塩野七生 著 「ローマ人の物語 14~16 パクス・ロマーナ 上・中・下」 新潮文庫
アウグストウス、34歳から77歳(紀元前29年~紀元後14年)
アントニウスとクレオパトラの連合軍を破ったオクタヴィアヌスは、インペラトール・ユリウス・カエサル・アウグストウスと称してカエサルの後継の道を進みます。軍才は弱くても政治力の優れた人だったらしい。元老院議員には、共和政に戻すと思わせながら、その実、着々とカエサルの目指した帝政の体制を整えて行く!
内戦の時代を終わって、不要となった軍備削減、国勢調査を実施、属州統治も形態を整える。国税庁みたいのを作って、今迄属州総督が自由にしていた属州からの収入は、国が集めて再配分するようにしたらしい。道路や上下水道などインフラも整備した。人や物の流通を良くし商業の発展にも寄与したのではなかろうか?
近隣諸国との対応は、軍事力で抑えつけるのではなく、政治力によって解決しようとしたようだね。
東の防衛線は、ユーフラテス河。懸案となっていたパルティア王国との対応は、講和によって解決を計った。
北の防衛線は、ドナウ河とライン河。ライン河の北、エルベ河を防衛線としたかったようだがこれには失敗!
この本では、アウグストウスが現場に行かず、遠くから統治しようとしたので、現状の問題点を把握できなかったのではと云っている!?
さて、アウグストウスは、色々な施策を実行していくが、”少子対策”??
これはいかん 25歳~60歳までの男性、20歳~50歳までの女性は結婚していなければならないというものだ! 男女は結婚して子作り子育てをしなければならない。離婚したり死別した場合でも、子が無ければ一年以内に結婚しなければならない! そうでなければ、税制上やその他の不利を得る? 少子化対策って云ったってひどすぎる
アウグストウスは、世襲による後継を狙っていて、血縁に拘ったらしい。一人娘のユリアが夫と死別して未亡人になると、盟友アグリッパを離婚させ、ユリアと結婚させている。アグリッパが死ぬと今度は、アウグストウスの妻の連れ子のティベリウスを離婚させ娘ユリアと結婚させる! そうまでして、自分の血縁が欲しいのか? 結局、ユリアとティベリウスの仲はうまくいかず・・・。
ティベリウスは、将軍としても優秀な人だったらしいが、たまりかねて、引退してロードス島へ逃げ出してしまう。ユリアは悪行?を犯して放逐されてしまう!
アウグストウスの後継は? ユリアとアグリッパの間に孫が出来ていたが早死にしてしまう。
孫が死んでしまった後、アウグストウスとティベリウスは和解したらしい。後継はティベリウスに託すしかなかったのだろうね。ティベリウスは戻って来て政治に参加、権力を少しずつ委譲していった。
共和政時代の人達は、一人の専制国家になることを恐れていた。専制君主の世襲にすると、優秀な後継が現れるとは限らないだろう。また暴君が出現するかも知れない。王国は、常に王の跡継ぎ問題で争いを起こして乱れているのだ。
アウグストウスが77歳で亡くなるとティベリウスが皇帝の立場を引き継いでいくが・・・
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