 23:06:44
エメリック氏が書かれていたことをより深く理解することができました。ありがとうごさいます。

Tommorow never knowsの「あの音」についてはまだまだ知りたいことがあるのですけどね。少しずつ紐解いていきたいですね。
返信する

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